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【支援事例】 パーキンソン病50代女性「気軽に何度も話しかけれるので喋り相手になり、発話の練習にもなりました」


今回取材したのは、新潟県に在住のパーキンソン病を患うAさん(50代女性)。

補足:パーキンソン病とは
パーキンソン病は、脳の特定の領域がゆっくりと進行性に変性していく病気です。特徴として、筋肉が安静な状態にあるときに起こるふるえ(安静時振戦)、筋肉の緊張度の高まり(こわばり、筋強剛)、随意運動が遅くなる、バランス維持の困難(姿勢不安定)などがみられます。多くの患者では、思考が障害され、認知症が発生します。

MSDマニュアル|パーキンソン病

Aさんは、理学療法士として働いている娘さんを通じて、スマートスピーカーとスマートリモコンの無料貸出の支援を受けることになりました。

支援前は、機器が自分にとって役立つのか疑問を感じていたものの、実際に使い始めてみると、声で照明を点ける操作により暗い場所でリモコンを探す手間が省け、安全性が向上し、特に便利だと感じたそうです。

この記事を通じて、詳しくご紹介していきます。


概要

支援者情報

支援当時の身体状況

パーキンソン病 50代女性
支援当時、Aさんは自分で歩ける状態でしたが、身体の動きに不安を感じていました。また、テレビやエアコンをあまり使用しておらず、照明を点ける操作だけが日常的に必要なものでした。そのため、機器の必要性を感じていない部分がありました。

支援内容

以下の機器をご自宅に設定/設置し、約1ヶ月間無料で活用いただきました。
・EchoShow8(スマートスピーカー)
・Switch Bot ハブミニ(スマートリモコン)

活用方法
・ラジオ、音楽、占い|スマートスピーカー
・音声による家電操作(照明やテレビ、エアコン)|スマートスピーカーとスマートリモコンの連携

機器利用中の生活の変化

スマートスピーカーとスマートリモコンの導入により、Aさんの日常生活にいくつかの変化がありました。照明のON/OFFを声で操作できることで、階段を上がる際の安全性が向上しました。また、滑舌が良くない時にスマートスピーカーは「分かりません」と反応することがあり、これが発話のリハビリの一環として役立つと感じられました。

支援終了後

約1ヶ月間の無料貸出期間終了後、自費購入に至らず。
貸出期間終了後、まだスマートスピーカーとスマートリモコンを必要としないと判断し、自費購入には至りませんでした。今後はリハビリの一環として体を動かし続ける意志があり、機器に頼りすぎることを避けたいという考えもありました。しかし、機器の便利さを実感し、将来的には使用を検討する可能性があるとしています。


取材内容

Aさんのご自宅に伺い、取材を実施

支援を受けることになったきっかけ

ー まずは、スマートスピーカーやスマートリモコンといった身近なICT機器を、約1ヶ月間無料で活用いただく今回の支援を受けた経緯について教えて下さい。

Aさん:
理学療法士をしている娘からこの支援のことを教えてもらったことがきっかけです。新聞かチラシかなんかで見たんだと思います。保健所の人に聞いたら、すぐに機器を持ってきてくれて、それで使い始めました。

ー 元々こうした機器の存在は知っていましたか?

Aさん:
いや、全く知りませんでした。最初はどういう風に使うんだろうっていう風に思いました。私が使ってもいいのかなっていうのがありました。

ー どうしてそのように思われたのですか?

Aさん:
自分には役に立たないかもしれないと思ったからです。あまりテレビも見てないし、照明を点けることくらいしか使い道がなかったから。私が借りてもいいかなって思いました。

ー 使用用途が合わないんじゃないか、と。

Aさん:
そうですね。今は自分で歩けるから、もっと動けないで困ってる人がいるなら、そういう人たちに教えてあげた方がいいんじゃないかなと思いました。
ただ、設定や設置を含めて、無料で1ヶ月間ほど貸していただけるとのことだったので、とりあえず試してみることにしました。

使用していた機器の機能と使用感

ー 無料貸出期間中に使用していた主な機能は何ですか?

Aさん:
ラジオとか占いとか、あとは音楽を聴いていました。それと、照明、テレビ、エアコンを音声で操作していました。特に照明の操作は一番使っていました。

また、自分の滑舌があまり良くない時に話しかけると、「すいません。わかりません。」って言ってくれるのが面白かったです。子供に同じことばかり聞くと怒られるんですが、スマートスピーカーだと怒らないので。気軽に何度も話しかけれるから、それがある意味リハビリになるっていうか、発話の練習にもなりました。

家族からの反応と生活の質の変化

ー 機器の無料貸出期間中、ご家族からの反応はどうでしたか?

Aさん:
声で照明のON/OFFができるようになったのが一番良かったと言ってました。

今までは夕方とかは真っ暗で、リモコンを探すのが大変でした。ただ、スマートスピーカーとスマートリモコンを利用し始めてからは、わざわざリモコンを探さなくても声で操作できるので、危なくないし、それが良かったんだと思います。

ー 機器を導入してみて、生活の質が上がったと感じましたか?

Aさん:
そうですね。楽しかったです。喋り相手が増えたり、暗い中でリモコンを探さなくてよくなったり、音楽も聞けましたし。

ー 使ってみて良かったなと思いましたか?

Aさん:
はい、良かったです。家電を声で動かせる機器があると知れて、実際に試すことができたので、生活する上で安心感が増しました。

声で照明を操作できるようになったため、暗い部屋の中でリモコンを探さなくて済むようになった

購入に至らなかった理由

ー 無料貸出期間が終了した後、機器を継続して使わない判断されました。理由は何ですか?

Aさん:
まだ動けるから、今はいらないかなって。でも、便利だなとは思いました。

ー 将来的には使う可能性はあるかもしれないけど、今はまだ必要ない、と。

Aさん:
そうですね。今から使うのは早いかなと思いました。声の操作に慣れてしまうと、体を動かせるのにサボってるみたいに思うのも嫌だなっていう感じもありましたし。

ずっと寝てばっかりいるのも嫌だから、動けるうちはリハビリみたいなイメージで少しでも動こうと思って。

動きにくいときは、理学療法士の娘に「ちょっと手伝って」って言ったりしますが、娘はすぐ「リハビリだよ」って言うんです。それを言われると返す言葉がないんですよ。

ー なるほど。

Aさん:
無理やりでも動かした方がいいって。動かなくなるとダメだからって。でも、いざとなったらあの機器があるからと、安心材料として頭の片隅に入れておくことができたので、今回支援を受けて本当に良かったです。


※以前支援させていただいた、脊髄小脳変性症の妻と暮らす70代の男性の方も、同じようなことを仰っていました

今回の支援をきっかけに『声で操作をする』という選択肢が増えました。将来、自分が病気で動きづらくなった時に、「妻が使っていた声で家電を操作する方法がある」と、すぐに代替手段を思い出せるようになりました。

自分が病気になった場合には、スマートスピーカーの使い方を妻が使っていたような形に変えようと考えています。今回の支援で自分自身も選択肢が増え、とても良い経験をさせてもらったと感じています。


難病患者やそのご家族へのメッセージ

ー 最後に、Aさんと同じような難病を患う方々やそのご家族に向けてメッセージはありますか?

Aさん:
とにかく、使えるものは今のうちから全部使えるようにした方がいいと思います。特にこの支援は最初にいろんな使い方を教えてもらえますし、わからないことはすぐに聞ける環境もあるので。

ー ありがとうございます。取材は以上になります。


お問い合わせ

私は現在、難病患者様の身体状況や生活環境に合わせて、身近なICT機器を一定期間無料で貸し出し、難病患者様の生活の質の向上と専門機器移行への準備を進め、ご家族の負担を軽減することを目標に、日々活動しています。

この支援に関するご質問や疑問点、支援依頼等ございましたら、こちらからご連絡ください。

また、地域の力で難病患者を支えるこの活動を継続するために、機器提供やサービス提供等でご協力いただける企業様・団体様からのお問い合わせもこちらからお待ちしております。

いただいたサポートは、新潟県地域おこし協力隊の任期後も難病支援を続けるための『活動資金』として活用させていただきます。