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スマホに逃げない親はノーベル賞もの

皮膚科にて


皮膚科に行きました。
皮膚科には人がたくさんいます。
多分、1時間以上待つでしょう。
待っていると、面白いことがたくさんあります。
子どもが多いからです。
お母さんに大きな声でじゃれている男の子。
2歳から3歳くらい。
お母さんはしきりに「大きな声はだめ」と言っていますが、聞きません。
元気です。
男の子は、「おっぱいおっぱい」と言っています。
お母さんは、「おっぱいダメ」と言います。
小さな子とお母さんのやり取りですから、はなはださわやかです。


スマホをもたせただけなのに


それから、男の子と年が同じくらいの年の女の子が来ました。
私の隣を過ぎるときにひっこめていた私の足を踏んでいきました。
こちらを見ることもせず、何の反応もありません。
となりに座るとき、お父さんが抱きかかえて座らせました。
すぐに携帯でゲームを始めました。
声が聞こえません。
親子の会話もありません。
ずっと、その女の子は携帯でゲームをしています。
この光景を見て、先ほど「おっぱいはダメ」と言っていたお母さんに拍手を送りたくなりました。
大変なのに、よく相手しきったな!と。
ゲームをしている女の子にお父さんが声をかけました。
全く反応する様子もありません。
私の足を踏むのと、同じくらいの感じです。


ギャーっと泣いて


さっきの男の子は、診察室に入るなり、大声で泣き始めました。
生きています。
大きな鳴き声を聞いても、隣の女の子は世界で一人だけいるかのように、ゲームをしています。
女の子の慣れたゲームの手付きをみると、いつもやっているのだとわかります。
この子の中に本来あったあまりあるほどの子どもらしさは、一体どこにあるのでしょうか。
探してみたくなります。


生きていくエネルギーと向き合って


僕たち教員も、よくよ考えなければなりません。
おとなしく教室にいて、座っている子がえらいのか。
ときには、席を立って歩き出し、先生にツッコミを入れる。
そんな子をほめる日があってもいい。
もちろん、落ち着く時間は必要です。
でも、それだけではだめ。
子どもたちに聞いたことがあります。
先生の声が持つ力。
私が声を張って高い声で元気に話すと、子どもたちは笑顔になりました。
反対に、声を抑えて、低い声で話すと、子どもたちはとたんに元気がなくなりました。
「先生、やっぱり声は、大きくて元気な方がいいよ。その方が、ぼくたちも元気になる。」
と言いました。
人を笑わせるお笑い芸人さんの中で司会をされている方は、みな声を張って高い声で話します。
聞いている方も元気になってくるのです。

子どもを育てる大変さは分かりますが、子どもの生を受け止められる大人でないと、子どもが可愛そうです。
大人が犠牲を払って子どもと向き合うほど、子供は成長する、というデータがあります。
「おっぱいおっぱい」
という息子に、人がたくさんいる病院でも向き合いきったお母さん。
周りの目も気になっていたことと思います。
心苦しかったけど、子どもと向きあいたい、という思いを感じました。
小さなノーベル賞をあげたいです。
目立たないけど、子どもを育てるために大切なこと。
男の子の将来が、楽しみになりました。

                                               三浦健太朗

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