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シングルマザーの方へ住まいを通じた支援を行う「LivEQuality HUB」さんへ取材しました。

こんにちは。西川コミュニケーションズ(NICO)SDGs広報チーム“つつつ”のきたサンです。

今回は『認定NPO法人LivEQuality HUB(リブクオリティ ハブ)』様へインタビューした様子をお届けします。

LivEQuality HUBさんとNICOのお付き合いは名古屋市東区の社会福祉協議会さんからのご紹介で昨年、始まりました。以降は、NICOが定期的に開催している「ニコっとこども食堂」の開催告知のチラシを置かせていただき、興味を持った入居者様にはイベントへご参加いただいています。他にはNICOからLivEQuality HUBさんへ余剰食材の寄贈を行ったり、関連イベントへの出店など継続的な支援や活動を行っています。

記事ではLivEQuality HUBさんの詳しい活動内容と団体を立ち上げた経緯、NICOが行っている「ニコっとこども食堂」に対する感想などをお送りします。


住まいを通じたシングルマザーの支援とは

LivEQuality HUB 代表の岡本さん。公認会計士としてPwCにて、企業再生アドバイザリー業務に従事された後、NPO法人ソーシャルベンチャー・パートナーズ東京の代表理事、認定NPO法人カタリバの常務理事兼事務局長を歴任。現在も、10以上のNPOや財団の理事を務められています。

つつつ:「認定NPO法人LivEQuality HUB」さんについて教えてください。
岡本さん:私が建設会社「千年建設」と共に代表を務めている認定NPO法人で、シングルマザーの女性に住まいの貸し出しをしています。特徴は「住まい」と「居住支援」を一気通貫して提供しているところにあります。「居住支援」とは貸し出し前から、入居後も寄り添いケアして伴走するということです。

つつつ:今はどれくらいの世帯の方が入居されているのでしょうか。
岡本さん:20世帯49人(12月4日現在)が入居されています。学校でいうと1クラス分以上の方々が住んでくださっています。

つつつ:現在、LivEQuality HUBさんとしてはどれだけ物件をお持ちで、どういった物件を選んでいるのでしょうか。
岡本さん:名古屋市内に96部屋あります。物件を選ぶ際には仕事に就くのに有利な都心部の立地を重視しています。また、物件の間取りとしては「母子家庭が住みやすいかどうか」「自分の会社の社員にも貸したいな、と思えるか」を基準にしています。具体的には、日当りが良かったり、バス・トイレ別であったりということですね。

つつつ:貸し出す物件はどのように取得されているのでしょうか。
岡本さん:物件は「株式会社LivEQuality大家さん」という別のグループ会社が取得しています。新築物件を建ててかつ、家賃を下げて運営するのはかなり厳しいので、築30年ぐらいの中古物件をマーケットから購入し、本業で修繕して貸し出す方法を取っています。築30年以上になってくると、これから大規模修繕が発生するタイミングなんですよね。個人の投資家さんや相続を受けた方などは今後、修繕費がかかるのであれば、今のうちに手放そうと思われる方も多いんです。本業が建設会社のため修繕は得意ですし、自分たちで修繕することで、コストを抑えることができます。

つつつ:家賃はどのように決めているのでしょうか。
岡本さん:綿密な財務計算に基づいて最低家賃を決め、柔軟な契約条件にしています。普通の大家さんであれば「いかに高く貸せるか」と考えると思うのですが、我々は財務が回る範囲で「どれくらいまでなら下げられるのか」ということにチャレンジしています。我々は不動産の素人なので、不動産屋さんの常識には囚われていません。財務を意識しながらも、どれだけ世の中にいいことをやっていけるかを考えています。

つつつ:資金の調達などはどのように行っているのでしょうか。
岡本さん:運営に関わる資金計画は綿密に行いながらも、NICOさんのように賛同してくれる企業などの寄付で運営しています。

つつつ:ありがとうございます。これらの取り組みを可能にしているのは、建設業が母体だからということなんですね。それでは続いて「千年建設」についてお聞きします。

建設業が母体だからできること

つつつ:「千年建設」と「LivEQuality HUB」、「LivEQuality大家さん」はどういった関係でしょうか。」
岡本さん:LivEQuality HUB は私が代表を務める千年建設が発起法人として立ち上げており、千年建設が取得した物件の伴走支援の部分を担っていました。しかし、活動を続けていくうちにLivEQuality HUBが少し大きくなりすぎたので、今では完全に建設会社からは切り離して運営しています。

さらに、2023年11月に「株式会社LivEQuality大家さん」を千年建設の子会社として設立しました。住まいを借りづらい困窮世帯のシングルマザーなどを対象に、住みやすい物件を提供する、「ソーシャル大家さん」事業を営む会社です。志高いインパクト投資家をはじめとするステークホルダーと一緒に物件を取得し、柔軟な契約条件でシングルマザーに提供できる仕組みになっています。

また、千年建設の中に不動産会社部門「ちとせ不動産」を作って管理業務を担っています。グループ会社全体でワンストップで活動しています。


つつつ:「千年建設」さんについても教えてください。
岡本さん:主なターゲットとしては、ここ東海エリアで多数ある製造業の工場の建設業務を請け負っている会社です。主に工場の修繕がメインで、大規模修繕が得意分野です。

つつつ:なぜ建設業である会社が住まいの支援をはじめたのでしょうか。
岡本さん:私は元々ソーシャル※の世界にいたのですが、千年建設の初代社長である父が2018年に逝去したことで会社を継ぐことになりました。継いだ後はこれまで父が築き上げた業務を行ってきました。

※NPOセクター等、社会課題解決を目的とした事業を行う「ソーシャルビジネス」と呼ばれる領域のこと。

その後、2019年に新型コロナウイルス感染症が流行。コロナ渦で住まいを失う人がたくさんいると知り、大きな課題だと感じました。それと同時に今のこの状況に対して自社の強み「建設」を活かして何か自分たちに出来ることはないかと考えたことがきっかけです。


「住居は人権」“ハウジングファースト”の考え方とは。

つつつ:修繕の部分では建設業とのシナジーがあると思いますが、不動産業とはまた少し業種が異なるように感じます。住居を貸し出しまで行おうと思われた理由を教えてください。
岡本さん:住まいは「尊厳」のベースで、自分自身が安心安全にいられるということを表していると考えています。欧米ですと“ハウジングファースト”=住まいは人権であると。我々はそこに非常に共感しています。
立ち上げの当時まだこのコンセプトはなかったのですが、LivEQuality HUBの名前には真ん中に「EQuality(公平性)」という言葉が隠れています。私たち誰しもにとって、住まいは非常に重要なものだと考えたことが大きかったと思います。

LivEQuality HUBさん公式サイトより引用

また、食料提供をしてくださっている「こども食堂」や「フードバンク」のような仕組みは増えてきている一方で、住まいを提供しているところは公営住宅ぐらいしかない、というのがもう一つの理由ですね。

つつつ:「公営住宅」では担えないのでしょうか?
岡本さん:住まいの取り組みをやっているので必ず公営住宅の話になるんですが、公営住宅はもう新たに入れないことが多いんです。特に都心の方は全然入れない。好条件でいい立地の物件に入った人は出ないので空きが出ず、出たとしても競争率がすごく高くなります。

シングルマザーに絞った理由とは

つつつ:ターゲットはシングルマザーの女性に絞っているとのことですが、女性に絞った理由についてお聞かせいただけますでしょうか?
岡本さん:正直に言うと相当、悩みました。最初は本当は困っている人、みなさんに物件を提供したいと思っていました。しかし、取り扱える物件数も限られていますし、取得には資金が必要になります。
そこで不動産会社さんにも色々と聞いてみたところ、「肌感覚ですが、男は決まるんだよね。」と言われるんですよ。大家さんの嗜好の話だと思うんですが、例えば同じ「無職」でも男性の方は決まりやすく、女性は本当に決まりづらいようです。

皆さんはあまり意識したことはないと思いますが、実は日本は「住所主義」で、住所がないと行政から支援を受けられないんです。そして、行政から支援を受けられないと、保育園に預けられない。そうなると、仕事も満足にできない。結果、仕事に就いていないシングルマザーに住まいを貸す大家さんがいない、という悪循環が生まれているんです。これはどこから解決するのべきか、というのは非常に難しい問題なのですが、我々は「住まい」なのではないかと思いました。

LivEQuality HUBさんプレゼンテーション資料より引用

あとは、厚労省の2019年のデータによるとシングルマザーは非常に苦しい生活を強いられており、「約9割の方が生活が苦しい」と言われています。日本は先進諸国の中で相対的貧困率が高く、特にこのひとり親に限った場合の子どもの貧困率は48.3%。つまり約半数の世帯が貧困のリスクにさらされています。我々にとって見逃せない数字だと思っています。

出典:厚生労働省ホームページ(https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/k-tyosa/k-tyosa19/dl/03.pdf)


相対的貧困率の定義としては、一人当たり127万円。子ども一人、お母さん一人の場合は年間250万円ぐらいで全てを賄って生活しているということになります。事業を行うにあたり、一番困難な状況にある方々に向き合おうと思ったことが大きかったです。

LivEQuality HUBさんプレゼンテーション資料より引用
(出所:厚生労働省 2019年 国民生活基礎調査を参考に作成)

また、シングルマザーの方には子どもがいらっしゃる、子どもは未来への希望かなと。お子さんがいるお母さんは本当に頑張る。そういった理由で「シングルマザー」にターゲットを絞りました。

住まいを提供するだけではない、伴走支援

つつつ:ここからは普段、居住支援を行っており、居住者さんとも綿密なコミュニケーションを取られている森さんを中心にお話をお伺いします。実際の物件へ入居するまでの流れについて教えてください。

伴走支援の他、団体のパンフレット制作なども幅広い業務を手がけられている森さん

森さん:シングルマザー向けのお部屋情報を取り扱っているポータルサイトに掲載しています。あとは連携している行政の方や、民間の支援団体などからのご紹介ですね。
そして問い合わせをいただいて実際に住まわれる段階になったら条件をお知らせするとともに、居住支援コーディネーターと必ず面談を行います。


つつつ:面談を行った上で入居に至らないケースもあるんでしょうか?
森さん:はい、ありますね。問い合わせをいただいてる方は住まいに困ってらっしゃることはもちろん多いのですが、LivEQuality HUBがご案内できる物件に住むことが一番の選択肢ではないこともあります。そもそも離婚そのものに迷われていらっしゃるなど、住む以前に課題があり、別の支援に繋げる必要な場合もあります。その点については事前に居住支援コーディネーターが丁寧に聞き取りをして、その方が今考えてらっしゃる課題と適切な連携の繋がる先というのを探しています。

岡本さん:我々が接している方々が必要としているのは必ずしも住まいの提供だけではないと思っています。とにかく話を聞いて欲しいという方もいます。そして、話をした結果、離婚を踏みとどまる人もいます。
住まいを探している方は、子どもの学区を変えたくない、名古屋市の東側は夫に会うリスクがあるから西側に行きたいなど多様な事情があります。ただ、その条件に合う物件を我々が各地に持っているわけではありません。だからこそ別の不動産会社さんを紹介したり、行政や社会福祉法人がやってる住まいサポートなどとコレクティブインパクト※を意識・連携して、柔軟にやってます。

※コレクティブインパクト…「特定の社会問題を解決するために、さまざまな分野に属するプロフェッショナルが強みを持ち寄って協働すること」

NICOのように他企業との連携も伴走に役立っている

つつつ:入居前に専門家を交えてお話をする機会があるのはとても心強いですね。一方、LivEQuality HUBさんでは入居後も困りごとなどの相談に乗っているそうですが、こうした「伴走」を大切だと考えて活動されている理由をお聞かせください。
森:孤独であったり、孤立しているということが、非常に状況を複雑にしていると感じます。やはり誰かが「あなた大丈夫だよ」と「いつでもここに来ていいんだよ」と伴走する存在が必要だなと思ったんです。

岡本さん:そうですね。あとは伴走支援を行うことで事態が悪化する前に我々が異変に気づけるというのは大きな事だと思います。実は伴走部分は最初は地域のNPOさんに任せようかと思っていたんですが、やってくださる方はなかなかいない。ただ、ここは絶対に必要だと思っていたので、これは自分たちでやるしかないなと思い、始めました。

森さん:先日NICOさんから頂いた食品も「伴走」に活用させていただきました。

NICOからLivEQuality HUBさんへ寄贈した食品。
お子さんに喜んでいただけるようジュースなどを選んでお渡ししました。

企業さんからの支援として金銭的な支援のほか、今回のNICOさんのように物資を支援していただいています。そして、物が届いたことをきっかけに、こちらから居住者さんへ「すごくいいものをいただいたんだけど、いらないですか?」「持ってっていいですか?」といった形でコミュニケーションをしています。

家庭訪問や面談は定期的に行っているのですが、やはり少し距離があります。お裾分けを渡すきっかけで、こちらに対する「壁」を少し下げて「ああ、こんなおいしいものを持ってきてくれたんですね」「これ好きです」という雑談から、お子さんやお母さんの生活スタイルをより詳細に知れるようになりました。

岡本さん:森さんをはじめ、優秀なプロフェッショナルが集まっていていいチームができているなと思います。今ではネットワークが広がってきていて、つなぐ先が増えてきています。我々が繋がれる側になることもあると思っていて、自分たちが「つなぐ専門家になろう」みたいな話もしているんです。

これは初めから決めていたのですが、地域のさまざまな企業や団体さん、行政の方々の強みを持ち寄って活動を広げたいなと思っています。LivEQuality HUBは住まいの提供と伴走支援をしますが、活動を通じて教育や食料など様々な不足を感じています。しかし、それら全てをLivEQuality HUBで賄うことはできません。自分たちで出来ることは全うしながらも、周囲の方々にお力をお借りしながら運営を行っています。

支援する側、される側を超えた関係づくり

つつつ:とても細やかな対応をされているんですね。これまでたくさんの方の生活に寄り添って来られたLivEQuality HUBさんの活動の中で具体的に喜ばれたエピソードはありますか?
森さん:外国籍のシングルマザーの方なんですが、区役所に行ったところ住所が他県にあるので支援ができませんといわれたそうです。最終的には区役所の方からご相談いただいて我々の方で受け入れることになりました。そして、無事に仕事も見つかり、子ども達も本当に元気になっていきました。

その後、その方がお礼のメッセージをくださったのですが、最後のメッセージとして「ひとり親になるということは、苦労の多い人生ではなく、強くなるための旅(Journey)です。」と書かれていて。最初にお会いした時から考えると想像できないくらい前向きになった姿を見せていただきました。

岡本さん:お母さんはお子さんのために頑張ろうと思うし、子どもたちも支援を通してどんどん元気になっていく。活動を通して、本当に自分たちが元気づけられる、エンパワーされると思っています。活動の際にメンバーには『「支援する側」「される側」を越えて行こう』とよく言っているんですが、一緒に成長していこうと思って活動に取り組んでいます。

NICOのこども食堂は“ハレ”の役割

つつつ:NICOのこども食堂活動は、3ヶ月に1度くらいの頻度で行われており、一般的なこども食堂として常設されているものとは違った形で運営しています。社内では「常設しないと意味がないのでは?」といった意見もあるのですが、こちらについてはどうお考えでしょうか。

岡本さん:非日常と日常を「ハレとケ」とよく言われますが、シングルマザーの方は日々の生活に追われてなかなかハレに触れるタイミングがなかったりしてます。そして、お子さんと二人だけだと世界はどんどん狭くなっていってしまうんです。そういう意味ではNICOさんのこども食堂の活動はハレの役割として大きな意味があると思います。

また、皆さんがイメージされる「常設のこども食堂」に取り組まれる法人や団体さんは、最近になって増えてきているので、そことはまた異なる役割があると思いますよ。

森さん:私も「ニコっとこども食堂」に参加させていただいたのですが、一緒に参加されたお母さんと小学生の娘さんがすっごく楽しまれていました。(イベントが行われた)翌週の月曜日にお会いした時に「あれ、次はいつやるの?また行きたい!!」っておっしゃってました。

岡本さん:いい話だね。
森さん:そのお話をしたもう1か月後くらいに「あれはいつやるの?」と言っていて。本当に楽しかったんだろうなと思いますよ。「あれは楽しかった」というのは記憶として残ると思うので、いい活動をされているなと思います。
つつつ:ありがとうございます!

つつつ:ここまでLivEQuality HUBさんのこれまでと現在の活動について伺ってきました。今後の活動としてはどのような展開を考えているか岡本さんからお聞かせいただけますでしょうか。
岡本さん:このモデルを色々な地域に横展開したり、真似したりしてもらえるような展開を考えています。かなり先にはなりますが2036年には住まいと繋がりによるモデルが累計700世帯くらいになっているといいなと考えています。
ただ、民間だけでやるのは限界が出てくるので、最終的には2046年までに制度などの後押しによって、目標として「1万世帯」を掲げています。また、将来的には就業のサポートや税制の変更、男女の賃金格差の解消などにも踏み込めるといいのかなと思っています。

LivEQuality HUBさんプレゼンテーション資料より引用

つつつ:ありがとうございました。

取材を終えて 

現状の社会課題に対して自分達が何が出来るのか、本業の強みを活かした活動を考え、着実に実行して来られたLivEQuality HUBさん。考えることから行動に移すことは並大抵の事ではありませんが、取材を通して強い志を持たれていることをひしひしと感じました。
取材の終わりに「NICOさんにも社会に活かせる強みは必ずあると思いますよ」とおっしゃっていただいたのがとても印象的でした。また、NICOのこども食堂について、最前線で活動されている方に「意味がある」と後押し頂けたことは大きな励みになりました。
これからもつつつではLivEQuality HUBさんの活動を応援していきたいと思います!


お問い合わせ先

認定NPO法人LivEQuality HUB
webサイト:

電話:050-1741-9674
メール:info@livequality.co.jp
営業時間:平日9:00〜17:00

◆認定NPO法人LivEQuality HUB 年末年始休業◆
2023年12月28日~2024年1月4日は、一斉休業いたします。
休業中にいただいたご連絡への対応は、1月5日以降となります。
恐れ入りますが、ご了承のほどよろしくお願いいたします。


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