『秘剣 梅明かり: なまけ侍 佐々木景久 』 鵜狩三善
なろうで書いている時からファンだった作家さんの書籍。
文章が滑らかで、どこか何処かチョコレートフォンデュみたいなとろりとした感じがするのが好きです。
決して言葉自体は平易じゃないんだけどスルスル入ってくる。
主人公の景久は人並みではない力を持つ人物で、それは例えば不注意に触れれば骨をへし折ってしまうというような凄まじいもの。
卑屈になることはないけれど、そんな自分の存在をどうにかこうにか許してもらえるようにと、力を隠して生きている。
何か一つ人に知られてはいけないものを持つということは、それだけで自分の人生を歩いていくということをとても難しくする、なんてことを考えた。
本当に感じていることを人と分かち合うことができない。思う存分端から端まで自分自身であることを許されない。そのことが自分をこの世からひょいと少しだけ浮き上がらせてしまうように思う。
自分は特別だと感じる場所にいると、そのつもりではなくても卑屈さ、もしくは傲慢さからは逃れられない。人とは対等にはなれないと思っているから。何より、誰といても、どこにいても孤独だ。
ある点において私はとてもユニークだ。でもそれはあなたが別の点においてそうであるのと同様に。
そんなふうに相対化するには、思う存分端から端まで自分自身であることを発揮し、受け入れられる必要があるのかもしれない。
そしてそれは自分を通して相手に我慢させる(受け入れさせる)という勝ち負けの関係性ではなく、共に存在をただ認め合うというような形となるのだろう。
今日も今日とてよんで考えたことメモでした。