3種類の文章の使い分け〜小説のちょっとしたコツ
崖っぷち作家のニジマルカです。
小説のちょっとしたコツや小技をご紹介するシリーズです。
今回は「3種類の文章の使い分け」という話です。
小説の文章は3種類
小説の文章は主に3種類あります。
1.描写
2.説明
3.セリフ
1,2は地の文に書かれる文章の機能的な分類。
3は基本的には「かぎかっこ」で囲われた会話文です。
ご存じとは思いますが、それぞれ見ていきましょう。
1.描写
見たもの、聞いたもの、感じたものなどをそのまま書くのが描写です。
戻ってみると部屋は荒らされていた。床には物が散乱し、壁際の本棚は倒され、テーブルがひっくり返っている。
カメラ(or 視点人物)の視界に収めたものを順番に書くことになります。
視界には同時にいろいろなものが入ってくるのですが、文章は連続表現なので、一つずつ書くしかありません。
描写の詳細度によって、ある程度、劇中時間を操作することができます。
劇中に流れる時間は、単純に言って、詳しく描写すると遅く、おおまかに描写すると速くなります。
これはカメラの移動速度を考えるとわかりやすいでしょう。
ゆっくり動くといろいろなものが見え、速く動くとおおまかにしか見えません。
例えば、ゆっくり歩くと道端に捨てられているゴミや塀に入ったヒビ、隅っこに生えている草などが見えてきます。
すると描写は詳しくなります。
一方、車で移動している場合は、大通りが見え、向こうの山々が近くなり、トンネルが大きく迫ってくるのを目にします。
すると描写はおおまかになるのです。
アクションシーンなどでは劇中の速度を上げたいと思うはずです。
そういう場合は逆に描写を詳しくすることでスローモーションのような効果を出し、速度を感じさせることもできます。
2.説明
情報をそのまま提示するのが説明です。
荒らされた部屋を見て立ち尽くす男の名はヤマダ。昨年田舎から上京し、今は小さな印刷所に勤めている。真面目だけが取り柄の青年だった。
小説は描写だけでも書けるかもしれませんが、それをするととても長くなります。
たとえば誰かの名前を提示する場合、描写だと「名前を呼ばれる」「名札を見る」「書類に書いてある」などと工夫しなければなりません。
ですが説明なら一文で済みます。
説明は描写を圧縮したものということもできるでしょう。
また説明は劇中の時間を止めます。
説明している間は物語の時間が流れません。
ですから多用すると読者はつまらなく感じます。
時間が止まっていることを感じさせない工夫としては、舞台を移動する間に会話の中で説明するというのがあります。
よく現場に向かう途中で事件の概要を説明したりしますよね。
あれは物語が進んでいるような印象を与えながら情報を提示する工夫の一つです。
3.セリフ
かぎかっこで囲われた会話文がセリフです。
「どうしてこんなことに……いやそれよりも警察を呼ばないと!」
地の文に直接セリフを書く場合もあります。
ライトな小説になればなるほど、一般的にはセリフの量が増えます。
また、そういった小説の読者の中には、地の文を飛ばしてセリフだけ拾い読みする人もいるようです。
そういう場合に備え、ある程度はセリフで説明する方がいいかもしれません。
説明的なセリフになってしまっても、話がわからなくなるよりはマシでしょう。
それぞれのバランス
それぞれの文章の割合については、以下のような特長があります。
・描写
多すぎると長くなる
少なすぎると雰囲気が伝わらない
・説明
多すぎると時間が止まる
少なすぎると長くなる+情報提示がうまくいかない
・セリフ
多すぎると雰囲気がなくなる
少なすぎると固くなる(難しそうに見える)
これらのバランスは狙っているジャンルや読者層によって変わります。
一般的なバランスはこんな感じでしょう。↓
一般寄りの小説
描写>説明>セリフ
エンタメ、ライトな小説
セリフ=説明>描写
一般小説によればよるほど描写が増えます。
描写があればあるほど雰囲気が伝わるので、(いわゆる)小説らしくなります。
昔の小説指南本だと「セリフをあまり使わないように」と注意しているものもありますね。
一方、エンタメやライトな小説ではセリフが増えます。
逆に描写は減る傾向です。
ライトなエンタメでは、読者の欲求は物語が展開することです。
雰囲気を味わうのではなく、話が進むのを楽しみたいのですね。
すると描写はあまり重要視されず、説明の分量が増えていきます。
むしろ描写が嫌われることすらあるでしょう。
いずれにせよ、それぞれの文章のバランスは、どのジャンル、どういう読者を狙うかによって変える必要があります。
今回のまとめ
小説のちょっとしたコツ「3種類の文章の使い分け」という話でした。
1.小説の文章は描写、説明、セリフの3種類
2.それぞれの文章の割合が多いか少ないかで読者に与える印象が異なる
3.文章のバランスは狙うジャンルや読者層によって変わる
新人賞などでも同じことです。
そのレーベルが望む文章のバランスがあるので、そこからあまり逸脱しない方が無難でしょうね。
それではまたべあー。