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便利への警鐘~不便益の勧め

次女が今学習している光村図書中1国語「不便の価値を見つめ直す」。
これ、私が中学国語でいっちばん好きな単元!!
5年くらい前だったか、中学国語を教えていたときには、不便益研究会のようなホームページがあって、投稿もしていたくらい!

どんな話かというと、「便利って本当にいいことなの?」というテーゼ。
便利にも悪い面があったり、不便にもいい面があったりするんじゃないの?
という視点で、「不便のいい面」を「不便益」を名づけ、例を挙げつつ展開している。

今朝「知らないことをググるのは遅い。今やAIの時代」という記事を読んでため息をついた。

生成AIを使ったサイトなら検索したこともダイジェストで教えてくれるから、ページを全部読む必要はないという趣旨だった。
もちろん、一秒一秒を争うような仕事をしていたら、要点だけ知ればいいことも多いだろう。
でも、グーグル検索だって画期的で便利なのに、そのページを探して読むのが面倒だと~?!

そんなに要点だけでいいなら、小説という小説は売れなくなってしまう。
コナン第〇〇話 「コナンくんたちが海で殺人事件に遭遇。犯人はA、理由は怨恨、凶器は船にあったロープ、トリックは・・・」ってダイジェストでいいのか?!
いや、もちろん筆者もそこまでは言っていないけど、その結論に至るまでの過程というものだって大事じゃないのか?
その言葉の選び方で、ニュアンスを伝えたり、行間を読ませたりするんじゃないか!
こういう発想は理系なんだよ! (薬学部の教授だそうです)
でも、文系は結果主義じゃないんだ!!w

そもそもこの単元に出会う前から私は「便利」が好きじゃなかった。
便利なものは大抵体や環境に悪い。
いや、私が別に健康オタクの自然崇拝主義者というわけではない。
でも、生き物の直感として、便利を倦厭する気持ちがあるのだ。

ましてドイツに住んでいると、当初は日本の便利さが初めは懐かしく恋しかったが、段々「本当にそれは必要なの?」と疑問に変化していく。
例えば、24時間店を開けておいて、電気代は? 従業員の健康は? と。

交通手段もドアツードアが可能な車やタクシーより、駅や停留所まで歩かないといけないバスや電車の方が健康的、経済的。
でも、ずっと徒歩や自転車のがもっと健康的、経済的だ。

私の旅行スタイルもこれ。
なるべく時間をかけて移動するのが一番好き。
ぴゅーって言っちゃうと、見逃す景色があると思う。
私にとって理想の旅行は「観光地」を観光客とともに見るものじゃなく、なるべく現地目線で、現地の暮らしを体験することだからだ。
(ハロン湾のクルーズの口コミで、観光客ばっかり! 〇〇人ばっかり!というのを読んで、気がめげているところ。
それなら正直行きたくない・・・トップシーズンでないことに期待・・・)

インスタント食品の類も外食も、まあ不健康の代名詞と言えるだろう。
チンするだけ、お湯を入れるだけというのは便利だけど、そのために使われている化学物質もあるし、新鮮なものを調理していたら得られている栄養素も不足することになるだろう。
料理は食べることが目的でもあるけど、作る過程も面白い。

この単元はそういう「便利ってさあ・・・」というもやもやした気持ちに名前をつけてくれたのだ。
便利が悪い、むしろ不便にいい点があるという「不便益」である。
ちなみにこの「不便益」の産みの親の川上浩司氏も理系の教授だ。

例えば、現代人の暮らしに欠かせないIT技術。
すぐに検索できるのは便利だけど、ちゃちゃっと調べていたことは、ちゃちゃっと忘れるもんじゃないか。
カーナビを日常的に使う人が、道を全然覚えないと言っていた。
私はカーナビが嫌いなので、道はよく覚えている。
ほら、脳の記憶力キープにも役立つ。

写真も旅行で何百枚と取るようになったけど、全部見直す・・・?
24枚撮りのフィルムを大切に大切に撮って、現像に出してからも待ち遠しくという時代の方が、何度も何度も見直したような気がする。
今度、旅行で1日5枚しか撮っちゃいけないルールとかやってみようかなw


世界的に見ても、日本やアジアは「便利」に重きを置きがちに見える。
アメリカはよく分からないけど、ヨーロッパはあるがままの自然を受け入れるのに長けていて、不便を甘受している気がする。

私は将来アジアの辺鄙なところに住みたいなあ。
アジアの都市部はもう「ミニ東京」みたいでつまらない。
どこに行っても同じチェーン店のオンパレード。
それより店もなくって、移動販売車が週に1,2回来てくれるみたいなところに住みたい!
きっと買い物が楽しくなる。
あれこれ吟味したり、今度これ持ってきてよと会話したり、これしかないからこれを買おうと、新しく開拓することになるだろう。
(仕事するなら、ネットはほしいんだけど・・・w)

そういう不便との引き換えに、人がいない静寂さを得て、かと思うと自然の出す騒音に驚き、ピクチャーウィンドウの向こうに、日々表情を変える海や山を見たい。
そして毎日の不便益を楽しみたいと思う。


本文はWEB上で見つからなかったので、筆者ご本人のエッセイを。

それから音読サイトをご紹介。



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