
姉のダイエット
私が幼いころ自慢だった姉が太り始めたのは、上京がきっかけだったように思う。
時はバブル期。サークルやバイトに明け暮れていた私は、姉の変化に疎かった。その激変に気づいたのは数年ぶりに会った両親で「くぅちゃんが一緒にいながらどうしてあんな…」と嘆いた。
「くぅちゃん」とは私のことである。姉は「ゆっこ」と呼ばれている。紹介していながらなんだけど、姉のことは「姉」と書くことにする。
姉抜きに、さっそく家族会議が開かれた。テーマはもちろん「ゆっこダイエット作戦」。会議といっても、大半は「くぅちゃんがいながら」という恨み節である。
それでも姉の前で、父はこれみよがしに腕立て伏せをしたり、母は「私もやせんと」などと二の腕をつまんで見せたりしたが、何をしても姉は今でいう逆ギレ状態になるだけで、作戦はことごとく玉砕した。
そんな姉も、ダイエットにいそしむ様子が見られた。理由は皆目わからないが、その方法が独特なので、ここに書き留めておく。
1.さんざん食べたあと「カロリー調整しなきゃ」とカロリーメイトを食べていた。
2.RPGをしながら、主人公と同じタイミングで同じ食事(おにぎり)を食べていた。
3.牛乳をわざと腐らせて、下剤代わりにしていた。
腐らせようと目論んでいた牛乳を父親が飲んでしまったことにキレて、逆にドカ食いしていたのも知っている。
バブルはハジけても、姉の脂肪は泡と消えなかった。
そういえば、「食べ放題に行きたい。お金出すから」と連行されたことがある。私はというと、いつも通りの量を淡々と食べていたワケだけど、「くぅちゃん、ぜんぜん食べ放題に向いていない」とキレられたことがある。
向いていなくて結構だが…。おかげでブッフェや立食パーティーといった類が苦手になってしまった。姉は姉で罪深いと思う。