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重鎮
いつの世も“先人”とは貴重な存在だと思う。
自分より長く生きている人からは、大なり小なり何かしらの教えを得ることができる。
師は答えを教えてはくれない。
ヒントを、道しるべを示して下さるのだ。
先日、新地時代のママとお客様がお声をかけて下さった。
『大阪に戻っているのなら、顔を見たい』
上がってから5年経つ…そのお気持ちがとてつもなく嬉しい。
当時 ママ67歳、A氏75歳とB氏73歳…
実はお話するのも恐れ多いくらいの“各業界の重鎮”なのである。
勤めていた頃、A氏のブランデーをご用意するのは新人の私の担当となった。
微量のジンが入ったブランデーグラスを回しマッチで火を付ける。
温まるまで暫く待つが、長すぎるとグラスが割れてしまう。これがまた怖い…
タイミングを見計らってジンを捨て適量のブランデーを注ぐのだが、これが難関なのだ。
グラスを横に転がして表面張力でギリギリ零れない量を注がなければならない。
少しでも零れたり足りない時は『はい、どうぞ。』と一言。
息を止めて一気に飲み干す。
それを“それなり”の方々に囲まれ披露しなくてはならない、緊張で何度汗を拭ったことか。
(何故、私なのだろう…)毎回そう思いながら挑んだのだった。
それは“一番美味しい飲み方”ではなく“小娘をからかう余興の一つ”なのだ。
と同時に、それは私にとってステータスであり報酬でもある。
そうやって遊んでいただきながら、当時の私は要所要所で多くの事を教わった。
さて。思い出話が佳境に入った頃、A氏が徐に一枚の写真を取り出した。
『これはな、葬式に使う写真や。』
眼力の強い洋顔、右手に持った煙草からは細く白いラインが伸びる。
ボルサリーノでも乗っければ、何処ぞのボスの出で立ちだった。
笑う私を、鋭い眼光が照らす。
『最期やからな、おふざけや。千里会館で300人程度かな…花も香典も要らん。
知ってるか?男はな、心肺停止しても精子だけは70時間も生きるんやで。ほんま未練たらしい生き物やろ?やからな…』
死に際は潔くサッパリと迎える!そう言いたいのだろう。
そんなA氏は咽頭ガン・胃ガン・大腸ガンを克服している。
そして最後にもう1つ教えて下さった。
『イットウ・ニヒ・サンショウ・シギ・ゴサイって言葉を知ってるか?』と。
一盗…人の妻
二婢…女中、お手伝いさん
三妾…めかけ、愛人
四妓…娼婦
五妻…嫁さん
“男が心躍る、女遊びの順番”だそうだ。
「やっぱり…A先生、大丈夫。その写真とうぶんの間は使いませんよ。」
A氏の悪戯な笑顔を見て、心底安心したのだった。
A氏はいつ何時も“遊び”を忘れない。
どんなに過酷な渦の中でも遊び=余裕を見つける。
遊びの中で利益を生み、人を育てる。
どんな屈強さを持っても“死”こればかりは逆らえない。
流れであり、順番なのだ。
人間は自由な様で、決して自由には生きられない。
じゃぁ、せめてMAKEしようじゃないか。
死を“迎える”のではなく“迎え撃つ”
そんな風に“らしく”生きたいものだ。
大きな趨向の中で、誰に出会うのか。
少なからず先人は、Make flowの巨匠なのだと思う。
37歳。
これから私に何が出来るのだろうか。
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