ジェトコースター人生 その51-3
初フライトはあっという間でした。
ドアが開くと南国の熱気が迎えてくれました。「あーここがハワイ!着いたんだ」もっと感動すると思っていましたが、そんな感傷に浸っている暇もありませんでした。
深夜に出発して同じ日の19時間前に到着します。
ハワイに行くと若返るということです。このままベッドで寝込みそうですが、先輩のお誘いで早速アラモアナショッピングセンターに行きました。まずはハワイの大人気アイスクリーム。濃厚なその味は今のハーゲンダッツのようで、病みつきになる食感です。また生まれて初めてのグアバジュースのおいしさに驚きました。桃のようなリンゴのような。今ではスーパーで売っているのですぐに手に入ります。美味しいですが、ハワイの太陽が育てた濃厚な味とは少し違うような気がします。
ハワイと言えばフラダンスですが、神にささげるための「カヒコ」は男性だけが躍ることができて大変厳しい修行をしなければなりません。(今は女性も許されているそうです。)市街地から少し離れた美しい海岸べりに案内していただきました。車を降りるとそこから空気が違います。同じ青い空の下なのにそこは結界で区切られた神の領域です。
きりりとしまった顔つきの男性がささげる舞いは静かで歴史の重さを感じる美しさがありました。
夜にはなんとあのエルビスプレスリーのショーがあると聞いてそんなにファンではなかったものの出かけました。今の人は知らないかもしれませんが、ロカビリー(アメリカンロック)の大スターです。
ボクシングスタジアムでリングが舞台です。さっそうと現れた彼はとろけるような甘い声で聴かせます。溜息と悲鳴。スタジアムは異様な雰囲気でした。彼のオーラはスタジアムの隅々まで包み込みました。
何年もの経験を二日間で体験したような濃い滞在になりました。
翌日は早くにチェックアウトです。空港に向かう専用バスからハイビスカスやヤシの高い並木道。藍すぎる海が流れていきます。
空港に近づくにつれて車内の空気も締まってきます。
東京に向かう空路は天候もよく雲海の上を泳ぐ大きな機体は太陽でキラキラ光っていました。
伯父の言った「いい仕事」の意味が分かったような気がしました。あの時の私が今此処にいます。
帰宅して荷物をほどき、ひと休みです。反省だらけの乗務でした。お土産で買ってきたマカデミアナッツの入ったチョコの甘さは疲れた頭にしみ込んでいきました。
あの夕日をバックに神に捧げるフラを踊る彼の横顔が浮かびます。
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