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「つながる快感ループ」やめられない、止まらない算数 

「算数が苦手」
そういう子ども達をたくさん見てきた。

彼らにとって算数は、本当に苦痛な時間なのだと思う。

それでも机に向かって、解きたくもない、解ける気もしない問題に対峙しているのだから、大したものである。そのことを大いに認めたい。

私は、算数が嫌いではない。
小さい頃の記憶は曖昧だが、テストの点もそこまで悪くはなかった。
計算ミスはたくさんあったが。

算数という教科は、スパイラル構造になっていて、学年が上がるごとに同じような内容を少しずつレベルアップしながら学んでいく。
それはつまり、積み重ねがなければ、スタート地点に立てない問題もあるということだ。

私は最近、高学年を任されることが多かったので、積み重ねの重要性を痛いほど理解している。
小学6年生の保護者懇談で「算数の宿題をもう私は教えてあげられない」と音を上げる保護者の方も大勢いるくらいだ。

しかし、その学年の間に学ぶべきとされている内容を、その期間に習得できないこともある。
何年か経って、「あ、そういうことだったの」と理解できる日が来ることもある。
その時こそが学ぶときなのだ、とも思う。

しかしできることなら、算数の面白さを味わった上で、その期間に学びきってほしいものだ。

約10年間、「どうすれば理解できるような説明ができる?」「どう例えればスッと入る?」などと思考してきた。
その結果、最近は算数の面白さ、醍醐味を感じられるようになった。

その算数の醍醐味とは、"つながり" である。

学んできたことの点と点がつながるとき、算数の面白さが爆発するのだ。

「それこんなところで使うのか! すげえ! らくじゃん!」
「割り算のときやったなぁ、やっと使い道分かったわ」
「その方法でも説明できんの!? ナイスアイデアやなぁ」
「ここで面積図使うんかい! 思いつかんかったー」

既習事項を蜘蛛の巣のようにつなげることができるようになってくると、びっくりするぐらい算数は面白くなってくるのだ。

子ども達には「スッポンポンの丸腰で敵に挑むな。今までに手に入れた武器をきちんと使うんだ」と伝えている。

持ち上がりで5年、6年と連続で同じ子ども達を担任したとき。
板書を全て写真で残しておき、昨年の授業をすぐ思い出せるようにしていた。そして、ことあるごとに引っ張り出した。
その授業で話し合った内容まで細かく思い出し、既習事項の理解を深めていった。

様々な角度から問題を捉え、既習事項の点と点をつなげる時間を「深掘りの時間」と名付けた。
何度も続けていると「先生! 今日も深掘っていくんですか!?」と子ども達は嬉々として、点と点をつなげる作業を楽しんでいた。

4年生の時にテストで30点をとって「算数は嫌い、苦手」と泣いていた子も、6年生では平均90点取れるようになった。

「点と点が繋がるってこういうことなんですね!」
「この時間はすごく濃くて疲れるけど、面白い。達成感がすごい」
「なんかこう、つながるときが楽しい」
と話す子ども達と、手持ちの武器の使い方を学んでいった。

彼らは、点と点がつながる快感を味わっていた。
彼らとの算数は、それはそれは楽しい時間だった。

いつの間にか、難しそうな問題に直面しても「今までのことをなんか使えばできるはず」「図でやってみるか」「単位量じゃね?」などと独り言を言いながら挑戦するようになっていた。

「ここまではできたけど、ここからはわからなかった」と発表する子達の意見をパズルのピースを組み合わせるようにつないで、正解までたどり着いたときなどは、教室に歓声が上がった。

わくわくしながら協力して学ぶという、彼ら本来の姿を垣間見た瞬間だった。


いつでもこのようにつながるわけではない。

しかし、一度点と点がつながったときの快感を知ってしまうと、学んだことを自分の武器としてストックしておくという行動が見られる。
「きっと、これもいつかどこかで使える」と。

その視点を持っているか否かで、点と点がつなげられる確率も変わってくる。
人は、見たいものを見ている。「つながる補正」がかかり始めるのだ。

その確率をあげればあげるほど、「つながる快感ループ」に入ってしまうという寸法だ。

そうなるともう戻れない。
やめられない、とまらない。そんな算数の時間に変わってしまう。


今回は、算数の時間を取り上げたが、実際は全ての教科でこの「つながる快感ループ」は起こる。
算数×理科、算数×社会、国語×社会、国語×英語など、教科を越えてつなげることもできる。
つなげられることは、いくらでもあるのだ。

そういった「どうやったらつながるかな?」という視点を、教える側がもっているかどうかがとても重要だと考えている。




現在は中学年担任なので、中学年なりにできることを考えながら授業を進めています。
先日、授業後の「やっとつながった。分かったら面白い」という子どもの言葉を聞いて、ふと去年の楽しい算数の時間を思い出したので、忘れないうちに書きました。
今年は、去年ほどうまくいってはいません。笑
まぁ、それも未来から見れば必要なことなのでしょう。
これからも算数が好きになるような授業を考え続けていきたいです。

良くも悪くも、読んでくださった方の参考になればと思います。

ここまで読んでくださり、大感謝!(^^)

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