見出し画像

知ろう、お金の歴史 【お金の教育、考えてみる②】

「愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ」

オットー・フォン・ビスマルク(ドイツ元首相)

 ドイツの名宰相であるビスマルクの名言です。先人たちは多くの失敗と成功を繰り返し、その経験の中から歴史という形で我々後世の者に貴重な経験談を残してくれています。
 お金のことを知り、教育するためには、お金の歴史を知ること。長い時間の中で繰り返される成功と失敗のパターンを掴むことも大切です。

 前回に引き続き、お金の教育について考えます。

 内容は上記ミアン・サミさんの書籍を参考にしています。

1.『お金』の定義、もう1度確認

 お金には、IMF(国際通貨基金)で定められた定義があります。『尺度』『価値』『保存』の3つです。この3つ全ての条件を満たしたものが、お金として見なされるのです。

 まず、①尺度の役割。世間では、ありとあらゆるモノやサービスが取引されていますが、その価値を計る尺度としてお金が使われます。たとえば、りんごにみかんの2倍の価値がある場合。「りんごはみかん2つ分」と言えばわかりますが、さらに他の「バナナ」と価値を比べるには、バナナとりんごの価値の関係、バナナとみかんの価値の関係を表さなければなりません。この比較を簡単にできるようにするのが「お金」です。

 「りんごは100円、みかんは50円、バナナは70円」というように、お金があると価値を簡単に比較できますね。
 
尺度であるということは、同じ1万円であれば同じ価値がなくてはいけない、ということでもあります。額面が一緒なのに、価値が異なるものはお金とは呼べないのです。

 次に、②ものやサービスとの交換ツールとしての役割です。昔物々交換の時代では、モノとモノを等価で交換する必要がありました。
 たとえば、魚とリンゴを交換する場合、「魚1匹」と「リンゴ2個」が等価値だったと仮定します。「魚を渡すことはできるけれど、リンゴは2個もいらないよ。」という場合でも、魚をリンゴ2個と交換するしかありません。
 このとき、お金とモノを交換するシステムがあったとすれば、『魚を200円で売って、そのうち100円を使ってリンゴを1個だけ買う』といったことが可能になります。

 最後に、③保存できる機能です。お金の価値は日々変動していますが、お金自体が腐ったり劣化してしまうようなことはありません。貯めて保存しておくことができる。
 貯めておけば、好きなときにモノと交換することができます。たくさん貯めておけば、高価なモノと交換することもできます。

 この定義を踏まえた上で、サミさん。実は、どんな紙幣も『価値が最初はあるけど、だんだん下がっていく紙切れ』であると思わなくてはいけない。つまり、価値をずっと永遠に保存しているものではない。
 ③に該当せず、紙幣のことをお金とは呼べないのだそうです。

2.貨幣制度:『制度の崩壊→新しいお金』の繰り返し

 お金の歴史も、繰り返しです。歴史上に存在した何千種類という紙幣は、直近のものを除いて、すべて崩壊している。今日本にある紙幣・硬貨も、最後は必ず価値がゼロになって消え去ります。

 お金の歴史。人類の最初の「取引」の方法は物々交換でした。
 次に、「石のお金」や「貝殻のお金」が登場します。 しかし、「おつりはどうするの?」とか、「この石とあの石は同じ価値なの?」など、多くの欠点があり、まだ「お金」とは呼べませんでした。エジプト時代に、ようやく金が登場しますが、これも、品質がまちまちで価値が安定せず、お金の条件を満たすまでには至りませんでした。 初めて金から作った金貨が広まったのは紀元前600年ごろの古代ギリシアだと言われています。事実上、これが貨幣の始まりです。
 金貨ができると、古代ギリシアのアテネでは一気に商業が盛んに。街が栄えてくると、これ以上に栄えることを目指す。隣国と戦争し、利益を争うようになる。武器を作ったり、戦う兵士に給料を支払うために、お金が必要になっていきます。現在なら、どの国にも中央銀行がありお札を刷ればそれで事足りますが、そうはいかないわけです。たくさんの『金貨』を作るためにどうしたかというと、銅を混ぜ込み『もどき』の金貨を作った。すると、市中にたくさんの金貨は出回ったもののアテネ政府が作った金貨は信用できない、となって、人々は純度が高い、元来あった金貨を貯蓄し、偽物の金貨だけを使うようになりました。

『悪貨は良貨を駆逐する』

 の言葉は、ここからきています。このように悪貨が流通しますが、国の信用が失われた瞬間にその国の信用で成り立っていた悪貨も暴落。これを『グレシャムの法則』といいます。世界中の通貨が、繁栄・衰退を繰り返すのは、この流れです。

 次に、近代のお金の歴史を見ていきましょう。

3.これからも絶対起こるお金のルールチェンジ。

 紙幣が各国の政府により管理され、国単位で統一のお金が使われるようになったのは中央銀行という機関ができてから。中央銀行が各国でできるまでは、先ほどのアテネのように政府が特に規制もなく、そして銀行も国立・民間入り乱れて自由にお金を発行していました。お金の価値は安定せず、紙幣の量が増えて価値が下がるため、激しいインフレが頻繁に起こっていました。その規制として、中央銀行ができ、お金の価値の安定を図ったというわけです。
 この時代、各国は自国で保有している金(ゴールド)と等価価値以上にお金を発行することができませんでした。保有する金が少なくなると、流通させて良いお金も少なくなるというシステムだったのです。
 19世紀半ば。基軸通貨がイギリスのポンドの時代です。

 その後、第一次世界大戦時はあらゆる国が換金停止に。そのため各国が金を持っていなくとも自由に簡単にお金を刷れるようになりました。
 第二次世界大戦でアメリカが強国として出てくると、ドルが基軸通貨となり、金と換金ができるのはドルだけになります。その後、朝鮮戦争やベトナム戦争に突入。軍事費をとてつもなく使ったアメリカ。物資を補うためお金が必要となりました。どんどんお金を刷っていきます。
 基軸通貨であるということは世界から信用されているということ。各国はアメリカが持っている金以上にお金を発行しないだろう、という暗黙の了解がありました。それが覆されたのです。自分たちで作ったルールを破りお金を刷りに吸った。
 その頃各国は戦後の復興に乗り出しており、経済成長を始めていました。アメリカの貿易赤字は拡大し、ドルが海外に流出。アメリカ国内の金よりもそれ以外の国が保有するドルが大幅に上回ってしまいました。このままだと、アメリカから金がなくなってしまうと踏んだアメリカは、『金ドル交換停止(これからは、ドル⇆金交換はできません!)』と宣言。

 これがどういうことか分かりますか?

 一瞬にして、金の引換券としての価値があったドルがただの紙切れになってしまいました。これを、ドルショック(1971年)といいます。
 このドルショック以降は、金を持っていなくても簡単にお金を作ることができるようになりました。現在のお金のシステムはここから始まり、各国の借金がどんどん増えていくことになりました。

4.ビットコインの台頭は通貨への不安の現れか

 定期的なお金のルールチェンジ、最近だとビットコイン・仮想通貨等の台頭のことが言えます。

 2008年、リーマンショックで大量の紙幣がアメリカで刷られました。世界中にお金への不安が広まりました。ここで登場したのが、仮想通貨、ということになるでしょうか。政府の意向や景気動向に左右されない(中央銀行を持たないため)、金融機関の利益追求等にも左右されない、フェアな貨幣システムと言われています。

 いかがでしたでしょうか。難しい内容でしたが、お金の歴史について解説しました。お金の歴史について知ると、次にどんなことが起こりそうか予想がつくようになります。お金の価値が一定ではなく、自身がずっと現状を保っておけば損をすることはない、ではないということにも気付けます。

 サミさんの本が書かれた2019年は、1939年の経済状況、指標がとても似通っており、近々大きなクラッシュ(株価の40%程の大幅な低下)がある可能性があるということです。株価が大暴落ということは、新たに買おうとしている人には、チャンスになるわけ。

 簡単にお金の歴史についても説明でき、マネーリテラシーを高めることの大切さをそこから伝えられるスキルを磨いていけたらいいなと思います。

 本日もお読みいただき、ありがとうございました。

                         佐藤 陽介(よう先生)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?