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死にたいけど死ねない僕らと「葬送のフリーレン」

 「葬送のフリーレン」のアニメを見ました。ストーリーもさることながら、とにかくキャラ造形が現代を生きる私達にぴったりで素晴らしい。千年以上生きているロリっぽいエルフってリアリティも何もないだろ、と言われればそれまでですが、実は彼女こそが今の時代を生きている人の生写しなのです。

 なんとなあく日々を過ごしてます。夢や目標?ぼちぼち達成したんで食えれば良いですよ。暑苦しい説教ってだるいっすね。まあやることといったら、アニメとか漫画とかみることっすかね。あと使えない魔法も探してます。くだらない趣味ですよ、みたいな主人公の低体温感。

 完全にこれ自分のメンタリティだ、って思うんです。海賊王になりたいとも思わないが、デンジみたいに食うのすら困ってるわけでもない。ただ、灰色のまあまあの日常を過ごしていて、娯楽に救いを見出してる。どっかに人間の暖かさを求めてる。これ、やっぱ俺だろ。そしてお前だろ。

 そんな無気力無感動フリーレンは何気ない魔法を収集する旅の過程で仲間と出会い、その影響で過去に起きた出来事や思い出を回想するんです。彼らの言葉や感情をもう一度解釈し直し、人間とはなにか、人間にとって大切なものとは何かを探していくのです。

 これがなんとまあ社会(魔王よりも酷い)に翻弄され、心が麻痺していった俺たちが、アニメの中に人間の感情や感動を求めるのと同じなわけですね!だから共感できる。いつしか自分が失っていたものをフリーレンが発見してくれた気がして涙が出てくる。

 葬送、誰かの死を受け入れて送り出すこと。これはただ葬式をやって墓に埋めればおっけい!という話ではありません。その人を思い返し、彼の考え方や言葉をもう一度思い起こしてみる。そうして故人の存在によって影響を受け、自分も変わっていく。その中に(部分的にも)勇者の意思は受け継がれているのであって、彼の死は決して無駄じゃないだ。いやむしろ、影響を与えあって変化していくこと自体が生きていくことであり、その意味で生者も死者も架空の存在も存在しているんだ!そういうメッセージを受け取りました。

 そうそう!こういうアニメを待っていたんだよって感じです。人生において大切なのは、敵をぶっ殺すことではなく、ちょっとした暖かな感情に触れたり、それを思い返したりして日々の中にぬくもりを見出していくことなのかもしれません。それはフリーレンにとっては魔法探しの旅であり、現代人にとってはアニメ探しのネットサーフィンなんだろうなあ。

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