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コメディって
今日、伊丹十三の「お葬式」を映画館で見た。
去年の春に、大学の講義で伊丹十三がヤクザ映画をせめて作りすぎて殺された説があるって聞いてそれからずっと気になってたんだけど、伊丹十三の映画ってどこの配信サイトにもなくて見れなかった。それでずっと頭の片隅にありながら見れないでいたんだけど、つい最近「いのちの車窓から」で源さんが伊丹十三の映画について書いてて、もう見たすぎてまた調べてみたら、たまたま「伊丹十三全作品の4K上映」っていうのが日比谷の映画館で始まる2週間前とかで、これは完全に運命だ!!って興奮してそれで今日やっと一作目を見に行けた。そうは言ってもこんな古い映画を映画館で見るのは初めてで、自分なんかに面白さが分かるのかなってかなり身構えてた。映画館に着いて、席に座ったときに2つ隣の席の男の人に、「ここ(隣の席)誰も来なかったら、座っていいですよ」って言われて、普通に今の席の方が真ん中よりだし、隣移ったらどちらかというとちょっと見づらくなるのに、なんか分かんないけど私も「あ、そうなんですね、ありがとうございます」とか言っちゃって、意味わかんなすぎて来る時よりもっと身構えた。なんか異空間に放り投げられたような感じがして不安になりつつも、結局その隣の席には誰も来なくて、もちろん私もその席には座らなくて、上映前にめちゃくちゃ気まずかった。とりあえず、もらったパンフレット読んだり予告見たりなんだりして気を紛らわしてたら上映がはじまった。上映が始まってまず、画質がすごく綺麗でびっくりした。前の日に「書を捨てよ、街へ出よう」見たからかもしれないけど、画質がめちゃくちゃ綺麗で衝撃を受けた。今調べてみたら、「書を捨てよ」は71年で「お葬式」は84年だから10年くらい上映年違ったからまあそんなもんなのかもしれないけど、最近の映画見てるみたいですごく入り込めた。「昔の映画」って身構えて見ると、なんか入り込めなくなっちゃうから、画質ってかなり私にとって大事なことなんだって気付かされた。上映始まったら、もう本当面白くて、棺桶に入れるか入れないかを親族で話し合うシーンの、お父さんの兄弟が全く段取り理解できないところで、こういう親戚1人はいるよなあって完全に心掴まれて、面白すぎて身構えてたことなんて完全に忘れて2時間見終わってた。映画中は、ずっと自分のおじいちゃんのお葬式を思い出しながら見てた。おじいちゃんは私が高校1年生のときに亡くなったんだけど、高1でも私はまだまだ子供で、大人がどう動いてたか全く見てなかったし子供目線の記憶しかない。だから大人の目線で見るお葬式は全然違くて面白かった。どこの家族もこんな感じなのかもしれないけど、私の親戚となんだか雰囲気が似ててなおさら重なった。ここに書くのは避けるけど、私のじいちゃんのお葬式も可笑しいことがたくさん起きて、今でも親戚で鉄板のエピソードが何個もある。みんなじいちゃんの良いところも悪いところも知ってて、それでいながらなんだかんだ大好きで、そんなじいちゃんのお葬式と映画のお葬式が本当に似てて、ずっと笑って見てた。愛がベースにあれば、どんなことも温かい笑いにできるんだなってなんかほんと上手く言語化できないけど、見た後ほんのりあったかいものが体の中に残るというか、なんかそういう感覚があって、こんなこと初めてだった。多分これが初めてなのは、今のメディアにないものだからだと思うんだ。コメディってどれも愛がベースにあるはずなのに、今それを知らない人が多すぎると思う。ていうか、それを知らない人は同じくらい昔からいたと思うけど、そういう人の意見が目立ちすぎてると思う。お葬式でお坊さんがお教読んでる時にマネージャーが、足が痺れてこけてみんなが笑うのも、今じゃお父さんが亡くなったことを笑ってるって言う人がたくさんいるんだと思う。そんなことじゃないじゃんって言いたくなる。でも今日の映画館の中にはそんな人は1人もいなくて、みんな一緒にクスクス笑ってて、なんだか昭和にタイムスリップして街頭テレビ見てるみたいな感じがして、映画見ながらこんな時代に生きたかったなって思ったりもした。あの親戚のみんなも、時間が経ったらあの時あんなことあったよね〜って笑いながら話すんだろうな。
本当に見てよかった映画だった。
初監督作品で、この映画を1週間で脚本書き上げたっていうんだから凄すぎる。
次の「タンポポ」も本当に楽しみ。
早く見たい。ワクワクする。こんなにワクワクしたの、いつぶりだろう!