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世界の日本語教員の給与とビッグマック

先日、アメリカで日本語教育関連の仕事をされている方が、「日本やアジアの日本語学校の待遇はとても悪い! しかも、学習者は別に日本が好きなわけじゃないから」と話されていた。

待遇が悪いのはなんとなくあちこちで読んでいたけど、日本語を勉強している人が日本が好きなわけじゃない?!というのに、とても驚いた。
まあ、確かに円安になって、日本じゃない国に行こうとしている人が多いというのも読んだけど、お金のためとはいえ、好きじゃない国に住むというのが私の想像の外だった。
まあ、それは両親や夫のおかげで、私がお金で苦労したことがないからなのだろう。

日本語教員養成課程の授業を受けていても、なんでこんなに工夫するんだろう、なんでこんなに手取り足取りなんだろう、と思うことが多い。
いや、もちろん教員は色々と努力したらいいと思うけど、学習者は勉強したくてしてるんじゃないの?! そこまで面倒みないとダメなの????と思うのだ。
小学生、中学生を相手にしているのなら、まあそこまで面倒みないといけないときもあるだろうけど、多くの日本語学校は大人対象なんじゃないのか。

もちろん、テストで縛って勉強させるのは私も好きじゃない。
でも、ドイツの学生は結構テストも嫌いじゃない!
頑張った結果が目に見えるのがうれしいんだと思う。
でも、それは頑張ること前提。
うちの大学の学生はみんな好きで日本語を勉強している。
全く義務じゃない!
(工科大学なので、専門は理系ばかり)

スピーキングの授業で、「型ばかり教えると、教室外で話せなくなるので、注意」というようなのがあったけど、うちの学生は、型を教えているのに、どんどんはみ出して(?)、好きなことを話そうとする。
伝えようとする。
コミュニケーション自体を教えなくていいので、本当に手取り足取りする必要はない。

プライベートで教えている生徒さんたちも、趣味以外の何ものでもない。
例えば仕事で日本に行く予定があるとか、そういう理由も全くない!
まあ、希望して留学したいと言っている子は何人かいるけど。
それももちろんお金に余裕があるからできることだ。

冒頭に戻って、その方いわく「欧米の生徒さんたちは、日本語は趣味で勉強している上に、お金に余裕があるからやりやすい」と。
それはその通り。
私もおかげで楽しく、やりがいをもって、一人でも十分食べていけるだけの収入を得られている。

ただ、ドイツも物価も上がってきたし、その割に賃金のベースアップは全然。
例えば私が来たころ、ビールなんてレストランでも2ユーロ台だったのに、今は5ユーロと倍になっているけど、給与は絶対倍になってない!

そこで、世界中の日本語教員の給与を比較してみようと思う。
本当にアジアの方が収入が低いの?
物価指数で使うのは、お馴染みマクドナルドのビッグマックだ!
ビッグマック指数2024年はこちらのサイトから。
全部米ドルに換算されている。

給与の参考にしたサイトはこちら。
https://日本語教師.dragon10.info/matome_kuchikomi/oversea_income.html
但し、中には古いデータもあるので、今は変っている可能性もある。

さて、私の住むヘッセン州の大学非常勤講師はどんな科目でも一律1コマ(45分)32ユーロ。
(今年度から2ユーロあがった!)
そして、ビッグマックは5.87ドルだけど、EUROZONEという表記で曖昧なので、調べました。5.89ユーロです。
つまり、1時間働くと(42.6ユーロ)、ビッグマックが7.2個買えます!

こんな風にして計算をしていきます。
比べるために基本的に語学学校でなく、大学にしておきます。
(ドイツも語学学校はもっと安い。20ユーロらしい)
でも、大学の古い情報しかない場合は、語学学校も書きます。
月給で出ているので、1か月を4週として授業時間数で割ります。

★日本語教員がたくさんビッグマックを食べられる国ランキング~!

イギリス・地方都市 14.76個(65ポンド/時間 2022年)非常勤/週3時間
韓国・釜山 11.9個(67500ウォン/時間 2021年) 
 常勤フルタイム/週40時間
中国 10.7個(270元/時間 2022年) 専任/週12時間
ドイツ・ヘッセン州 7.2個(32ユーロ/時間 2024年)非常勤/週6時間
インド・北部 5.64個(1222ルピー/時間 2019年) 非常勤/週4.5時間
オーストラリア・ニューサウスウェールズ州 5.6個
 
(41豪ドル/時間 2020年) 専任/週3時間
中国・広州 4.9個(125元/時間 2015年)非常勤/週18時間
中国・西南地方 3.7個(95元/時間 2016年)非常勤/週12時間
台湾 3個(237元/時間 2022年)※日本語学校専任/週40時間
ベトナム・ハノイ 2.7個(24万3千ドン/時間 2019年) 専任/週40時間
日本 2.7個(1312円/時間 2016年)常勤フルタイム/週40時間
アメリカ・中西部 2.4個(13.8米ドル/時間 2020年) 非常勤/週18時間
タイ・コンケン 1.6個(221バーツ/時間 2021年)専任/週40時間
インドネシア・ジャカルタ 1.4個(562ルピア/時間 2019年)
 専任/週40時間
フィリピン・セブ 1.1個(187ペソ/時間 2020年)
 ※日本語学校専任/週40時間

※不明 マックはないの? 出てこない・・・
モンゴル・ウランバートル ?個(35,937トゥグルグ/時間=10USドル) 
 専任/40時間 
カンボジア ?個(3.57USドル/時間 2018年) 
 ※日本語学校常勤/週35時間

これだけを見ると、必ずしもアジアが安い、欧米が高いということはないように見える。
ただ、元のサイトを見ていただくとよくわかるけど、大学は日本語学校の倍ぐらいもらえているところもあるので、場合によっては欧米の日本語学校より「アジアの大学」ということはあるかもしれない。

但し、通常大学で専任講師をしようと思えば、最低でも修士号が必要だ。
だから、学歴が高い方が給与が高いという見方もある。
私が学士しかなくても大学で教えられているのは、非常勤であることと、学生たちは日本語が専門じゃないからだろう。
日本語学科などでは到底チャンスはない。

さらに当たり前だけど、普通は専任の方が非常勤より給与がいい。
それから非常勤だとコマ数が少ないので、それだけで生活するのは難しいというのは当然だ。
ただ、上記のフィリピンのように1時間の時給とビッグマックの値段が同じくらいなのに、週に40時間も拘束されるのは、私ならいやだ。
それなら、非常勤でちょこっと定収入を確保した上で、それこそ欧米とかとオンラインで授業をして、高い時給でした方がいい。

また、欧米の場合は、ほぼ現地語で授業をしていると思う。
アジアの日本語学校の場合は、ひょっとすると直接法(日本語オンリー)で授業している先生もいるのかも。
そうであれば、学歴が高い方が給料が高いと同じ法則で、言語スキルがある方が給与が高いのは止むを得ない?

それから拘束時間が40時間だけど、そのうち何時間授業をしているのか分からない。
私は大学での授業は週6時間だけど、準備に週2~3時間は準備に使っている。
多分、拘束時間40時間の人は、その中で授業準備もしているだろう。
まあ、もちろん要らん会議に出ないとならないとか、学生指導とか余分な仕事もあるのかもしれないけど。
だから、このやり方では厳密には比べられない。

最後に。
ビッグマック指数を選んでおいてなんだけど、タイなどでは、ビッグマックやコーヒーは高い。
でも、50バーツでご飯が食べられるので、ビッグマックで比べず、1食食べられるかという換算である方がいいとは思う。
例えばタイなら1時間働けば4食分にはなる。
(ファーストフードレベルだけど)
一方、日本は1300円ちょっと。
ファーストフードでも3食がいいところか。
生活していくなら、実はタイの方がいいのかもしれない。




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