GO TO キャンペーン
鶴田 知佳子
Go Fight! は、正しい英語で、応援のときのかけ声などで使えると書いた。(コースターとファイト!スクショとクレカ) ところで、なんとも気になるのが今、行われている政府のキャンペーンのキャッチフレーズだ。一部、英語を使っている。しかも、トラベル、イート、イベント、商店街などといくつもある。
”GO TO” への違和感
放送通訳の現場で同僚と話をするとき、これでいいのか?と話題になる。どうして気になるのか、なぜ違和感があるのか。ふと思った。Go to Kyotoのようにtoのあとは地名がくる、とこの表現を英語として捉えているから違和感があるのだと気づいた。しかし、政府がネーミング(これ自体がカタカナ語)をするときに、そもそも英語だと思ってつけているわけではないのではないか。そう思うとなぞが解けた気がした。これは日本語なのだ。
自由自在に作られるカタカナ語
今までに政府や役所が作った英語もどきの名称は、マイナンバーカード、ハローワーク、シルバーシートなどとすでに定着している。しかも、マイナンバーカードはこれからデジタル庁ができるとあっては、各種手続きが便利に一本化されるという。さらには日本語の造語能力の高さを使って、「マイナポイント」などと自由自在にカタカナ語が作られている。
その響き故に歓迎されるカタカナ語。本当に意味のある言葉なのだろうか?
しかし英語混じり表現を英語とみると気になるのが、例えばDoを使った商品名だ。House DOという住宅ローンまである。文字の視覚的な効果も大きいと思う。GO TO DOなどと英語大文字はインパクトがあるどうやら英語の単語を使うと「勢いがある」「元気になる」「かっこいい」「洒落てみえる」ということがあるのだろう。翻訳研究の柳父章が提唱する「カセット効果」がここに現れていると思う。柳父は、『翻訳とはなにか 日本語と翻訳文化』(1976:p23)において、翻訳語やカタカナ語は意味がよく通らぬままで使われ、しかもむやみに使われているとして、この現象を英語でいうcase、フランス語のcassette(宝石箱)になぞらえる。以下、引用する。
元気のよい響きの良いことばにつられて、目くらましにあってはならないと思う。
(2020年10月10日)