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【読書レビュー】一穂ミチ「ツミデミック」

こんばんは。PisMaです。

今回は第171回直木賞受賞作「ツミデミック」を読んでみました。
あらすじなどのネタバレが含まれますので、読む予定のある方・ネタバレNGの方はご注意ください。

本書は、コロナ禍を背景に起きる「罪」に焦点を当てた短編集です。ミステリのようでありながら、現代を生きる人々の心情が起こすドラマを瑞々しく描きます。

新型コロナウイルス、ウクライナ侵攻、反ワクチン理論、料理宅配サービス。過去数年で一気に浸透した事象がありましたね。
様々な事象が齎した影響で足を踏み外す物語から、逆に救われ踏みとどまる物語も収録されています。全ての話題に副題となるようなキーワードがあって、その伏線回収も鮮やかです。
個人的に、あまりにも伏線の張り方に余念がないので「気づいたらもう最後のページだった!」と驚くときもありました。最後の行まで飽きることなく読めるところがとても魅力的です。
さすが直木賞受賞作。

特に印象深い内容の章だったのは「ロマンス⭐︎」。
出来たら実際に読んでいただきたいところですが、あえて書くならば「課金したことがある人」「イケメンを癒しに感じる人」にちょっと痛い内容かもしれません。恥ずかしながら私はどちらにも当てはまるので、主人公の女性の末路に鳥肌が立ちました。
自分は運良くそうならずとも、仲の良い友人が気づいたらそうなっているかもしれない。隣人がそうなっているかもしれない。そんな肉薄したリアリティに寒気を感じました。

でも、何度か読む手が止まるタイミングがありました。あまりにも話題が「近い」のです。

「ツミデミック」はほんの一年前、下手したら一昨日ニュースで見た事件の全貌のような…生々しく切実な人生が描かれます。私は現実逃避のために本を読んでいるときもあるので、血肉の通った最近の地獄を再確認させられる内容に胸やけする感覚を覚えました。
読もうと思っている方は現実ときっちり切り分けるか、そんな生々しさをあえて意識しつつ読むと楽しめるかと思います。

直木賞受賞作「ツミデミック」。
パンデミックを生き抜くか呑まれるか、登場人物たちの結末をお確かめください。

お相手は黄緑の魔女PisMaでした。
ツミデミックで、お好きな章があったら教えてくださいね。

おやすみなさい。

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