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72。
サラリーマン時代、あたしは会社初の産休取得者となった。
「女子は寿」
が幸せの合言葉だった時代の話だ。
因みに寿って"寿退社"の意味。「結婚したら退職して家庭に入ることが女の幸せ。会社で良きパートナーを見つけて主婦になるのが女性の正しい生き方なんだよお嬢さん」が歴史ある弊社(ってもう辞めてるけど)の、常識だと刷り込まれていたむかしむかしの話じゃ。(ぼうや〜良い子だ寝んねしな〜の龍に乗ったあの赤チョッキ坊やが見える気がするでしょ。)
先陣をきって産んだはいいが…
総務部に嫌味を言われながら産休は取得。育休が無かったから預かって貰える場所を探すしかない。産後2ヶ月、乳の飲みっぷりがいい娘を見て(まだ出勤しないで母乳で育てたいなぁ)と異常に親心が芽生えて途方に暮れ、上司に相談した。休んでいいよ、という優しいお言葉を期待して。
その数日後に上司から架電。
「赤ん坊に72時間乳を飲ませなければ乳の味を忘れるらしいよ。頑張れ!」
当時の上司(男)の顔が、あゝ浮かんでは消えていく。
そこ頑張るとこじゃないよな
って令和七年なら思えるけれども、かれこれ四半世紀前の太古には「育休とるなら辞めてくれ」だったのだ。悪気は無いと…。#心に残る上司の言葉、ってお題を見てこれを思い出すくらいなんだから辛かったなら早々に退職すれば良かったのに、何故か27年間も同じ会社に居座るあたしってドMやないかい。
72時間か。
『ドキュメント72時間』っていうテレビ番組タイトルを思い出した。本当に72時間で断乳可能なのか、要ドキュメントだ。
だけどよく聞くんだよなぁ
72って数字。
いや、もうちょっと嬉しくて泣けるような心にのこる上司の言葉、思い出そ。たぶんあると思うんだ、長きに渡りお世話になったから。
Photo byタマサプリ。
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