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水原一平氏とギャンブル依存症
★大谷翔平選手の元通訳水原一平氏について『週刊文春 2024年4月4日号』は次のように伝えている。
【1991年、当時6歳の水原氏は、板前の父と看護師の母に連れられ、北海道苫小牧市から移住してきた。「一平は物静かで控え目な性格ですが、それが通訳の仕事に合っていたと思います。外国人選手から、試合での鬱憤や不満をぶつけられても、言い返したり余計なことを言ったりしない。聞き上手かつ話し上手だった。アメリカ育ちですから、外国人選手とアメフトやNBAの話でもうまく合わせられる。それに日本人選手からも好かれていて、チーム全体の愛されキャラでした。」・・・
昨年三月のWBCでは「三十一人目の侍」として優勝に貢献した水原氏。】
★『機能の全体的評定心理的、社会的、職業的機能を考慮した精神健康度の尺度(Global Assessment of Functioning)』
![](https://assets.st-note.com/img/1712559495735-WooLA6C0zx.jpg?width=800)
(Global Assessment of Functioning)
通称『GAF』を用いて、我々精神科医は、患者(当事者)の精神生活能力の評価を行い、100から0までの評価ランクを設けている。そして、慢性期療養病棟における入院処遇、あるいは精神科訪問看護を要する対象患者(当事者)はGAF40以下と定められている。
では、機能評価で最も高いGAF90以上とは、
【広範囲の行動にわたって最高に機能しており、生活上の問題で手に負えないものは何もなく、その人の多数の長所があるために他の人々から求められている。症状は何もない。】
と。
『~その人の多数の長所があるために他の人々から求められている。』が、何か『昨年三月のWBCでは「三十一人目の侍」として優勝に貢献した水原氏。』等の週刊誌報道と重なる。ところが、GAF90以上では「症状は何もない。」とある。しかし、彼は「ギャンブル依存症」だと告白している。
★ベントンは『高機能アルコール依存症を理解する』で、米国において高学歴で、高度な仕事をこなす能力があり、かつ社会的にも地位が高い人たちが、アルコール依存に陥るのを高機能アルコール依存症者だとして紹介している。その特徴と特性は
「見栄えのする成功に固執する。承認欲求が強い。コミュニケーション能力にたけている。エネルギッシュで身体的にタフ。競争心が強い。仕事が几帳面。頼まれると断れない傾向が強い。専門的なスキルや学業をこなす能力が高い」
セイラ・アレン・ベントン著 水澤都加佐監訳、伊藤真理ほか訳(2018年 星和書店)
といったものである。なるほど、そしてベントンの指摘に、日本の患者(当事者)なら「協調性、過度の思いやり(気遣い)」と「おもてなし(気配り)」を加えたい。
ギャンブル依存症も然りだ。となると水原一平氏の人物像が見えてくる。
★精神科医(精神医療従事者)が彼と向き合うために
2019年、精神科医松本俊彦と臨床心理療法士信田さよ子が誌上対談を行っている。以下、信田さよ子の発言(抜粋)
【治療や支援がことごとくパッケージ化していることです。CRAFTやスマープもそうですよね。アメリカから輸入されたこのようなプログラムは~~~、力量に自信のない人たちが、とりあえず「専門家」であると思えるメリット~~】
「掘下げ対談 アディクションアプローチとハームリダクション」
【『Be! 137』.
ASK(アルコール薬物問題全国市民協会)、Dec.2019】
・信田さよ子
日本公認心理士協会会長
・松本俊彦
国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター
精神保健研究所 薬物依存研究部部長
その頃から、確か諸々の依存症対策の必要性が俎上に上がり始めた。そこで、国は各地に依存症拠点病院の設置を急いだ。だがそんな依存症拠点病院で行われる研修会の中身とは、パッケージ化されたプログラムと、何とも得体の知れない「CRAFT」、「スマープ」といった技法の取得。とくに長崎ではIR誘致もあり、依存症対策には潤沢な予算が組まれた。私も行政当局から相談、協力要請があった。だが私は信田さよ子同様、安直なパッケージ化、マニュアル化には疑義あり、別の提案を行ったが無視されてしまった。※
その提案を実行に移してくれていたら、水原一平氏のような高機能依存症者にも十分向き合えていた、と確信を持てていたのだが・・・・・・。
今、長崎ではあの潤沢な予算から何が生まれ、どんな実践がなされているのか? いや何も行われていない。まさしくコンコルド誤謬だ!
※『依存症対策は予防、早期発見より、まずは「習うより慣れろ」』
(https://note.com/niken/n/n25c97b148fc2)
2022年12月15日 西脇健三郎(ニーケン)-noteより