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【日本遺産の基礎知識】祈る皇女斎王のみやこ 斎宮(三重県)

執筆:日本遺産普及協会監事 黒田尚嗣

三重県の各市町村の日本遺産「祈る皇女斎王のみやこ 斎宮」の基礎知識を紹介します。
※本記事は、『日本遺産検定3級公式テキスト』一般社団法人日本遺産普及協会監修/黒田尚嗣編著(日本能率協会マネジメントセンター)より一部を抜粋・再編集したものです。


日本遺産指定の背景

古代から中世にわたり、天皇に代わって伊勢神宮の天照大神に仕えた「斎王」は、皇女として生まれながら、都から離れた伊勢の地で、人と神との架け橋として、国の平安と繁栄を願い、神への祈りを捧げる日々を送りました。
斎王の宮殿である斎宮は、伊勢神宮領の入口に位置し、都さながらの雅な暮らしが営まれていたと言われています。
地元の人々によって神聖な土地として守り続けられてきた斎宮跡一帯は、日本で斎宮が存在した唯一の場所として、皇女の祈りの精神を今日に伝えています。

斎宮での暮らし

1.斎王の始まりと斎王群行

語り継がれる伝説の初代斎王は、天照大神の御杖代であった豊鍬入姫命(とよすきいりひめのみこと)、その後を継ぎ、天照大神の鎮座される場所を探し諸国を旅し、伊勢の地(現在の明和町大淀)に辿り着いた倭姫命(やまとひめのみこと)です。
斎王は、飛鳥時代に制度が確立して以降、天皇の即位に伴って、未婚の内親王または女王から選ばれ、200人余りともいわれる従者に伴われて、斎王群行と呼ばれる5泊6日の旅により、斎宮へ向かいました。

2.祈る斎王と王朝文学

斎王が伊勢神宮に赴くのは、9月の神嘗祭(かんなめさい)、6月、12月の月次祭(つきなみさい)の年3回のみでした。それ以外の日々は斎宮で厳重な慎みを保ち、祈りの日々を過ごしながら、神と人との架け橋となっていました。
神に仕える身であるがために、恋愛を禁じられていた斎王ですが、そんな斎王の悲恋をテーマにした物語が『伊勢物語』です。69段「狩の使」には、在原業平(ありわらのなりひら)と斎王の一夜の出会いが描かれており、斎王が在原業平との別れを惜しみ、歌を詠み交わしたという故事にあやかって、大淀にある松を業平松と呼んでいます。

3.斎宮での暮らし

斎王の斎宮での暮らしは、祈りをささげる慎ましやかな生活の一方で、十二単を纏(まと)い、貝合わせや盤すごろくを楽しみ、歌を詠むといった都のような雅やかな生活でした。斎王の身の回りの世話、庶務などを50人近くの女官が行っていました。

4.斎王の解任

斎王は、天皇の崩御や譲位によって新たな天皇に代わるとき、肉親が死ぬなどの不幸があったとき、そして、自身の病などにより交代となりました。斎王制度が続いたおよそ660年の間に、60人以上
の斎王が斎宮に赴きましたが、赴任を終え、無事に都に帰った斎王もいれば、斎宮で亡くなった斎王もいます。
この斎王制度も、南北朝時代以降、国内の兵乱のために廃絶し、斎宮も「幻の宮」となってしまいましたが、斎宮に住む人々は、斎王の御殿があったとされる場所を斎王の森、斎宮の人々に親しまれている竹神社を野々宮と呼び、神聖な土地として後世に残してきました。

平安時代の群行路・帰京路

「祈る皇女斎王のみやこ 斎宮」の詳しい情報はこちら

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著者プロフィール

日本遺産普及協会代表監事。近畿日本ツーリストなどを経て、現在はクラブツーリズム株式会社の顧問を務める。旅の文化カレッジ講師として「旅行+知恵=人生のときめき」をテーマに旅の講座や旅行の企画、ツアーに同行する案内人や添乗員の育成などを行う。また自らもツアーに同行し、「世界遺産・日本遺産の語り部」として活躍中。旅行情報誌『月刊 旅行読売』に「日本遺産のミカタ」連載中。著書に『日本遺産の教科書 令和の旅指南』などがある。日本遺産国際フォーラム パネリスト、一般社団法人日本旅行作家協会会員、旅の文化研究所研究員、総合旅行業取扱管理者

運営:日本遺産普及協会


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