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ファーストラブ 考察

久々に見てて辛い映画を観たので風化しないうちに控えておこうと思う。

まだ観てない場合はネタバレ箇所あるのでご注意ください。

題材が重いのもあるが描写が生々しすぎて、似たような経験があるような人はトラウマに触れるような内容な気がする。

まず娘が父親を殺害後に河原を歩いているところを逮捕され、「動機は見つけてください」の発言から全てが始まる。

登場人物は女性の臨床心理士の主人公、その夫と義弟の弁護士が中心になっていて、臨床心理士が容疑者の心理を暴こうとすることから展開していく。

殺人の動機とは別に容疑者の幼少期や養育環境を巡っていく。父親は美術系の大学教授で、娘をデッサン教室のモデルとして使っていた。父親は女性の弟子を取らないため、弟子は男性ばかりであった。デッサンの絵は男性の裸体と並んだ容疑者を描いていた。学生との打ち上げでは酔った弟子が容疑者の身体に触れたり口説いたりしており、それを牽制することなく父親は見ているだけだった。

容疑者はその体験から男性の目線に嫌悪感を抱き、デッサンモデルを辞めたいと懇願するが辞められず、自傷行為を行うことでデッサンモデルとして活躍できないように自らを傷つけていく。

これはもうこの時点で間接的な性的虐待になっていると自分は考えたが、最終的には養育環境に似つかわしくないとは判断されるものの、刑期に影響を及ぼすほどのものではないと軽視された結果が表現されていたが、それは現代における性的被害の軽視に繋がっているのではと推測したりした。

その布石として、この映画には所々に性的被害の要素が散りばめらている。

主人公の臨床心理士にも過去のトラウマがあり、自己開示を持って容疑者の心を開くことに成功する。そのトラウマとは小学生時に父親の車のダッシュボードから同じ年齢程の幼女のブロマイドを大量に発見したことに始まり、父親が海外出張の度に児童買春を行なっていた。その事実を母親から聞かされた時に嗚咽するシーンがあった。これはもしかすると女性でないとわからない感覚なのかもしれない。

父親を慕っていて尊敬の念を持っていたりすると、幼女に対し買春し、その欲望を解消していたことに対して、その失望は計り知れず、幼少期に感じていた父親の視線が怖いという経験と相まって嗚咽も漏れると思う。

実際、一般的な父親と娘の関係性がどんなものか知らないが自分も父親を警戒していたタイプなので共感できてしまった。実害はなかったものの自分が浴室から出るタイミングで必ず洗面所に入室してくることに違和感を感じていたし、上半身裸で下着姿を常に晒す姿を疎ましく感じていた。そして父親の車から成人雑誌を発見し、父親が男性であり、性的欲求を持つ生物だと理解してしまった後は嫌悪感が増してしまった。

元に戻るが、容疑者はデッサンモデル体験の他にもトラウマに繋がる性的被害を受けている。男子大学生のコンビニ店員に転倒した傷の手当てを受けた後、帰宅したくないと彼の家に保護されてしまう。その後、家に帰りたくない彼女は幾度も彼の家を訪れることになる。

そして、彼は彼女に迫るのである。小学生と大学生という間柄だが同意を求めるシーンがある。そこで彼女は「慣れているからいいよ」と答えるのである。

後の公判シーンで証言台で彼は当時救えなかったことへの罪悪感から証言することにしたと言っているが事前インタビューで彼は”最後まではしなかった”と回答している。つまり、彼は最後まではしていないが性的な行為はあったということになる。この出来事について、容疑者はこれを『初恋だ』と語っていた。これが映画のタイトルになるのだが…

この時すでにもう容疑者の心は壊れかけていたのかもしれないと感じられる。その後も、殺害の経緯が明かされるまでの容疑者の様子には自暴自棄になっているとわかりやすく示されたシーンが何度もあった。

好きでもないひとに求められ性交渉に応じてしまう、交際相手にDVされる事に対し容疑者は自分が悪い、誘惑したからなど自責を理由に挙げる。わかりやすく、描かれている。

その下りからの自傷行為の傷をあからさまに写すシーンが何度もある。

ちなみに本編では、明かされなかったが”慣れている”行為は性的な行為についてであり、はっきりと弟子の大学生または父親から性的虐待をされていたのではないかと憶測してしまった。しかも、設定上、父親は義父であり母親の連れ子の設定であったし、頻繁に行為がないと慣れているとは答えないと思ったからだ。

ただ、父親が就職を拒んでいたり娘を制御しようとしていた一幕はあり、デッサンモデル以外にも何か支配下に置かれていたのではないかと推測できる。

また様々な性被害に対し味方になってくれるであろう母親は娘を邪険にし、自傷行為の傷を「気持ち悪い」と真っ向から否定するのである。

自傷行為が激しくなっていることも気づかぬふりをしており、この母親の娘に対する嫌悪がさらに事情を悪くさせている。そして、本編では母親自身も自傷行為痕がありそれが見えるシーンがある。

母親も精神的に病んでいたり助けを求める状況にあったことを示すのか、明かされていないが娘を嫌悪する関係性を見ると義父と母親と容疑者の関係性には何かあったのではないかと思えてならない。

ここまで書いても気疲れしそうなほどの内容だがまだ性的被害の描写がある。

義弟である。主人公と出会い惹かれあい、義弟は自分の母親が男と駆け落ちしたことを開示し、両親がなく親戚に引き取られたことを打ち明ける。

親密になった2人だが、主人公と義弟の性行為は上手くいかず中断してしまい、その様子をみた主人公は義弟が根底で気にしていた一言を発してしまい、義弟は思わず主人公の首を絞めてしまう。

まぁ、この流れもまた性的被害だよなぁと。経緯がどうであれ、惹かれあっていたとしてもカッとなって首絞めました的な流れはこれもトラウマだよなと解釈してまった。

それから義弟と主人公は疎遠になり、主人公は義弟の兄と出会い、結婚する流れになる。

この映画において唯一の救いを演じていたのがこの兄であり主人公の夫だと思う。

あらすじとしては容疑者の動機を追いながらも主人公がトラウマを告白し乗り越えて進む過程が描かれているのだが、告白に至るまで優しく傍にいて見守り続けるのが夫である。

余計な台詞はなく、トラウマを開示する際も受け止めてくれる。

少なからずとも人は何らかのトラウマになるような出来事を抱えていることがあると思うのだけど、本人が言いたくなるまで何も聞かずに待つという姿勢で相手に寄り添い続けるということができることは素晴らしいと思う。

実際、トラウマを抱えているとそんなに簡単に人を信用できないし、人間関係を構築することが慎重であり、なかなか踏み出せないことがある。

ひとはひとりで生きれないというようにこうやって支えてくれる人がいたら生きられるという典型的な希望といった感じだった。

そういう感動的なシーンがありつつも、この映画はトラウマをほじくりまくって、えぐっていった割に結末はあっさりしていた。

義弟との関係も良好になり、殺害理由もら明らかになり、最終的に実刑を食らうわけなんですけど、なぜそうなる?としか言えず。。。

自傷行為をするほど心身喪失していて衰弱していて気が振れるような法廷証言をしているシーンがあっても何事もなかったかのようになっていた。情状酌量とかないの…

そして腑に落ちないのがすっかり元気ですみたいな雰囲気の容疑者が刑務所で、今まで自分の言葉に耳を傾けてもらえていなかったけど言えてよかったというような内容になっており。

様々な性被害を扱い、重い題材になっていたのにも関わらず結局なんか尺に収まらなかったのかしらと思うほど最後があっさりしていて拍子抜けした。

結局何が言いたかったのか正直わかりませんがミステリー小説が原作なので、動機の謎が解けてよかったねっていう感じになってました。

脚本に対しては言いたいことたくさんありましたが、キャスティングがとてもよく、演技とてもよかった。みんなよかった。父親役の板尾さんも目力発揮してました。

個人的には窪塚さんが神かかってました。

という感じで映画そのものは楽しめるので気になる方はご覧になってほしいし、ご覧になった方は考察聞きたいです。

最後に一言、トラウマにご注意!


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