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新人作家が病まないために〜売れたとき・売れなかったとき
作家になって数年経ちますが、同期作家の中にも、デビュー作以来、新作を出せていない人がいます。
書けなくなってしまう新人作家さんも、どうやらたくさんいるようです。
(人のことは言えません。私もなかなか書けないので)
そういうわけで、今回から何回かに分けて、新人作家さん向けに「こう考えると楽になるよ」というコツをご紹介していこうと思います。
今回は「売れたとき・売れなかったとき」です。
デビュー作の苦しさ
デビュー作の執筆作業というのは本当に苦しいものです。
すべてが初めての経験ですから、わけもわからず、ただただ走り続ける感じです。
「いつ書き終わるんだろう?」
「この文章でいいのか?」
「もっと面白くできるんじゃないか?」
締め切りが近づけば近づくほど不安は募り、際限なく直そうとしてしまいます。
そんな苦労をしてなんとか作品を書き上げると、いよいよ発売日が来ます。
結果が出るのが恐ろしいような、でもどこか楽しみなような、そんな複雑な気持ちで発売日を迎えることでしょう。
実のところ、デビューしたての頃というのは、結果を知らされてもよくわかりません。
実態を知らないので、販売部数を知らされても、なんの実感もないのです。
ですが、私がいるようなエンタメジャンルで、シリーズものを出している場合は、後ほど、新人作家にもよくわかる結果が伝えられます。
売れなかった場合はこうです。
「次巻で打ち切りです」
売れなかったとき
打ち切りほど辛いものはありません。
特にデビュー作は思い入れも深いですから、打ち切りは相当こたえます。
私のデビュー作も打ち切りになりましたが、伝えられたあと、恥ずかしながら大泣きしてしまいました。
思い入れが深いからでしょう、本を出せないという実利的な辛さより、「登場人物たちに人生をまっとうさせてあげられなかった」という辛さの方が勝りました。
もちろん比べることはできませんが、たとえるなら、我が子を失った悲しみみたいなものでしょうね。
いま考えるとなんともナイーブなことです。
ですが、デビュー当時は、誰でも多かれ少なかれピュアなのです。
さて、売れなかったとわかったとき、たいていの新人作家は自分に責任があると考えます。
その姿勢は間違っていません。
ですが、「100%自分に責任がある」と考えるのはやりすぎです。
そう考えてしまうと「自分は駄目だ」「そもそも才能がない」「作家なんて自分には無理だ……」と負のスパイラルに落ちてしまいます。
小説を書こうなどと考える人は、真面目で誠実な人が多いのでしょう。
その真面目さで、自分を強く責めてしまうのです。
そんなとき、どうすればいいでしょうか?
半分は私のせいじゃない
まず、「100%自分に責任がある」と考えるのはおかしいのだと気づきましょう。
もっと言えば、その考え方は傲慢です。
あなたの能力だけで、売れるか売れないかが決まったりはしません。
出版には多くの人が関わっています。
「100%自分の責任だ」と考えるということは、協力してくれた多くの人たちを無視しているのと同じです。
ですから、その人たちにも責任を分けてあげましょう。
こう考えるといいです。
「半分は私のせいじゃない」
半分くらいは自分の責任だと思うのは健全です。
ですが、もう半分は担当編集のせいであり、編集部のせいであり、デザイナーさん、イラストレーターさん、書店さんのせいです。
決して、100%あなたのせいではありません。
売れなかったとき、打ち切りになったとき、自分を責めて落ち込んでしまうようなら、このことを思い出してください。
口に出してみるとさらにいいですね。
さあ言ってみましょう。
「半分は私のせいじゃない」
売れたときも
ところで、デビュー作が売れることももちろんあります。
ちゃんと売れた場合は、このような連絡があるでしょう。
「重版しました!」
重版とは追加で印刷することです。
ほとんどの本は重版しませんから、予想以上に売れたのだとはっきりわかります。
もちろん、私も重版したことがあります。(どやあ)
きちんと売れると、作家自身もそうですが、担当編集も、編集部も、出版社も、イラストレーターさんも、書店さんも、関わったすべての人たちが喜びます。
そして、こう思ったりするでしょう。
「ぜんぶ俺の力だな」
「俺の才能のおかげだ」
「俺ならまたヒットを出せる」
販促のためにキャンペーンや企画が動くこともありますし、作家仲間にも一目置かれますから、どうしても舞い上がってしまいます。
私は、売れた作家は、ちゃんとお金を使ったり、楽しそうにして、他の作家にうらやましがられる存在になるべきだと考えています。
売れた作家さんを目標にして、他の作家さんも奮起するからです。
ですから、売れたら調子に乗るべきだというのが私の考えです。
ですが、調子に乗りすぎると、逆に疎ましく思われてしまいます。
嫌なやつになってしまうのですね。
聞いてないのにアドバイスしたり、売れたことを鼻にかけるといったことをすれば、作家仲間にも敬遠されてしまうでしょう。
すると、誰も相手にしてくれなくなり、売れなくなったときや苦しいときにも助けてもらえません。
ですから、こういうときもこう考えるといいのです。
「半分は私のせいじゃない」
売れたのは、半分くらいはあなたの能力のおかげです。
ですが、もう半分は、関わってくれた多くの人たちの力です。
担当編集がいなければ、イラストレーターさんがいなければ、書店さんがなければ、成功しなかったのは間違いないでしょう。
嫌なやつになる前に、「半分はみんなのおかげだな」と立ち止まり、謙虚になりましょう。
謙虚な人を嫌いな人はいません。
するとあなたの名声はますます高まり、多くの後輩作家たちが目標とする立派な作家になれるのです。
売れて調子に乗りすぎたら、声に出して自分に言い聞かせるといいですね。
「半分は私のせいじゃない」
売れても、売れなくても、「半分は私のせいじゃない」と考えれば、それだけで気が楽になり、心を平穏に保てます。
苦しいときや道を踏み外しそうなときに、ぜひ唱えてみてください。
今回のまとめ
「売れたとき・売れなかったとき」という話でした。
デビュー作が売れるときも、売れないときもある
売れなかったときは自分に100%責任があると思いがち
自分の責任は半分くらい。残りは他の人たちの責任。
売れたときは100%自分の能力のおかげだと思いがち
売れたのは半分くらいは自分の能力。残りは他の人たちの力。
売れても、売れなくても、「半分は私のせいじゃない」
売れたときや売れなかったときというのは、ちょっと心のバランスが崩れるときなのだと思います。
そのバランスを元に戻すのが、「半分は私のせいじゃない」という言葉です。
続きは↓です。
それではまたべあー。