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社会科にもやもやしている方へ③~わくわくするまで教材研究し続ける~
教材開発するときに
新たな社会科授業を作り出すとき、心に決めているものがあります。それは、自分がワクワクするまで、調べ続けることです。面白い授業になる!と思うまで、調べて考えます。
ネタになりそうな種を見つけたときには「楽しそう」と思っても、授業化するために単元を構成しようとすると、うまくいかないものです。そんなときは、調べ続けます。人に取材し続けます。そうして深めていきます。
6年生「国と地方公共団体の政治」にて
例えば、この前は八戸市の除雪を扱った授業を行いました。自助・共助・公助、それぞれの立場から除雪を見つめ、問題点を考えて、解決策と一緒に市役所へ提案します。高学年で求められる多角的な思考を高める授業です。
「降雪量が多いとは言えない八戸で、除雪は授業化できるのか?」
「子どもたちは、問題意識をもてるのか?」
など、うまくいかない理由はたくさん見つかります。わくわくもしません。教材研究もうつうつとしてやる気が出ません。そもそも、八戸市には雪があまり降らないので、取材のチャンスもそうそうありません。そんな時は、人に会い続けます。
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地域の方がボランティアで、朝5時からマイナス6度の中、暗い学校で一人除雪をしている姿をカメラに撮った時、誰にも見られずにひとり黙々と子どものために行動し続ける姿に、ぐっときました。
町内会の方は、小学校の子どもたちのために、町内会の皆さんに呼びかけて、除雪に取り組んでいました。共助として、自分たちにできることを行動にうつしている地域の姿がありました。
除雪を請け負っている業者を取材。雪はいつ降るかわかりません。娘の出産にも立ち会えなかったという話や、必要最低なお金しか市からもらえないことを知りました。それでも、「誰かがやらないといけない」という強い使命感で、苦情にも対応しながら除雪している姿を知りました。
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市役所では、雪はどのくらい降るのかわからないので予算獲得が難しいということを聞きました。そして、業者の方に感謝する思いも聞くことができました。市役所としても、思いを込めて払いたいお金、でもそう簡単にはいかないのです。
感情の揺らめきをつくる
子どもたちが業者の方の思いに触れれば、おそらく市役所への不満を口にするでしょう。
「頑張っている人にその分の金をあげないでひどい」
「家族の時間を犠牲にしている人に、もっとお金をあげてほしい」
そんな声が聞こえてきそうです。しかし、予算を獲得できない背景があること、税金の使い道は限られていること、市民のために夜中も泊まり込んで対応する市役所の方の思いにふれたとき、子どもたちはどう思うのでしょうか?
きっと悩むに違いありません。そして、つきつけられた大きな問題意識と共に、様々な証拠を集め、除雪への問題点を解決する方法を見つけていくはずです。私は、市役所の方の「夜中まで仕事をすることを苦労と思わず、当たり前だと思っている」という熱い思いに触れて、ワクワクし始めました。これで授業化できる!と確信したのです。
子どもの事実
結果、子どもたちは実に悩みました。業者の立場を取り上げた授業ではあれだけ感情的になって盛り上がっていたのですが、市役所の授業では、しーんと水を打ったように静かになり、停滞したのでした。これもまた社会科の授業では重要な感情の揺らめきだと思います。
市役所への提案は、子どもたちが問題を解決しようと、必死に調べ、考えていました。グーグルスライドに問題点を一緒に解決策を考え、のせていました。
「私たちのアイディアで、八戸市の除雪問題が、少しでも改善されればよい」
という子どもの振り返りを読んで、胸が熱くなりました。市や地方公共団体の政治について、関心をもって生き続けるきっかけの一つにでもなればよかったと思いました。
三浦健太朗