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安倍の「3188日」と「2822日」

安倍内閣が今日、総辞職した。2006~07年の第1次内閣を含む安倍の通算首相在任日数は3188日、12年12月の第2次内閣発足以降の連続在任日数は2822日となり、いずれも歴代最長で幕を閉じることになった。

   私はtwitterは勿論、このnoteでも安倍批判をして来た訳で、その功罪、いや、功などそれこそ宮台真司が「加速主義」の立場からどうしようもないこの国を一気に滅ぼそうとうしたことを評価するような点以外にはないので、それについては改めて書く必要もない。(お暇な方は今まで書いた記事を読んで頂ければ幸いだが…)

 で、今回は安倍の通算首相在任記録「3188日」と第二次政権の連続記録「2822日」、この2つについて考えることで安倍政権を私なりに総括してみたい。

  3188日-2822日=366日

   つまり、安倍政権というのはもし第二次安倍政権がなければたった1年で終わった、多くの失敗に終わった短命な政権の一つに過ぎなかったということになるのだ。ところが安倍が首相として何をしたかということになると、少しその印象が変わってくるのだ。

第一次安倍政権

   これは安倍が前の第一次安倍政権で成立させた主な法案の一覧なのだが、わずか1年の間に「教育基本法」の改正(勿論、正しくは改悪)による教育改革、改憲の為の「国民投票法」、防衛省の設立、そして公務員改革など、安倍は自らがやりたかった事を次々に実現している。

 とくに上の記事にもあるように、安倍による「教育基本法」の改悪、教育改革は今や日本の教育を破滅寸前に追い込むほどのものであり、それを安倍は第一次安倍政権でなし遂げたのだ。

 ただ、その為に安倍は前任者の小泉が残してくれた衆議院の2/3を超える数の力で強行採決や再可決を連発。その強引なやり方がマスコミや世論などの反発を買い、参院選で敗北。とくに公務員改革で官僚にソッポを向かれた結果、辞任へと追い込まれることになった訳なのだが…。

(因みに、当時、安倍が退陣の理由にあげたのは、民主党が党首討論にさえ応じてくれないという政権運営の行き詰まり。辞任後に入院した時に発表された病名も「機能性胃腸症」。例の「潰瘍性大腸炎」はその遥か後に安倍本人が告白しただけ)

  話を戻せば、「366日」で辞任には追い込まれたものの、第一次安倍政権で「美しい国づくり」と「戦後レジームからの脱却」を掲げた安倍は自らのやりたかったことをかなりしているのだ。

 では、遥かに長い期間、「2822日」にもなった第二次、第三次安倍政権はどうだったのだろうか?

 勿論、集団的自衛権を容認する「安保法制」や「特定秘密保護法」、「共謀罪」など数々の悪法を成立させたのは事実なのだが、それを実際に使用というか悪用するまでは行かなかったのだ。何よりも前回は成立させた「国民投票法」も改正出来なかったように、これだけの長い間、首相の座にあって、国政選挙も6連勝と圧倒的な数の力も持ちながら、安倍の悲願であった筈の「改憲」に手さえ届かなかったのだ。

   これはおかしくないだろうか。

 そう、「366日」で終わった第一次安倍政権を経て、「2822日」にも続いた第二次、第三次安倍政権で安倍が目指したのは悲願の「改憲」でもなく、「戦後レジームからの脱却」でもなく、ただただ首相の座に居続け続けること、退陣しないことだっただ。

 こう考えると安倍が「改憲」に突っ走らなかったことも、「アベノミクス」による円安株高で景気回復を装ったことも、マスコミや官僚を饗応と恫喝で支配して一切批判をさせなかったことも、全て納得出来る筈。さらに後半には森友、加計、桜など本来であれば政権が退陣に追い込まれる筈の問題が噴出。結果、政権退陣を防ぐ為だけに公文書の隠蔽や改竄、国会を開かない、国会からの逃亡など、常識では考えられないありとあらゆる手段を安倍は講じることになったのだ。

 つまり、安倍は政権を延命させることしか考えず、それだけに最大限の力を注ぎ、他には何もしなかったのだ。勿論、その結果、経産省の今井尚哉などの官僚がやりたい放題をしたり、新型コロナのように何もしないせいで悲惨な結果になったり、この国は大きく壊れてしまった訳だが、それも安倍が何かしたというよりも安倍が何もしなかったことの方が実は大きいのではないだろうか。

 「2822日」にも続きながら何もしなかった、何も出来なかった、そして政権を続けること以外は何もしようとしなかったのが今回の安倍政権。そう考えれば通算首相在任日数の記録に続いて、連続在任日数でも大伯父の佐藤栄作を抜いて歴代最長を記録した直後に安倍が政権をぶん投げたのは体調や病気も無関係に必然というしかないだろう。

 ただ、忘れてはならないのは安倍が「2822日」も何もしなかったせいで、この国は完全と言っていいほどに破壊されたし、安倍自身は使わなかったものの「安保法制」や「特定秘密保護法」、「共謀罪」など数々の悪法がまだ残されている。これからの首相がそれを悪用しないという保証はないし、何よりもこの壊れた国を立て直すのは不可能に近いと言わざるを得ない。

 事実、安倍の後を継ぐのは、マスコミや官僚を支配して政権の延命だけを担ってきた菅。菅の頭の中にも自らが首相の座に居続けること、政権の延命しかないのは明らかだし、また何もしない、何も出来ない空っぽの政権が、また延々と続く可能性は捨てきれない。勿論、安倍の残した悪法を使って何かをされても、それもまた地獄でしかないのだが…。

          

                       ※Phot by 首相官邸HP

 

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