理想的な電源システムってなんだろう
最近、世界中でエネルギー問題について話題になっています。
ロシアのウクライナ侵攻によって世界中で課すこととなった経済制裁の影響で、ロシアからのLNG輸入がストップしてしまいました。戦禍はいまだに終結の出口すら見えていないため、こちらはまだ調達コストが高くなったままでいることが予想されます。
また同じタイミングで、2022年は化石燃料の調達費用が高騰したことから、エネルギーの調達コストが全体的に上昇し、結果的に多くの方が生活や経済における貴重なインフラであるエネルギーに大きく注目されたことと思います。
では、どんな状態になれば調達等の輸入リスクなどに晒されることなく、安心して事業経営や生活を送ることができるのでしょう。
再生可能エネルギーが注目されていることは周知の通りかと思いますが、再生可能エネルギーだけでは日本全体のエネルギーを賄うには、まだまだ課題が多いのも事実です。
もちろん、環境にやさしいだけでなく、コストも安く、必要なときに電力を調整することができるため、非常に魅力的ではあるのですが、LNGや石炭、原子力発電とは違い、天気に左右されることがあるため、技術的な調整が必要となってしまう点は大きな課題だと言えます。
そこで今回は、改めて、日本にとっての理想的な電源システムとはどういった状態であるのか、現状のシステムを解説する形で解説してみようと思います。
理想的な電源システム
結論として、エネルギー政策における理想的な電源システムとは「豊富で枯渇する危険性がなく、安価で持続可能な電力」のことだと言え、日本だけでなく世界中で望む電力供給のあり方です。
それを実現するためには以下のような条件が必要となります。
安定的な供給ができ低コスト
豊富なベースロード電源の確保環境に優しい
豊富なVRE電源の確保需要に応じた柔軟な電力供給
電力貯蔵システムの柔軟な運用
おそらく、ベースロード電源やVRE、電力貯蔵システムといった言葉は、あまり聞きなれないものでしょうから一つひとつ丁寧に解説していきます。
その上で、「理想の電源システム」を達成することが決して容易ではないことを理解していただくと同時に、そのような状態になることを目指しつつ、「電気料金だけ」に目と囚われることなく、統合的に電気について考えていただける機会になれば、と思います。
電源の種類別にみる特徴
ベースロード電源/ミドル電源/ピーク電源
ベースロード電源は、大きな発電設備で電力を作り、安定して電力を供給することができる電源のことをいいますが、他にもミドル電源やピーク電源と呼ばれるものがあり、それぞれにメリットとデメリットがあります。
ベースロード電源やミドル電源、ピーク電源を利用した発電には、主に以下のような発電方法があります。
火力発電(LNGや石炭)
水力発電
原子力発電
このうち、火力発電は、天然ガスや石炭、重油などの化石燃料を燃やして発電し、水力発電はダムや河川の水を利用してタービンを回転させて発電します。原子力発電は、原子核分裂により発生する熱を利用して発電します。
これらの発電方法は、それぞれに特徴があり、メリットもデメリットもあります。
火力発電は、燃料が安定的に供給されることが多いため、安定した電力供給が可能です。石炭による発電は日本のベースロード発電の主軸ですし、LNGは調達先を分散させやすいことも特徴です。しかし、一方で、環境に悪影響を与えることがあるというデメリットがあります。
水力発電は、安定的に発電できる再生可能エネルギーであり、環境に優しいエネルギー源ですが、ダム建設による環境破壊や河川の水量変動による被害が問題です。
原子力発電は、CO2排出量が少ないことが特徴ですが、廃棄物の問題や原子力災害のリスクが指摘されています。
VRE(Variable Renewable Energy:可変再生可能エネルギー)電源
VRE電源は、VRE(Variable Renewable Energy:可変再生可能エネルギー)電源といい、太陽光や風力などの自然の力で発電するものです。
環境にやさしく、二酸化炭素の排出量を抑えることができることが特徴ですが、天気によって発電量が変わることが課題であり、これからの技術的な成長と調整が必要です。
再生可能エネルギーとは
再生可能エネルギーは、風力、太陽光、水力、地熱など、自然の力を利用して発電するエネルギーのことで、環境に優しく、二酸化炭素の排出量を抑えることができることから、これらを利用した発電技術を懸命に仕立てているところです。
再生可能エネルギーは、二酸化炭素の排出が抑えられるため、地球温暖化防止にも役立つことや発電するための燃料が無限に賄えることから、今後ますます重要性が高まることが予想されます。
しかし、電気は「何かを起こした際に発生するエネルギー」のため、根本的には性質的に溜めておくことはできません。
誰かと押し相撲をしたとして、その時に発生した力(エネルギー)を溜めておいて後日、違う人と押し相撲をした際に使う、なんてことができないのと一緒で、基本的には発生させた電気はその場で使うことが前提となります。
そのため、再生可能エネルギーで発電したとしても、それを効果的に利用するためには電力を化学物質に変換させて保存しておくことが必要で、それが次の電力貯蔵システムになります。
電力貯蔵システムのピークシフト機能
電力貯蔵システムのピークシフト機能は、蓄電池に代表される電力を貯めて、需要ピーク時に電力を供給することができる機能です。
ピークシフト機能を持った電力貯蔵システムを導入することで、需要ピーク時に余剰電力を貯蔵し、必要な時に供給することができます。
電力貯蔵システムには、大きく分けて以下のような種類があります。
電気二次電池
圧縮空気貯蔵システム
重力式貯水池
フライホイール
熱エネルギー貯蔵システム
電気二次電池は、繰り返し充放電ができる電池のことを言います。基本的に電気は溜めておくことができません。そのため、発電した電気は他のものに変換して保存することを可能にするのがリチウムイオン電池などの蓄電池となります。
これを太陽光発電や風力発電などで発電された電力を蓄電するために利用することによって環境にやさしく、運用も柔軟な蓄電システムが構築できるのです。
圧縮空気貯蔵システムは、電力需要の少ない夜間に圧縮空気をタンクなどに貯めておき、昼間にガスタービンによる発電のために利用されます。
通常のガスタービンでは空気を圧縮するためのエネルギーが必要ですが、これを利用することで需要が高い時に放出することで電力を供給することが可能になります。
重力式貯水池は、川やダムをせき止め、ダムに溜まった水を発電用に用いるもので、水を高地に貯め、需要が高い時に放流することで水力発電を行います。
しかし、河川の短い日本では建設が可能な場所が少ないだけでなく、新たにダムを建設する必要があるため非常に環境負荷の高いものとなってしまいます。
熱エネルギー貯蔵システムは、熱を貯めて、需要が高い時に発電する方法です。代表的なものに、熱蓄熱式発電システムがあります。
他にもフライホイールや揚水式での貯蔵システムなどがありますが、これらの技術を使うことで、より安定して効率的な電力供給を可能にできるのです。
理想的な電源システム構築に必要なこと
さて、ここまで書いてきた内容を整理すると、以下のようにまとめられます。
安定的な供給ができ低コスト
豊富なベースロード電源の確保環境に優しい
豊富なVRE電源の確保需要に応じた柔軟な電力供給
電力貯蔵システムの柔軟な運用
これらを現状の技術力などで賄えるのかといえば、正直なところ、実現は不可能です。ところが、確実に技術は進歩していますし、何よりもその分野に事業投資を繰り返していくことによって進歩の速度は速くなります。
消費電力を減らすことや節電を繰り返すことも大事なことではありますが、同時に、10年後20年後を見据え、現在の電気に対する考え方を統合的に考えてみることが必要となってきます。
たとえば、非常時に蓄電池を用意しておくことで事業が滞ることなく運用することが可能になるでしょうし、もしかしたら非常用電源として機能するかもしれません。
また、事業用の太陽光など再生可能エネルギーで自家発電を行うことにより、電気料金の上下に悩まされることが少なくなる可能性もありますし、そこでLEDを電灯ではなく装置から変えることによって消費電力の抑えることにつながることも期待できます。
今回の記事が少しでも多くの方が、電気について料金だけでなく事業経営における大事な資源として捉えられるようなキッカケとなれば幸いです。
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