新人作家が病まないために〜企画が通らないとき
ちょっとだけ先輩の作家から、新人作家さん向けに病まないコツをご紹介するシリーズ。
今回は「企画が通らないとき」です。
前回はこちら。↓
企画が通らない
デビュー作を出したら(あるいは打ち切りになったら)、次からは編集部に企画を出さなければなりません。
企画が通って初めて、次の作品を書くことができます。
企画が通らないのはとても辛いものです。
最初のうちは「まあ通らないこともあるか」と余裕を持って対応できるのですが、何度出しても通らないとだんだんと落ち込んできます。
落ち込むだけならまだマシです。
ずっと企画が通らないと、やがてその落ち込みは担当さんへの怒りに変わっていきます。
「どうして、この企画の良さがわからないんだ!?」
「わからない担当が悪い!」
そして、その怒りが高じると、最終的にはこうなります。↓
「そんなにわからないなら、もう出してやらないからな!」
ついに、企画を出すのを止めるのですね。
企画を出さないことで、担当さんを困らせようとするのです。
ここまでこじらせてしまうと、回復はかなり難しくなります。
ですから、こうなる前に、企画を通すとはどういうことか、そして担当編集者とはどういう存在なのかを知っておくといいでしょう。
以下から説明していきます。
担当編集者とはなにか
さて、企画会議までのプロセスはこんな感じなのですが、
アイデア出し → 担当さんOK → 企画書作り → 企画会議
会議で企画が却下されるよりも、最初のアイデア出しで担当さんからOKが出ないことの方が多いと思います。
アイデア出しとは、担当さんに「こういう感じの作品を考えている」というアイデアを投げることです。
ここで担当さんからOKが出ないと、次の企画書づくりに進めません。
この段階で何度もNGが出ると、上で書いたとおり、作家と担当さんの関係が険悪なものになりがちです。
そういった事態を避けるためにも、「担当編集者とは何なのか」をはっきりさせておきましょう。
結論から言うと、担当編集者とは「フィルター」です。
4層くらいのフィルターだと考えるとわかりやすいでしょう。
このフィルターを通らないと、企画書づくりまで進めないイメージです。↓
担当編集者を「人」だと思いすぎると、軋轢が生じる原因になります。
もっと機械的なものだと捉えましょう。
担当編集者とは、アイデアを選別するゲートのようなものなのです。
では、フィルターの4層について見ていきましょう。
4層のフィルターとは
フィルターはこんな感じになっていると考えられます。↓
新しさ、ウリがあるか
レーベルカラーに合っているか
過去に実績があるか
好き嫌い
この4層を通り抜けることで、次の企画書づくりに進めるわけです。
それぞれ簡単に見ていきましょう。
1.新しさ、ウリがあるか
1枚めのフィルターは「新しさ、ウリがあるか」です。
アイデアに新しさやウリがないと、このフィルターに引っかかり、そのアイデアは却下されます。
アイデアが受け入れられないのは、この1枚めのフィルターに引っかかっている場合が多い印象です。
ですから、アイデアが却下されたら、まずは「新しさ」や「ウリ」があるか確認するといいでしょう。
また、新しさとウリでは、基本的には「新しさ」の方が重視されます。
「ウリ」というのは「打ち出したい作品の魅力」ですが、「ウリ」だけで売れるのはなかなか難しいからです。
「ウリ」が明確ならOKが出る場合もありますが、可能なら「新しさ」で勝負した方がいいですね。
2.レーベルカラーに合っているか
2枚めのフィルターは「レーベルカラーに合っているか」です。
レーベルや出版社には、それぞれに打ち出したい印象や雰囲気のようなものがあります。
それがレーベルカラーです。
たとえば「少年向け」とか「大人の恋愛もの」、「高校生の純愛もの」、「BL」、「女性向けファンタジー」……などですね。
レーベルはそれらの印象を崩さないように、出版する作品を制限しています。
ですから、たとえば「少年向け」レーベルなのに、「後宮が舞台の愛憎劇」といったアイデアを出しても、このフィルターに引っかかり、アイデアは却下されてしまいます。
自分が出しているアイデアが、レーベルの路線と明らかに違うようなら、かなりの修正が必要でしょう。
3.過去に実績があるか
3枚めのフィルターは「過去に実績があるか」です。
実績とは「売れたかどうか」ですね。
出したアイデアと似た作品が、過去にまったく売れていないなら、おそらくそのアイデアは却下されます。
ジャンルによって異なりますが、そのジャンルで絶対に売れないアイデアがあるものです。
そういった、そもそも売れないアイデアを出している場合は、よほどのことがない限り、通りません。
既存作とまったく同種でなくてもいいですが、せめて、過去に一度も売れたことがないアイデアは避けたほうが無難です。
4.好き嫌い
4枚めのフィルターは「担当編集者の好き嫌い」です。
これはほとんどない印象です。
編集者は自分の好き嫌いよりも、売れるかどうか、面白いかどうかをチェックします。
ですから、このフィルターはあまり気にする必要はありません。
ですが、アイデア出しでつまづく新人作家は、担当編集者が、この4枚めのフィルターで判断していると思いがちです。
つまり、「担当が好き嫌いで俺のアイデアを却下している!」と考えてしまうのですね。
このフィルターは目が粗いので、だいたいのものは通り抜けます。
アイデアが通らないのは、1枚めのフィルター「新しさ、ウリがあるか」に引っかかっている場合が多いです。
ですから、むやみに憤る前に、まずは「自分のアイデアに新しさがあるだろうか?」「ウリを一言でいえるだろうか?」と考えてみるといいでしょう。
売るためのフィルターではない
もう1つわかっておいた方がいい重要なことは、このフィルターは決して「売るためのフィルターではない」ということです。
もちろん、編集者は「売ろう」と考えています。
ですが、「売ろう」という思いより、どちらかと言えば「このレーベルらしい作品を作ろう」という思いの方が強いのです。
売るためだけなら、いまならネット小説をそのまま持ってきた方が良かったりします。
ですが、編集者には「自分たちで作品を作ろう」「新しい領域を切り開こう」という思いがあります。
ですので、担当編集者というフィルターは、売れることを最優先するのではなく、「このレーベルらしい作品で、かつ新しい作品」を優先して通すのです。
ですから、「こっちの方が売れるのに!」と思うアイデアが通らないこともしばしばです。
それは、そのアイデアが悪いというわけではなく、編集部の思いが上述のようなものだからです。
ですので、その編集部に企画を出す以上、そこは合わせる必要があるのです。
企画でつまづく前に
さて、以上くらいをわかっておけば、企画につまづいて暗黒面に落ちることはないと思います。
同じことを何度も言いますが、アイデアにOKが出ないのは、ほぼ「新しさ」がないからです。
決して担当編集者の「好き嫌い」ではありません。
却下されたら、まずは新しさがあるかどうか確認しましょう(たぶんないはずです)。
そして、売れそうなアイデアでも通らないのは、編集者が、「このレーベルらしい作品で新しい領域を切り開きたい」という思いを持っているからです。
これは仕方がありません。
おそらく志の高い編集部ほど、そういう思いが強いはずです。
ですから、そういった編集部とつきあっていくなら、作家側が合わせなければならないのです。
アイデアがぜんぜん通らないようなら、この記事のことを思い出してください。
担当編集者は理不尽な存在ではありません。
単なるフィルターなのだと機械的に捉えれば、もっと冷静にアイデア出しに臨めるでしょう。
今回のまとめ
「企画が通らないとき」という話でした。
企画が通らないとやがて担当編集者と敵対してしまう
担当編集者をフィルターだと捉えると攻略しやすい
フィルターは4層ほどある
アイデアが却下されるのは、ほぼ「新しさ」がないから
売れるアイデアが通らないのは、編集者の思いが優先されるから
企画が通らなくて文句を言っている新人作家さんは多いです。
(私も人のことは言えません)
文句を言えば少しは気が楽になるかもしれませんが、企画が通ればもっと気が楽になります。
一緒に企画を通していきましょう!
それではまたべあー。