【行政HPの英語】ゴミ出しのルール
新連載【行政HPの英語】第3回:「ゴミ出しのルール」
ゴミ出しのルールは、各国の環境への考え方や文化の違いにより大きく異なります。日本国内においても、地域ごとに分別方法やルールが異なり、その細かさや複雑さから適切なゴミ出しに慣れるまで時間がかかる場合があります。特に外国人住民にとっては、文化的な違いに加え、行政のウェブサイトに掲載された英語表記が日本語の直訳に留まっていたり、不適切な表現や用語の統一性が欠けていたりするため、正しく理解できず混乱を招くことがあるようです。
例えば、弊社のアメリカ人従業員が最近代々木上原から下北沢へ引っ越した際、渋谷区と世田谷区でゴミ出しルールが異なることに戸惑ったと話していました。マンションのゴミ置き場には日本語と英語でルールが掲示されていたものの、キャンドルの入ったガラス容器のようなものが「燃えるゴミ」なのか「燃えないゴミ」なのか判断がつかず困ったそうです。このような具体的な事例は、外国人住民にとってゴミ出しルールの理解がいかに難しいかを示しており、情報提供方法の改善が急務であることを示唆しています。
日本では、ゴミは主に4つのカテゴリーに分けられます。①燃えるゴミ ②燃えないゴミ ③資源ゴミ④粗大ゴミです。住んでいる場所によっては、これらのカテゴリーがさらに細かいグループに分けられることがあるので、地域のゴミ収集ルールやスケジュールについては、地元の自治体の公式ウェブサイトを確認して最新情報を把握する必要があります。
例えば、目黒区のウェブサイトを見ると、日本語、英語、韓国語、中国語版の細かい情報がPDF形式で掲載されています。日本語版が最も詳細な説明ですが日本人にも分かりづらく、他の言語はそれを要約した上で日本語に直訳しているため、さらに分かりにくい印象を与えています。
外国人住民向けの「ゴミ分別方法」の説明に関する提言
本稿では、英語話者をはじめとする外国人住民に向けて、地域の「ゴミ分別方法」を正確かつ効果的に伝えるための方法について提言したいと思います。
引っ越しをして市役所で住民登録新を登録すると、ゴミの正しい捨て方について詳しく説明したパンフレットをもらうはずです。その際に、自分の国とは異なり、日本のゴミの分別は日本独自のルールに基づいているため複雑に感じられるかもしれないけれど何時で相談できるから安心して下さい、と説明すると良いかもしれません。
そして、自治体側は、日本のゴミの分別ルールは、外国のゴミ出しルールとは異なることを意識した上で、地域独自のルールを誰にも分かるように、まず大きなカテゴリーから簡潔に説明することが重要だと考えます。つまり、先に記した4つの大きなカテゴリーについて簡単に説明した上で、必要な場合はそれをさらに細かいグループに分けるなどして、日本語の文章の直訳に頼るのではなく、読み手の立場に立って、誰にでもわかる英語(またはその他の外国語)で書くことが求められるのです。
1. Burnable or Combustible Garbage (燃えるゴミ)
2.Non-burnable or Non-combustible Garbage (燃えないゴミ)
3. Recyclable Garbage(資源ゴミ)
4. Oversized Garbage(粗大ゴミ)
これが、外国人住民への効率的な啓発活動の第一歩になると思います。
現在、多くの地方自治体のホームページではAI機械翻訳ツールが活用されていますが、機械翻訳をした後に、自治体の担当者がプロの翻訳者と共に独自の考え方やルールが正確に説明されているかを確認し、必要があれば修正したり推敲したりする必要があります。機械翻訳だけでは用語が一貫性に欠ける場合や、誤訳をすることもあります。そのため、地域の「ゴミ出しルール」に適した統一された用語集を作成し、これをAI機械翻訳ツールに機械学習させることを推奨いたします。これにより、異文化背景を考慮した親切で分かりやすい表現を実現できると考えます。
この取り組みは英語に限らず、中国語や韓国語など、さまざまな言語にも応用することが可能です。そのため、地方自治体には、これらの言語においても「ゴミ出しルール」を正確かつシンプルに説明する必要性を理解いただくことが第一歩となります。そして、適切な予算を確保した上で、外国人住民が入国や入居時などの早い段階で地域のゴミ分別ルールを理解できるよう、啓発活動を推進することを提案いたします。このような取り組みを通じて、地域全体として外国人住民の生活の質を向上させるとともに、円滑なゴミ分別の実現を目指していくことが期待されます。
地方自治体のウェブサイトにおける誤訳の一例として、和製英語の使用が挙げられます。例えば、「ホームページ」という言葉は英語として存在しますが、本来はウェブサイトの最初のページ(トップページ)を指します。一方で、日本語における「ホームページ」は、すべての情報を含むウェブサイト全体を指すため、この違いが外国人住民に誤解を与える場合があります。同様に、「ペットボトル」という表現も課題となっています。目黒区の英語版ウェブサイトでは「PET bottles」と記載されていますが、英語圏では一般的に「plastic bottles」と呼ばれることが多く、こうした違いが混乱を招く原因になり得ます。これらの問題は、用語集を作成し統一することで容易に解決できると思います。
また、マンションのゴミ置き場などに掲示される注意書きにも課題があります。日本文化特有の表現がそのまま直訳されることにより、外国人住民に戸惑いを与えるケースもあります。たとえば、「ゴミの分別や資源物の出し方のルールを守り、ゴミの収集場所や資源物の収集場所を清潔に保つようご協力をお願いします。また、収集場所周辺にお住まいの方への配慮として、指定された場所にゴミや資源を散乱させないようお願いします。」といった文章が英語に直訳されると、仮に内容は理解できたとしても、具体的に何を求められているのかが明確でない場合があります。
こうした混乱は、文化や習慣の違いによるものです。例えば、アメリカの一部地域(メリーランド州やカリフォルニア州など)では、大型のゴミ収集車が朝7時までに道路脇に置かれた車輪付きの大型ポリバケツを収集するスタイルが一般的です。一方で、日本では小型のゴミ収集車が狭い道路を通り、小さなゴミ袋や45リットルのゴミ袋を回収しますが、ゴミが散乱していることもあり、不潔な印象を持たれることがあります。外国人住民の中には、「なぜ道路脇にポリバケツを出すよう統一しないのか」と疑問に思う人もいるようです。
このように、異なる文化や習慣の中で育った人々に日本のゴミ出しルールを説明するには、地元のルールを外国人目線で客観的に見直し、文化の違いを意識しながら分かりやすく伝える努力が重要です。
最後に、日本人にも異文化を簡単に擬似体験していただけるようアメリカのゴミ収集業者が運営するウェブサイトのリンクを掲載してみます。互いの異文化理解により、外国人住民との相互理解がさらに深まり、地域全体の生活環境の向上につながることを願います。https://mydisposal.com/
(文責:加藤 麻子)