「バナナでりんご」なドイツ語のund(and)
昨日の大学の授業で、複数の形容詞が重なるとき、1つ目の形容詞は「-て/で」になることを教えた。
い形容詞(学校文法の形容詞)は、「おいしくて、安い」、な形容詞(同形容動詞)は、「きれいで、元気」のように。
名詞もな形容詞と同じく、「-で」でつなぐ。
以前、動詞の重複も「勉強して、寝ます」のように、1つ目が「-て」になることは学習済。
そもそも第1課で助詞「と」が出てくるときから、口を酸っぱくして「と」は「名詞と名詞」にしか使えません!と言っている。
なぜなら、ドイツ語のundは、名詞同士はもちろん、動詞同士、形容詞同士、文同士をつなげることができるから、「私は食べます、と、飲みます」とか「これはかわいい、と、おいしい」のような謎日本語が登場するのを防ぐためだ。
まあ、どんだけ言ってても、みんなやるんだけど・・・
さて、授業後に一人の学生がやってきて、
「『名詞と名詞』で、どうやって『と』なのか『で』なのか使い分けるんですか」
と聞かれた。
そりゃ、そうだ!
そのときには、「主語のかたまり、目的語のかたまりのときは、『と』です」と答えたけど、いまいち分かりにくい。
なんかいい説明ないかなあと考えていた。
「-て/で」は、「かつ」「その上」ということが言いたいのだ!
私が教えているのが、工学系大学なので、数式で表したらいいんじゃん!と思ったけど、私の数学力が無理だったw
ていうか、「私は日本人で、教師だ」は、「私は日本人である。その上教師でもある。」だけど、「私と母は日本人だ」も、「私は日本人である。その上、母も日本人だ。」ということも言えてしまうじゃないか!
ドイツ語的に「da zu」「und noch」とか「ausserdem」とか言い換えられるかなと長女に相談すると、
「そんな風に言わないし。変だよ。」
と言われる。
いや、そう言わないのはもちろん分かってるけどさ・・・
「だから、『と』はAufzählungだって言ったじゃん。」
そうか!
前に「おいしいとやすい」の謎日本語が出たときに、長女が「と」はAufzählungだって言えばいいよと教えてくれて、実際そういってるけど、ここでまた同じ事を繰り返せばよかっただけだ!
なんか「-て/で」についてばかり考えていたけど!!
Aufzählungは、動詞aufzählenの名詞化で、「数え上げる」ということ。
確かに、「今日何を食べましたか」の答えは、
「バナナと、りんごと、パンと・・・」
と指を折っていく。
でも、自己紹介のときなら、
「私は日本人で、学生で、〇才で、〇年生で・・・」
となり、指を折ることはない!
第1課の自己紹介でよくある間違いが
「私はドイツ人とトルコ人です。」
なんだけど、これは、「〇〇系〇〇人」という言い方を教えて回避する。
もちろん、本当に言いたいのは二重国籍だってことだから、実は「と」の範疇なんだけど、それをいうなら、
「私はドイツとトルコの国籍を持っています」
と言わないとならない。
ただ、ハーフの場合、
「私はドイツ人と日本人です。」
は、「半分ドイツ人で、半分日本人です」と言わないとならない。
ここも厳密にいえば、「私にはドイツ人と日本人の血が流れている」ということで、「と」の範疇かもしれないけどね。
もし複数の職業を持っている場合はどうか。
お仕事は何ですか?
「パイロットで、Youtuberです。」
「パイロットとYoutuberをしています。」
「パイロット系Youtuberです。」?!
確かに「と」というときは、数え上げている印象になる。
よし、これで次回の説明はもっとうまくできる!
間接法(ドイツ語で日本語を教えるなど)の授業のいいところはここだと思う。
複数の母語話者が存在するクラスで直接法(日本語で日本語を教えるなど)しか使えない場合もあるかもしれないけど、文法的なニュアンスはやはり母語で理解する方が早い。
日本の英語教育は大分日本人の先生によるグラマーと、ネイティブの先生による会話とで、役割分担を進めているようだけど、これが一番正しいんじゃないかと思う。
まあ、ネイティブの先生が日本語でも説明できたらもっといいのかもね。
私が今まさに、その「日本語ネイティブ」がドイツ語で説明もしている状態だけど、私のドイツ語が拙いときもあるので、みんなががんばって理解しようとしてくれる。
下手にドイツ人の先生がゴリゴリやるくらいなら、そっちのがいいのかも。
(日本人の英語の先生の英語力ってどれくらい?という話)
そういう意味では、長女のように二言語ネイティブというのが一番いいのかもしれないけどね!