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感情ってなんなのか?最新の研究をご紹介

昔から、自分の中で起こる感情が、なんでこんなふうに感じるんだろう、と不思議に思うことが多々ありました。

私自身も、特に悪い状況ではないのに過度に不安を感じたり、朝、特に理由もなく「会社に行きたくないな」と感じたりすることがあります。

でも、会社についてしまうと朝の憂鬱が嘘のように穏やかな気持ちになることもあれば、そのまま一日中引きずることもあります。

感情は私たちの思考や行動を簡単に支配してしまいますよね。
逆に、感情を完璧にコントロールすることができたら、もっと生きやすくなるのでは…?

そう思って、まずは「感情ってなんなのか」について調べてみました。

以前の感情研究では、「悲しみ」「喜び」「怒り」など、感情はそれぞれが独立した生まれつきのものだと考えられていました。

ピクサー作品である「インサイド・ヘッド」のようにそれぞれの感情が独立して存在しているイメージですね。

これがとてもわかりやすく、長い間広く受け入れられてきたイメージですが、
近年の研究では異なる説が出てきて、そちらが有力とされているそうです。

その説では、感情は「自分の意思とは関係なく自動的に起こる反応」ではなく、社会的な経験や言葉を通じて作り上げられるものだとされています。

感情は社会から学ぶもの

例えば、行きつけのレストランに行って、いつものスムーズなサービスを期待しているとします。

普段は注文してから5分ほどで出てくるはずの料理が、20分経っても出てこなかったらどう思うでしょうか?

期待していた対応が得られないと、イライラしてしまいますよね。
もしかしたらあのお店にはもう行かない!となってしまうかもしれません。

これは、予測と現実のギャップが大きいことが原因です。
これがもし、初めて行くようなお店だった時は「まあ、こんなもんなのかな?」「今は混み合っているのかな?」などと考え、ここまでの怒りは感じないはずです。

この怒りは、脳が「良いサービスを受けられるはず」という予測が裏切られたときに生まれます。

接客業では、よく「お客様の期待を上回ると感動が生まれる」と言いますよね。

これは、やっぱり私たちが経験から予測していることに、現実がどの程度近いのかによって、感情が生まれたり、大きくなったりするからなんですね。

私たちは、特定の事象に対して特定の感情を感じているわけではなく、自分の経験から物事を予測して、それに伴って感情が生まれています。

つまり、感情は生まれつき決まっているものではなく、経験や社会的学習を通じて感じるようになるのです。

これって、これまでの常識を変えてしまうようなお話ですよね。

この説が正しいとすると、私たちは「物事が起こった時に、それをどう感じるか」を自分で変えていけるということになります。

もしかすると、毎朝の憂鬱な気持ちや、日々起こるイライラをなくすこともできるかもしれません。

今回は、このような考え方が詳しく書かれた『情動はこうしてつくられる』という本の内容をもとに、感情とは何かについて考えていきたいと思います。

最後には本のリンクも貼っておりますので、興味を持たれた方はぜひ読んでみてください。


感情は脳が作り上げる「概念」

『情動はこうしてつくられる』の著者リサ・フェルドマン・バレットは感情は固定された生理的反応ではなく、脳が過去の経験から作り上げる「概念」という説について説明しています。

バレットの理論では、脳は常に未来の出来事を予測している。そしてその予測に基づいて体を準備させるとされています。

これはどういうことなのか。

例えば、過去に犬が吠えて怖い思いをしたことがある人は、犬を見るだけで「怖いことが起こるかも」と予測し、その予測に基づいて体が緊張します。

具体例を交えて、詳しくそのプロセスを見ていきましょう。
また、ここから先で説明するプロセスは、必ずしも順番通りに起こるものではない点について、注意していただきたいです。

感情が生まれる時のプロセス

身体的感覚

まず、何かが起こった時、過去の経験に基づく生理的な反応が起きます。

例えば、心拍数が上昇したり、呼吸が速くなったり、ドーパミンが分泌されたりということが起こります。

これ自体はまだ感情ではなく、身体の反応にすぎません。

具体例:
過去、犬に吠えられた経験を持つ人(Aさんとします)は、犬に遭遇すると、自動的に心拍数の上昇、呼吸の速まり、筋肉の緊張など、身体的な変化を感じる。

これが、第一のプロセスです。

予測プロセス

脳がこれらの身体的感覚に対して予測を行います。

脳は、過去に似た状況でどのような感情が生じたかをもとに、今感じている身体的感覚に意味を与えようとします。

具体例:
Aさんの心拍数が上がった→「この犬も危険かもしれない」「また吠えられるかもしれない」といった予測が、Aさんの脳内で無意識に行われます。

文脈の評価

今、目の前にある状況を評価します。
「過去はこんなことが起こった。だから素早く対応できる状態は整えたけど、実際今の状況はどうなんだ?」という具合でしょう。

最初のプロセスで起きた身体的感覚は同じでも、ここで状況や文化的背景がどうなっているかによって、異なる感情として認識されることがあるということです。

具体例:
Aさんの脳は現在の環境を観察します。例えばその犬が鎖につながれているか、飼い主が制御しているか、または犬の様子が穏やかかどうかを確認します。

カテゴリー化

その後脳は、予測と文脈の情報をもとに、今感じている感覚を感情のカテゴリーに分類します。

このプロセスは、過去の経験や社会的学習によって構築された感情の概念に基づいています。

これにより、感情が「喜び」「悲しみ」「怒り」などの具体的な形で認識されます。

具体例:
Aさんの脳は、
身体的感覚(心拍数、呼吸数が高い)
予測内容(犬にまた吠えられるかもしれない)
文脈の情報(犬は鎖で繋がれていない、唸っている)
の3つを統合し、「恐怖」という感情のカテゴリーに分類します。

ここで初めて、Aさんは「恐怖」を感じると認識します。

行動の決定

感情がカテゴリー化されると、それに応じた行動の決定が行われます。

たとえば、「恐怖」として感情が認識されれば、逃げるか、戦うかの行動が促される可能性があります。

この行動も、過去の経験や文化的な背景に基づいて調整されます。

具体例:
Aさんの脳に「恐怖」という感情が認識されると、それに応じた行動が決定されます。

この場合、Aさんの行動としては、犬から離れる、体をこわばらせる、目を逸らす、飼い主に助けを求めるといったものが考えられます。

これらの行動は、恐怖に対する本能的な反応であると同時に、過去の経験から学んだものでもあります。

これらが感情が生まれる時のプロセスとされています。

ただ、これらが必ず順番通りに起こっていくということではありません。
複数のステップが同時に起こったり、ループしたりということもあります。

あくまでも、「感情は、脳が過去の経験から未来を予測し、現実とのズレを調整する中で作られる」ということです。

たとえば、以前犬に吠えられた経験があると、その記憶をもとに「また怖い思いをするかも」と予測し、その予測を現実の状況に当てはめて恐怖心が生まれます。

この恐怖は、生まれつき決まっている反応ではなく、体の感覚や記憶、状況判断が組み合わさって作られるものです。

つまり、感情は過去の経験や学びによって形作られ、変化するものだと説明されています。

「会社に行きたくない…」と思うのも、予測が関係してる?

これまでの話を見てみると、感情は、経験的な予測とか、社会的な背景から生まれているようです。
ということはつまり、毎朝「会社に行きたくない」と思うのは、会社で嫌なことがたくさん起こっているから、その結果を元に予測をしているだけってこと?

そういうことなら、もし会社で強制的にポジティブな気持ちになるような状況が作れれば、毎日嫌な気持ちで出勤しなくても良いかもしれないですよね。

ということで、会社に行く時の嫌な気持ちを消す方法を本気で考えてみました。
記事のリンクを載せておりますので、興味を持ってくださった方は、ぜひお読みください。

いかがだったでしょうか。
今回は、リサ・フェルドマン・バレットの『情動はこうしてつくられる』という本に書かれた内容から、新しい感情の研究について見ていきました。

感情の仕組みに興味を持った方は、ぜひバレットの著書を手に取ってみてください。
感情に対する新たな視点が得られるはずです。

この記事が、皆様の役に立てると嬉しいです。
最後までお読みいただきありがとうございました。

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