【名前の由来】を親に訊く宿題はつらかった…
「自分の名前の由来を親に聞いてくる」
私にとって、最も辛い宿題だった。
漢字名の子がほとんどだった昭和時代、
親が子にどんな望みを託したかは一目でわかる。
結美、真理花、翔、賢太
その意味は、
生まれたばかりの小さくか弱い自分に
夢や希望を纏わせてもらったようなもの。
まさしく親からの最初のプレゼントだ。
しかし私の名前は「さとみ」
意味はどうやって探せばいいのだろう?
母に尋ねてみると
案の定、「うーーーん」と困っていた。
渋々出してきた回答がこれだ。
「人気女優の、丘さとみさんからとった」
誰ですか、それ。
「♬春が来た、春が来た、どこに来た?
山に来た、里に来た、野にも来た〜」の「さと」。
もっと素敵な歌はなかったのか???
そもそも私は春生まれでもない。
要するに意味などなかったんだなぁ…
託した夢や希望もなかったんだなぁ…
姉は「たかみ」でおじいちゃんの「隆」からとったと説明がつく。二人目は男の子が欲しかった両親にとって望んでいなかった女の子の私の誕生は、喜びよりも失意だったんだろうな。深い意味もなく「たかみ・さとみ」とコンビ名のように韻を踏んだだけ。きっとそれが事実。
宿題発表の時間。
「優しく美しい子に」
「一番誠実であってほしい」・・・
自分に背負わせてもらった崇高な使命を誇らしく読み上げるみんなの中で、小学4年の私には作り話もこじつけも思い浮かばず、母から言われたままを発表するしかなかった。
教室の空気が憐れみで沈み、
恥ずかしく情けなく、親を恨んだ。
親から夢を託されなかった自分を
「無意味な存在」に思えた。
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あの授業は本当に恥ずかしかったですが、今では、ひらがなもかわいいし古風な響きも悪くないし、愛着もわいてます。
今でも学校で「名前の由来調べ」はあるのかな?
いつだったか「悪魔」と名付けた親もいましたね。
今はキラキラと意味があり余る子も、
私のようなひらがなの子も多いだろう。
かく言う私の娘の名前もひらがなですが
この宿題対策のために
「漢字で表記するならコレ」と伝えています。