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【2024 Word】 50-50(フィフティ・フィフティ
2024年に気になった和製英語、第二弾はスポーツ関連ワードです。今年はパリオリンピックなどで日本選手の世界的活躍が目覚ましい年でしたが、言うまでもなく最も記憶に残ったのはドジャースの大谷翔平選手でした。
野球ファンでなくとも毎日のように大谷選手を目にし、追いかけた一年でもありました。今年の流行語にもなった50-50(フィフティ・フィフティ)。これは数字なので万国共通、英語でも日本語でも同じ意味を表しています。つまり、大谷翔平選手がMLB (大リーグ Major League Baseball) 史上初めて、1シーズンで50本塁打(home run) と50盗塁(stolen base)を達成したということです。大谷選手は最終的には54本塁打と59盗塁という驚異的な記録を残すという偉業を達成し、その名を歴史に刻みました。
これにより大谷選手は3年連続大リーグのMVP(Most Valuable Player)に満場一致で選出され、数多くの賞を獲得しました。ロサンゼルス市は、大谷選手の功績とロサンゼルスへの歴史的な影響力を讃えて、背番号が17であることから5月17日を Shohei Ohtani Day に制定しました。日本人としてこれほど誇らしいことはありません。
スポーツ用語にはカタカナ語が多く、一見英語のままで通じそうに見えますが、実は和製英語が多く、英語で話すときは要注意です。トップバッターは、打順で一番最初に打つ選手「先頭打者」を指しますが、これは典型的な和製英語で、英語では a leadoff hitter と呼ばれます。
投手の投げたボールが打者の身体に当たることを「デッドボール」と言いますが、こちらも和製英語。英語ではhit by pitchと言います。 A ball is declared "dead" (試合は一時停止)というと、試合が中断された状況を意味することになり、審判が A ball is “live” again (再びプレー可能)と合図を出すまで、試合は再開されません。
冒頭で数字は万国共通と言いましたが、野球のストライクやボールを言う順番は日米で逆です。例えば、「ツー・スリー」と日本語でいう場合、ツーストライク・スリーボールを意味しますが、英語ではスリーボールを先に、ツーストライクを次に言います。The count is now three balls and two strikes.
組織やグループ中でずば抜けている2人を日本語では「ツートップ」と言いますが、これも英語では 逆でtop two と言います。
As for the top two star athletes in the Dodgers, they are typically considered to be Mookie Betts and Clayton Kershaw.(ドジャースのツートップ・スターアスリートについて言えば、通常ムーキー・ベッツとクレイトン・カーショーと考えられています。)これらは、日本語と英語の発想と語順の違いがよく現れている例だと言えます。
また、今年は大谷翔平選手の「ヒーローインタビュー」が何度も見られましたが、この華やかな響きのカタカナ語(和製英語)は、英語で言うと気落ちするほどフツーで、a post-game interview (試合後のインタビュー)と言います。もちろん、少し華やかに言おうと思えば説明的に表現することはできますが、ヒーローインタビューの華やかさにはかないません。
After leading the Dodgers to victory with his outstanding performance, Shohei Ohtani was featured in the post-game interview, where he discussed his key plays and the team's strategy.
(ドジャースを優れたパフォーマンスで勝利に導いた大谷翔平選手は試合後のインタビューに登場し、彼の重要なプレーやチームの戦略について語りました。)
世界中がソーシャルネットワークで繋がっている現在、野球やバスケットボール、フィギュアスケートなど本場のスポーツ中継をSNS (この略語は和製英語。英語ではsocial media)などで気軽に見ることができるようになりました。英語でスポーツ観戦をして、スポーツ関連の和製英語をチェックしてみても面白いかもしれません。
今年はヒップホップユニットCreepy Nutsの ”Bling-Bang-Bang-Born” も流行語に選ばれ、言葉を超えて子供から大人まで世界中の多くの人たちがインターネットの中でリズムに合わせて踊り、BBBBと頭韻(alliteration)を踏む歌を一緒に楽しむ、という世界的な経験をしました。これからは言葉を超えたスポーツや音楽を私たち個人が共有して楽しむ世界がさらに広がっていくような気がします。このような動きが世界平和に繋がっていくことを願ってやみません。
(文責:加藤麻子)