パンクチュアルな日本人、日本語学習者
初めて英語で「punctual」という言葉を習ったとき、えー、わざわざそんな言葉があるんだ~!と思ったのを覚えている。
ドイツ語にももちろんある。
pünktlich、ピュンクトリッヒと言って、なんだかとてもかわいい音だ。
てっきり英語はドイツ語由来だと思っていた。
だって、南欧にそんな時間の概念があるわけない!←偏見
(集合時間の2時間後に集合なんでしょ?w)
ところが、
フランス語ではponctuel、イタリア語ではpuntualeだそうなので、どうやらラテン語由来のようだ。
元になったラテン語「punctum」はポイントを意味するらしい。
まあ、ともかく「ここまで!」と指し示された期限、時刻までにどうにかせえというのがパンクチュアルと言えるだろう。
私は自営業なので、請求書を出して生徒さんたちに授業料を払っていただいている。
請求書を出して、数日後に口座をチェックするのだが、大抵の生徒さん(保護者)はすでに入金してくれている!
今は個人の生徒さんは10件だけど、今までのトータルで20件程度はあっただろうか。
それでもやはり9割以上の人が即日入金だったように思う。
それから大学などで宿題を課すと、同じく9割くらいの人は締切を守る。
大学生は他の授業との兼ね合いもあるので、提出日の2週間ほど前に通知する。
半数近くの人は締切日ではなく、その前にもう提出してくれる。
さらに昔にさかのぼって、補習校で教えていたときに副教材の集金は担任の仕事であった。
支払い日に全部集まれば、そのまま事務に提出するだけで楽なんだけど、遅れる人が必ずいた。
本当はいけないのかもしれないが、大金を手元においておくのがいやなので、自分のお金をとりあえず足して、その日に事務に出してしまっていた。
私の個人的な「貸し」である。
遅れる人(家庭)は、たまたまではなく、いつも必ず遅れた!
集金だけでなく、忘れ物なども多い生徒(家庭)だったので、もうここまで来たら「性質」と言っていいだろう。
1つのクラスの話ではない。
毎年クラスが変わっても、学年が変わっても、必ず1クラスに2,3人は締切にルーズな生徒(家庭)がいるのだ。
割合で言えば1割というところか。
さあ、同じ事をドイツの学校でやったらどうであろうか。
たまに遠足の費用の集金などがあり、私は忘れん坊だという自覚があるので、お知らせをもらったらすぐに子どもにお金を渡す。
細かいのがない場合は、一旦子どもに借りてでも用意しておく。
子どもに返すのが遅くなっても(忘れても?!)大きな問題じゃないが、学校に持っていくのを忘れたら、子どもも可哀想だし、先生も面倒だと思うのだ。
だがしかし、うちの子たちはよく
「今日持ってきていたのは、私と〇〇だけだったよ~」
(〇〇ちゃんのお母さんも日本人w)
などと言う。
日本でルーズな人の割合が1としたら、移民大国ドイツでは、今やピュンクトリッヒな人の割合が1でしかないのだ!
そんな状況でありながら、私の生徒さんたちの振り込みの速さは驚異的だと思う。
日本人家庭もあるが、実はほぼドイツ人家庭だ。
移民背景の人もいる(両親は外国出身、祖父母は外国在住、子どもはドイツ国籍など)が、まあ、決して安くはない授業料を払えるのだから、経済的に成功している人たちと言えるのかもしれない。
「過労死」とか「ストレス大国」とかのネガティブなキーワードを見れば、大らかであることはもちろん利点だとは思う。
しかし、産業という点で見れば、時間にきっちりしていることは当たり前のことではないだろうか。
日本が戦後、これだけの復興を遂げたのは、やはり時間や他のことをちゃんとできたからに他ならないと思う。
そう、日本語にはパンクチュアルに相当する一語の言葉はないが、なぜなら「きちんと」するのは時間だけに留まらないからだと思う。
折り紙だって、1ミリもずれていたら出来上がりには大きなが生まれてしまう。
「punctual」を習ったときの違和感は、むしろ「え、時間だけ?」と感じだったのだ。
「きっかり」とか「正確」のような言葉があれば、事足りるのではないか。
ただ、日本語では「3時に来てください」は、「きっかり3時に行く」のではなく、遅れないように5分前に行くとか、一般家庭なら準備があるだろうか、10分ぐらい遅れていくというハイコンテクストな考えがあるが、まあ、遅れないように行くのが基本であろう。
日本人が時間やもろもろのことに「ちゃんとしている」のはもちろん、日本語学習者もそういう人が多いのかなあとちょっとうれしくなる。
ただ日本では、自分はパンクチュアルに、他人には「おおらかに」接することができるようになれば、社会全体がもっとよくなるんじゃないかと思う。