「新紙幣」から見えてくること…
突然の発表だったが、紙幣のデザインが新しくなるらしい。この発表について、あれこれと考えることがあったので、いつも以上にまとまりのない一文になりそうだが、書いてみたい。
先ず、気になったのは麻生がいう「明治以降の文化人」という紙幣のモデルについての原則…
渋沢栄一は誰でも判るように、実業家であって、文化人ではない(苦笑)。
それ以上に「日本資本主義の父」と言われるような人物を日本の最高額紙幣である1万円札に描くこと自体があまりにも拝金主義的だし、下品と言わざるを得ないだろう。
そして何より気になったのは、「明治以降」という時代の限定。当たり前だが、日本にはそれ以前の時代、江戸時代も安土桃山時代も室町時代も…延々とあった訳だし、そちらの方が長い。
ツイートでも呟いたのだが、例えば江戸時代だけでも、伊能忠敬とか、関孝和とか、松尾芭蕉とか素晴らしい功績、それも世界に誇れるような業績を残した偉人がいるし、そういった人たちの方が日本の紙幣の顔には相応しいのではないだろうが。
それを「明治以降」と限定するのは、明らかにおかいしいし、「明治以降」ということは、言い換えれば明治維新で出来た「大日本帝国以降」ということ。つまり、それまでの国は日本ではないということにもなるし、あの敗戦で滅んで、憲法も変えて日本国という別の国になった事実を否定して、また大日本帝国に戻ろうということしか意味しない。
実際、この記事にもあるように、渋沢栄一など新しい紙幣の顔を選んだのは安倍首相その人だったようだし、これも松下村塾など明治の遺構の世界遺産化と同じ、明治回帰・大日本帝国回帰の一連の流れの延長線上にあると考えていいだろう。
また、「新元号」に続いて、新しい紙幣の顔まで安倍首相自身が決めたとなれば、それはもう権力の私物化、濫用というしかないし、今のこの国を独裁国家と呼ばない方がおかしいということにもなる。
さらに、新しい紙幣の顔に安倍首相の「本命」という渋沢栄一が選ばれたことにはお隣りの韓国から大きな反発が起きている。
自分の国を植民地化することに尽力した主要人物で、日韓併合直前に紙幣の顔にもなった人物を再度、紙幣の顔にされるのは韓国や北朝鮮にとって侮辱的なのは間違いない。前にも伊藤博文が日本の紙幣の顔であったことでは反発を招いていたが、今回は徴用工問題やレーザー照射問題など、以前以上に日韓関係が悪化している最中であり、それこそ喧嘩を売られたように感じるのは当然だろう。
いや、“韓国が喧嘩を売られたように感じている”のではなく、安倍が本当に韓国に喧嘩を売っているのだ。
安倍が決めたとはいえ、周りにはアドバイスする人間も沢山いるし、渋沢栄一を新紙幣の顔にすれば韓国が反発することのは十二分に分かっていた筈。だからこそ渋沢栄一にしたのだろう。
そう、いま安倍の頭の中にあるのは、この夏の参院選、あわよくば解散をして衆院選もだが、選挙で勝つことしかない。その為に、新元号や新紙幣、新天皇即位と何でも利用している訳だが、その一つが、韓国からの反発なのだ。韓国が反発すればするほど、国内では逆にそういった韓国ヘイトやナショナリズムが高まるし、それは安倍にとって支持率アップ、政権浮揚策に繋がるのは間違いない。
この辺りのことは、この「note」の記事にも何度か書いたが、こういう安倍のやり方はあまりにも危ういというしかないのだが…。
※Photo by 財務省