毒親育ちにとって子育ては最良の薬㊂ 親のためではなく自分のために許すということ
毒親育ちが子育てを始めてよかったことの三つ目、両親への許しについて書いてみよう。
この記事は人によっては抵抗感を覚えるかもしれない。
しかし、良薬口に苦しという諺があるように、受け入れるのに苦痛を伴ったとしても、自分の心を劇的に親から解放してくれる非常に効果的な考え方なのでぜひ歯を食いしばって最後まで読んでほしい。
育児をしている中で、時々母親の気持ちが分かってしまう瞬間が私にはある。
泣き声や癇癪がひどい息子にイライラしてしまったり、偏食で作ったご飯を何日も捨て続けて追い詰められてしまったり。
このままいくと私もいつか暴力を振るってしまうかもしれないと感じたこともある。
暴力で躾けられたことがあれほど嫌だったのに、その気持ちが分かってしまうなんて悔しいやら情けないやら。
もちろん実際に親と同じことをするかしないかは大きな違いである。
私は今のところギリギリのところで踏みとどまれていて、母親はそうできなかったのはなぜだろう。そこにはどんな差があるだろう。
私の母親の当時の状況を想像してみる。
まず私は第二子だったのだが、早産の末に障害児となって母親の元にやってきた。
当時はネットも今ほど普及しておらず、情報を集めたり同じ境遇の友人を作るのは容易ではなかった。
そんな中孤独感や責任に押し潰されながら、周りに甘えるのが下手な彼女は気丈に振る舞っていたはずだ。
更に私の父である夫は育児に協力的とは言えないタイプで、人の話を聞いて共感したり相談に乗ったりできるわけでもなかった。
おまけに仕事は不安定で経済的な不安が付き纏った。
こんな状態だったので、母の孤独感や心労は凄まじかっただろう。
そのストレスが私に向けられたのだ。
障害児がいなければ母親にとってもう少しイージーな人生になったに違いない。
悩みの元凶である私に無意識に攻撃してしまうのもわからなくはない。その点私はどうか。
夫は正社員として安定した職についているし、育児や家事にもかなり協力的だ。
多くはないけれど困った時頼れる友達もいるし、悩みを話せる相手もいる。
障害者というハンデはあるけれど悩みながらもそれなりに楽しく育児できているのは環境に恵まれているからでもある。
母が私にしてきたことは決して褒められたことではないし、私自身が傷ついてきたのも紛れもない真実だ。
けれど、母は母でそうするしかなかったんだ、精一杯やってきたけど不器用でうまくできなかったんだなと考えられるようになった。
怒りや恨み、傷つけられた悲しみから解き放たれて、親を許せるようになった。
子供の頃って親というのは完璧ですごい存在だと感じてしまうもの。
親の言うことに従え、親を敬えなんて言われて育ったら尚更だ。
で、自分が子育てをしてみて初めて理解する。
ああ、親って全然すごくもないし完璧でもない。
未熟な自分と向き合いながらなんとかやっていくしかないんだって。
だから私は親を許した。
親にされてきたこと一つ一つは重なって大きな傷が残っているけれど。
子供の頃の私は絶対に許すなんてできなかった。でも親になった今なら許せる。
許しは親のためではない。自分のためである。
人間の脳は繰り返すほどに記憶に定着するようにできている。
何十回も漢字の書き取りをしたり、枕草子を暗唱するために何度も音読したりさせられたのはそのためだ。
親を恨んだり憎んだりしている時は親にされた嫌なことを何回も思い出したり、親の嫌なところばかり考えてしまっていた。
そうするとどんどん嫌な記憶が定着してとらわれてしまうようになる。
そんな状態ではこれから起こる楽しいことや良いことに目を向ける余力がなくなってしまう。
過去に囚われながら未来を生きるのはもったいないと気づいたなら、今許すべきなのだ。
そして前回の記事
でも書いたが、
人は自分が発した言葉にも影響を受けている。
親への不平や文句を頻繁に口にしていたら自身の自己肯定感を下げることにもつながる。
だからこそ許しは何よりも自分のためになるのだ。
一生親に苦しめられて生きるか、親を許して自分の人生を生きるか、選ばなくてはいけない。
第一弾で書いた内容と矛盾するように感じるかもしれないが、決してそんなことはなく、どちらも両立する。
親がしてきたことは愛情があったかなかったかに関わらず、親なりに精一杯やった結果であり、ある程度は仕方なかったのだなと許す。
親の言動に傷つけられたり愛情を感じられなかった自分の気持ちも本物であって、親にされてきたことを無理に肯定したりする必要はない。
許しは心の中だけでも良い。
関係を修復できるならそれでも良いが、もう会わないという選択でもかまわない。
過去の出来事を許したからといって、仲良く歩み寄らなければいけないというわけではない。
ただ、自分の今と未来を大事にするために親を許して心の荷物を手放すだけで十分だと私は思う。
子供を産みたった一年育児をしただけでこんなにも心境の変化があった。きっとこれからもたくさんの気づきや変化が待っているだろう。
今後も子育てを通して自分が抱えている問題をゆっくり乗り越えて行く。
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