お勉強146:「難しい」SBRT ①

しばらく、これからの
SBRT困難症例、ケースレポート+考察から勉強します

ILD 合併SBRTについて

<症例>
84歳男性。

10年前に過敏性肺臓炎関連のILDと診断。
(背景肺はhonycomingは無い)
左下葉に2.6㎝大(SUV9.2)の結節を認める。

呼吸困難で活動制限があるが、HOTは導入していない。

呼吸機能検査では FEV1 74% FVC 62% DLCO41%
リンパ節転移や遠隔転移はなし。
多職種からの意見により、肺がんの臨床的証拠は強く
生検はリスクに見合わないと判断された。

<臨床的なポイント>

1. 未治療の肺癌と比較して、ILD の患者の死亡リスクはどの程度か?
2. 手術不能なILD患者に最適な治療法は何か?
3. 肺疾患患者に対するSBRTの主な毒性は?
4. 将来的に管理を最適化するためには何が必要か?

<総論>

ILDの患者において肺がんはよく見られ、
逆にNSCLCの5-10%の患者はILDを持っている。
こういったILDとNSCLCの合併患者において、
肺がんは死亡の約半分を占める

しかし、そもそものILDによる死亡のリスクと
ILD患者における治療関連の毒性の高さを考慮する必要があり、
根治治療のみでなく、BSCのメリット・デメリットを
積極的に話さなければならない

早期 NSCLC で ILD-GAP スコア

https://pulmonary.exblog.jp/21221196/ 
参照のこと

が低い患者さんは、根治療法のより良い候補となります。
早期 NSCLCの治癒的治療のゴールドスタンダードは肺葉切除術ですが、
ベースラインの肺機能が低いため、
ILDと早期-NSCLCが共存する患者の手術方法が制限されること
はよくあることである。
SBRTは、従来の分割照射による放射線治療や、
凍結融解療法やラジオ波焼灼療法などの熱的焼灼療法と比較して、
局所制御および全生存期間(OS)を改善する。

SBRTの場合、後方視的なシステマティックレビューでは、
グレード3以上の放射線肺炎の平均発生率が25%、
治療関連死亡率が16%と報告されている。

しかし、放射線の詳細と毒性の結果は非常に多様であり、
最適なSBRTの線量と分割は不明である。
さらに、これらの研究の多くはILDに関して詳細な
診断基準を欠いていたため、
ILDのサブタイプの違いによるSBRTの結果の違いがあるかどうかは
まだ不明である

このような既存のデータの限界を踏まえ、
早期-NSCLCとILDを持つ患者に対するSBRTの有効性、安全性、
最適な投与量をASPIRE-ILD臨床試験(NCT03485378)で評価されている。

<今回の症例へのアプローチ>
未治療の肺癌による死亡リスクはILDに比べてはるかに高かった。
患者は根治療法を希望していたが、
術後の肺機能低下が予測されたため、医学的に手術不可能と判断された。


線量としてはBED10>100Gyを満たすと同時に、
肺毒性の可能性を最小限に抑えるために
VMATを用いて、50Gy/5Frを1日おきで行った。

治療から4カ月後、咳・呼吸困難・少量の喀血が出現し、
抗生物質の投与を試みたが症状は改善せず、
胸部CTで治療部位なコンソリデーションと斑状影が認められた。
ILD増悪と放射線肺炎の区別は難しいが、
グレード2の放射線肺炎と判断され、
吸入ステロイドで咳と呼吸困難は改善した。

<個人的見解>
・そもそもRPなのか、ILDの急性増悪
 なのかは誰もわからない

・ただ、RTしたあと数カ月以内(4か月以内程度)なら
 やはりRTが惹起したものと考えるのが筋?
 どちらにせよ、この時期に起こったものはかなり予後不良
 (通常の照射で起こる一般的なRPもそうだし)

・まず、ILDの分類をしっかり勉強せなあかんとおもった
(GAPスコア、恥ずかしながら今回初めて知った)

・臨床的に一番困るIPFはやはりリスクが高い印象。
 (IPF自体の予後を理解していない患者さんも多く、
  説明に困るときもある…)
 個人的には進行「しかけ」ぐらいのIPFは
 迷いどころだが、そうでない人は「そっと」しておくのが
 良いと思っている。

・一番問題は、肺がん疑いでCT撮った時にたまたま
 honycomingとかが見つかった場合。
 でも、こういう場合は大概手術できるのでお願いしている。
 (日本の外科の先生の「適応」は広いので助かる)

・KL-6/SP-D/PETでの集積は結構個人的にはあてにしている。

・中途半端な線量は良くない。「やるならやる」

・ただ、数日おきとかにするのは案外ありな気がする。

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