お勉強423:肺がんでの心臓線量

https://www.thegreenjournal.com/article/S0167-8140(23)09312-X/fulltext


いわゆる‘PACIFIC regimen‘で
心臓線量をめっちゃ気にしてみました、という論文
RTOG0617(線量増加した60Gy vs. 74Gyの試験)
で心臓線量が優位に生存を悪くした、というのを受けての研究のよう

IMRT、陽子線時代になれば心臓線量は減らせるよね!
というのも研究のきっかけらしい。

2017年10月から2021年12月に根治的CRT治療を受けた
335例を対象とした後ろ向き研究。基本PACIFCレジメン

線量の制約として
・心臓の平均線量 <20Gy(可能であれば <10Gy)、
・心臓の50Gy以上(V50Gy)<25%
肺は(全肺-iGTVと定義)
・肺mean dose <20%(可能であれば <18Gy)
・肺V20 <35%(可能であれば <25%)

・食道 mean dose <34Gy V60Gy <17%

としている。

心臓、左冠動脈前下行[LAD]、左室に対する
線量パラメータを21個抽出。

プライマリーエンドポイントは、
CRT後の主要有害心イベント(MACE)

※急性冠症候群
 心不全(入院・救急受診)
 冠動脈血行再建術
 心臓関連死
と定義

セカンダリーエンドポイントは
・G3以上の心イベント
・全生存期間
・肺がん特異的死亡率
・その他の原因による死亡率(治療関連死含む)

年齢中央値は68歳。追跡期間中央値は3.3年。
女性が54% PS=0-1が9割
41%がベースラインの冠動脈性心疾患を有し、
67%がICI地固めを受けた。
ケモはプラチナダブレット(カルパクが一番多い)

照射法として
陽子線治療は35%(ペンシル2割・パッシブ1割程度)
IMRTは59%
3D-CRTは6%
60~70Gy/1.8~2Gy(中央値66Gyと多め)
4DCT/PETがおおむね標準と。

LADのV15Gyの中央値は1.4%(IQR 0-22)
心臓の平均線量中央値は8.7Gy(IQR 4.6-14.4)
心臓のV50Gyの中央値は4.2%(IQR 1.2-8.1)

MACEの2年間の累積発生率は全患者で9.5%、
ベースラインの心疾患を有する患者で14.3%
(ベースラインにない人は6%)

グレード3以上の心イベントの2年間の累積発生率は20.4%
ベースラインの心疾患を有する患者で23.9%
(ベースラインにない人は17.7%)
色々調べたが、特に有意なMACEを予測するパラメータなし

OSの中央値は2.6年

多変量解析では、心臓の線量
(LAD V15Gyと心臓の平均線量)はOSの悪化と関連。
心臓の線量で肺がん特異的生存率は悪化していたが、
他病死とは関連していなかった。

ディスカッションでは
1:ケモラジ患者では心有害事象はまれではない
2:心臓の照射線量は心有害事象と関連しなかった
3:心線量増加はOSの悪化因子(特に肺癌死)

心有害事象と心臓線量が関連しなかったのは
厳しい線量制約や、照射法の発展のおかげでは
と考えているよう。(実際RTOG0617 と比べて線量は減っている)
LADや心線量が肺癌死に関係したのは
そういった線量の増加は元の腫瘍の大きさや
場所と関係していて、肺がん死が増えたのではと考察している

この研究で使われた
・心臓の平均線量 <20Gy(可能であれば <10Gy)、
・心臓の50Gy以上(V50Gy)<25%
は一つのベンチマークになりそうです。

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