もはやバイデン再選は困難か;“ほぼトラ”阻止には候補者差し替えが必要かもしれない
日本時間6月28日午前に実施されたバイデン氏とトランプ氏の最初の討論会は酷いものだった。どちらかが次のアメリカ大統領になる見込みという現実が空恐ろしく感じられる程のレベルで、片方は老いを全く隠せず、認知能力の低下としか思えない醜態を晒した。もう一人も都合の悪い質問にはまともに応えず、いつもの事だが、手前勝手な根拠のない虚偽の主張を繰り返した。
どちらのダメージが大きかったかと言えば、それはバイデン氏の方であった。全部を視聴した方には明白だろう。
その声に力強さは全くなく、表情はほぼのっぺり状態、いつものように言葉に詰まるだけでなく、何を言いたいのかさっぱり理解できない発言もあった。討論会はメモ類の持ち込み禁止という条件で開催されたので同情すべき余地もあるが、余りにもお粗末であった。
討論会を主宰したCNNの事後報道では、民主党内には「もはやバイデン氏を候補者として擁護することは難しい」という声さえ上がったという。出演した民主党支持の専門家も「私はバイデン氏を愛している。しかし、今日の討論会のバイデン氏のパフォーマンスは悲しみを通り越して痛みさえ感じた」と吐露した。事後の即席調査でも、バイデン氏が討論に勝ったと見る調査対象者は33%、トランプ氏勝利と見る調査対象者は67%であった。
更に、大統領として国を率いる能力を充分に感じたという調査対象者はバイデン氏に対しては僅かに14%、トランプ氏に対しては36%であった。反対に、その能力を全く感じなかったという対象者はバイデン氏57%、トランプ氏44%だったという。トランプ氏への評価も酷いものだが、バイデン氏への評価はその遥か下だった。これこそまさにイタい。
11月の本選挙までには4ヶ月余りある。一心先は闇の政界においてはまだ何が起こるか分からないが、既に劣勢を伝えられていたバイデン氏がこの討論会での失態を挽回するのは非常に厳しい状況に追い込まれたと言って良いだろう。
そこで早くも取り沙汰され始めたのが、民主党の候補者の差し替えである。CNNの番組では「バイデン氏が立候補を辞退するのが一番スムースに事は運ぶだろう」という発言さえ、別の民主党選挙専門家から飛び出した。
候補者の差し替えはまだ可能である。正式決定するのは8月末の民主党の党大会だからだ。バイデン氏が立候補を取りやめなければルール上不可能に近いのだが、彼が身を引けば可能である。そして、それが党大会前であれば新しい候補者を党は自由に選べる。バイデン氏より不人気とさえ言われるハリス副大統領にする義務もない。
この先二週間程度で、討論会後の各種世論調査が出揃い、新たな情勢・トレンドが明らかになるだろうと言われている。その時、“もしトラ”が“ほぼトラ”になったということになれば民主党は選択を迫られる。
バイデン氏だけではなくトランプ氏も嫌だという有権者は多い。“史上最悪”とも言われる元大統領の復活を阻止することを、今や簡単ではなさそうだが、民主党が最優先する可能性を現状では否定できないのである。そして、それが実現するか否かはバイデン氏自身の決断次第になるのかもしれない。
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