【2024 Word】SDGsとサステナビリティー
毎年恒例、その年に気になった和製英語をとりあげる「Word of the Year」。年末すべりこみのこのタイミングになってしまいましたが、今年もいくつかお届けしたいと思います。まず第一弾は「SDGsとサステナビリティ」です。
SDGs(Sustainable Development Goals 持続可能な開発目標)が国連で採択されたのは2015年のことですから今年生まれたワードというわけではありませんが、この数年、日本における認知度は飛躍的に高まりました。今年1月の朝日新聞調べでは、認知率88.3%。今やSDGsというワードがそのまま「サステナビリテイに配慮すること」、さらに狭義に「エコなこと」を示す一般名詞化した印象があります。環境に配慮することを「それってSDGsな感じ」などと言ったりしますし、SDGsを冠した表彰の類も多く見かけます。「日経SDGs経営大賞」「地方創生SDGs金融表彰(内閣府)」「神戸SDGs表彰」「SDGs Quest 未来甲子園」などなど、官民こぞってさまざまな賞が創設されているようです。
さて、これらはどう英訳するのが良いでしょうか。SDGsは国連で採択された取り組みですから、さぞ国際的に認知されているものと思い込み、「That’s SDGs」とか「SDGs Award」と直訳しても、おそらく英語ネイティブには怪訝な顔をされることでしょう。と言うのも、日本以外の国でのSDGs認知率は、実はそこまで高くないのです。
消費者調査大手IPSOS社の2019年の調査によると、「SDGsという語を聞いたことがある」人はアメリカ、イギリスで共に50%。2022年のASMARQ社調べてもアメリカ49%なので、SDGsの認知率は日本のおよそ半分程度にとどまっていると見て良いでしょう。
(日本だけ特異的にSDGsの認知率が高まったのは、政府が内閣に「SDGs推進本部」を設け官民を挙げて普及に力を入れたこと、中でも2020年に「新学習指導要領」のもとで小中学校においてSDGs教育に力をいれるようになったことが要因と言われていますが、本稿のテーマからはやや外れるので、詳しくはまた別の機会に…)
とにもかくにも、SDGsが持続可能性への取り組みを総称するようなステイタスを得ている国は日本ぐらいなもので、英語圏では従来どうりsustainable / sustainability という語を用いることが一般的です。
たとえば、冒頭に例示した「それってSDGsな感じ」は、That’s good for sustainability(サステナビリティに良いね)とか、環境課題に特化した文脈であれば That’s environmental friendly (環境にやさしいね)などと訳すと意味が通じるでしょう。
今年も記録的な猛暑で、地球温暖化の懸念は、SDGs制定当時よりも一層深刻化しているように思われます。サステナビリティーへの本質的な取り組みが、来年もさらに進んでいくことを願いつつ…。みなさま、どうぞ良いお年をお迎えください。
(文責・楠田倫子)