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早起きして汗かいて仕事して、丼めしのち昼寝


 職業訓練校というのはなんとなく聞いたことはあるけど、仕事も手に職もない人たちが古くて暗いところでなんか作業をしているイメージだった(多分ドラマとかで見た刑務所と間違えている)。

 思っていたよりカジュアルで暗い気持ちにもならないハローワークを見直し始めていた頃に、失業手当をもらいながら学校に行けるシステムを知る。それが職業訓練校。普通に失業手当をもらうならおれの場合3ヶ月分で終わりの予定だったけれど、職業訓練校に行けば通っている間(調理科は半年)失業手当をもらいながら学校に行けるという! すごい、守られてる!

 飲食店やる! と決めたもののカフェのバイトに悉く落ちて心折れそうだったおれは、バイトじゃなくて開業スクールとかで経営知識と調理のスキルを身につけるのはどうだろう? とバンタンなどのスクールを検討し始めていたところだった。けれど、そういったスクールは開業支援などもあって長い目で見ればそりゃその価値はあるだろう、という感じだったけれどもちろんスクールなので学費が高かった。それならば前職を続けながら通うという方が賢かったかも、そう思ったところで後の祭り。というか、学校に行くならカフェスクールと職業訓練校、イメージは大分違うけど一緒でしょ! しかもお金をもらいながら通えるって素敵じゃん。行くよ、おれ職業訓練校。

 知らなかっただけで、実はすごいシステムな職業訓練校。そしてそんなすごいシステムなんだからもちろん人気も高く、受験の倍率も高かった。SPI的な筆記試験の後面接試験もあって30名の中に選ばれた。ありがとう。入学前のオリエンテーションで白衣や調理師免許取得のための学科用教科書を受け取っておれはやる気満々、学校大好き、勉強大好き、こんなにおれにピッタリな制度があったなんて仕事辞めてみるもんだ、と思うほど。

 実際通い始めてみると、職業訓練校という自分の勝手な暗いイメージとは程遠く、校舎も広くてピカピカ、生徒たちも10代から50代と幅広くて愉快、しかも皆これから飲食で働きたい! と思っている人たちだけあって食べたり飲んだりが好きな人ばっかりで仲良くなるのに時間はかからなかった。過ぎてみれば、たった半年の学校生活の中で何回飲みに行っただろう。みんな失業手当を貰っている立場だからコンビニで買って歩き飲みもよくしたし、学生だけで賑わう安い居酒屋での飲み放題もよくした。

 迷っているなら全員行けと言いたいくらい良い体験をした。調理の仕事に携わるための学科の授業やテストもびっしり、そして調理実習も基礎的なものから給食実習まで幅広くやった。献立を立てて班ごとに担当分けをして給食を作り上げる、消毒、切る、量る、焼く煮る蒸す、配膳、下げ膳。各自パソコンに向かって頭の中のものを吐き出して作り上げて修正して出してまた修正して、を繰り返していたこれまでの仕事とはタイプが違い過ぎて比べられない。仕事というより、ばあちゃんちでの手伝いをすごくハードにした感じ、こんな仕事もあるんだ。

 毎日早起きして白衣に着替えて調理場に入る、頭と体を動かして出来上がった給食をみんなで食べる。動いているからか、一人分で配膳される丼めしもペロリ。そしてその後軽く教室で昼寝して、午後の片付け反省会、レポートを提出して駅までの道でビールを開けて電車で即寝。こんな仕事もあるんだ。そしておれはこれからこうやって生きていくのか、すごい。

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