2022 射手座の言葉 向田邦子 ┃自由で開放された世界 ~社会的報酬から離れ、内なる「小さき世界」に喜びを感じる
占星術における12サインは、12か月の季節の移り変わりに照応し、その時期に感じやすい心のテーマがあります。心理占星術家nico (ニコ)が、古今東西の著名人の言葉から12サインそれぞれの象徴を見出し、心理的葛藤と成長を考察したエッセイ。
2022年射手座期は、「天才!バカボン」の産みの親でありギャグ漫画の帝王である赤塚不二夫に注目。数々の作品誕生のエピソードから、知力、アイデア&現場力に富む乙女座の姿を見出し、柔軟な姿勢と発想力を支えたものが何であったのか、心理占星術的に読み解きます。
射手座の言葉
「ゆでたまご」というエッセイは、たった3ページの小さな作品。足の悪い小学校の同級生Iくんにまつわるエピソードから成り立っている。
遠足の日、みんなに迷惑をかけるだろうからと、Iくんのお母さんが向田邦子に新聞紙にくるんだ「ぽかぽかとあたたかい」大量のゆでたまごを無理やり手渡したエピソード。そして、運動会の徒競走にIくんが登場した際、「片足を引きずってよろけている」彼の元に女の先生が駆け寄って、一緒に走ってゴールしたというエピソード。「ゆでたまご」には、これらの話が淡々と描かれている。その最後に、上記の「私にとって愛のイメージは、このとおり小さな部分なのです」という言葉で締めくくられている。
いかにも向田邦子らしい、静かで成熟した心に染み入る作品なのだが、なぜ私がこの言葉を選んだのかというと、射手座の中にある「小さな部分」に対するこだわり、これを再考してみたいと思ったからである。
「小さな部分」を考えてみるにあたり、実は他に二つの候補の言葉があった。
ウイリアム・ブレイクの「無垢の予兆」という有名な以下の詩、
または、私の偏愛の詩人エミリー・ディキンスンの詩、
三人の射手座の言葉に共通しているのは、「小さき世界」だ。彼らの言葉からは、三者三様のつつましく、ささやかな命の営みを感じることができる。
射手座の支配星が木星ということもあり、巷にあふれている射手座の象徴には成長、拡大、楽観性といった単語が当てられ、その延長で射手座の人はおおらか、おおざっぱ、ともすればいい加減でテキトーなところがある、そんな書かれ方をしている。実際、射手座的な人たちの口からも似たようなことを聞くことが多い。
または、木星には幸運、ラッキースターという意味も与えられている。金運、恋愛運、仕事運などをアップさせるのに有効だということらしい。よって、星占い的な射手座の意味の中には、「なぜか幸運に恵まれやすい」なんてことが書かれてもいる。
では、彼らが描く「小さき世界」はどこからやってきたのだろうか。
まず、このように考えることができるかもしれない。射手座の前のサイン・蠍座で、他者の欲望と自分の欲求とのぶつかり合いを体験する。この段階で、他者の欲望ではなく自分自身の進むべき道を選択することができれば、射手座へ歩みを進めた際、社会的報酬、社会的幸運といった余計なものから遠く離れ、自己のシンプルな欲求にのみ従って生きていくことができる。世俗的な有様を手放し、ウイリアム・ブレイクやエミリー・ディキンスン、また画家の藤田嗣治(射手座)のように、より高次なもの––神に仕えて余生を送るもの、芸術に身をささげる者––も多かったりする。
このような成長のプロセスを踏むことができれば、誰かと張り合ったり、必要以上に報酬を求めたり、何を持っていて何を持っていない、などという些末なことなど気にしたりすることなく、自由に精神を羽ばたかせることができるようになるだろう。
自由で開放された世界。これぞまさしく射手座=木星の精神性ではないだろうか。
そのように意識を外へと向ける必要がなくなれば、自ずと視野は内的な世界へ、深みへと向かうことになる。視野を自由に広げることができるようになれば、これまで見ることができなかったものを捉えられるようになる。
他者に煩わされて見えなかった、社会的報酬に惑わされて気づけなかった「小さい部分」、愛のかたちやら、一粒の砂の存在やらに心を揺さぶられ、豊かな精神の広がりに心をときめかすことができるようになるのだろう。
こんなときめく世界はないのではないか。木星期(45歳~55歳)はここを目指しながら進んでいくべきなのかもしれない。
射手座の時期というのは、基本的に他者の欲望にもっとも揺さぶられる時期である。クリスマスやらボーナスやら、今年はどんな年だったか、といった問いかけまで、外部から何かとあおられることが多い。
2022年の射手座期は、他者の欲望から距離を置き、自由に息ができる時間を持ってみたいと思う。そして、内なる世界に意識の広がりを感じられるよう、静かに時をすごしてみたい。解放感が少しでも感じられれば、もしかしたら「小さな部分」の中に愛や永遠や喜びがあふれていることに気づくことができるかもしれない。
世界は美しかった。生きるとは、美しい営みだった。そして、私たちは美しい世界を生きていた。向田邦子の見た愛の世界のように、ときに独りよがりで、ときに思い込みが激しいものかもしれないけれど、それがゆえ、やはり世界は美しいのだ。
多くを望まなくとも、その一瞬に永遠の喜びを感じられるような、そんな体験を重ねてみたいと思う。
1929年11月28日東京生まれ。射手座に太陽、水星、火星、土星を持つ。
放送作家、エッセイスト、小説家。「時間ですよ」「阿修羅のごとく」などのテレビドラマで高視聴率を獲得。自伝的エッセイ「父の詫び状」を発表。散文家としても注目される。1981年8月22日、取材旅行中の台湾で航空機墜落事故にて死去。享年51歳。
➤参考記事
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