見出し画像

【感想】★★★「盤上の向日葵(下)」柚月裕子

評価 ★★★

内容紹介

■昭和五十五年、春。棋士への夢を断った上条佳介だったが、駒打つ音に誘われて将棋道場に足を踏み入れる。そこで出会ったのは、自身の運命を大きく狂わせる伝説の真剣師・東明重慶だったーー。死体遺棄事件の捜査線上に浮かび上がる、佳介と東明の壮絶すぎる歩み。誰が、誰を、なぜ殺したのか。物語は衝撃の結末を迎える!

感想

東大に入学した佳介はふと立ち寄った将棋クラブで、東明と邂逅する。そこから佳介と東明の関係が始まる。ある日、佳介の家に泊まりに来ていた東明は、佳介が恩人から譲り受けた名駒を見つける。佳介は、いまいち信用の置けない東明にその名駒を隠していたつもりであったが、ある日、旅将棋への同行を誘われる際に、その名駒も持参しろと言われる。一時は拒んだ佳介だが、本物の真剣師同士の将棋を見られるとあって、同行する事に。
旅将棋において、東明は東北随一と言われた真剣師と7番勝負を行うが、1局目は負けてしまう。そこで、資金の底が付いた東明は、佳介に内緒で名駒を将棋会場の旅館の亭主に譲る契約をし、400万円の手形を手入れ、2曲目以降の資金とした。それに気付いた佳介は、東明に契約の破棄をするよう迫るが、東明の勝算に同意すると共に、もっと真剣師同士の勝負を見たいという欲望に勝てず、承服する。果たして、残りの6局を全て勝った東明だが、手形と共に姿を消してしまう。
時は経ち、社会人となった佳介は旅館の亭主から名駒を買い戻し、さらには事業を起こして大成功を果たした。
そこへ、父親である庸一が現れ、お金を無心するようになる。また、行方をくらましていた東明も成功を果たした佳介の元へ訪れ、賭け将棋をするようになった。ただ、東明の様子はかなり酷く、残された命は長くはないと思えた。そんな折、庸一に対して、殺意を覚えていた佳介は東明が再び佳介の前に現れた際に放った「借りは必ず返す。誰か消してほしい奴はいるか?」という言葉を思い出し、庸一の殺害を依頼する。

ここまでの流れは悪くはなかった。
ここから元奨励会の佐野とベテランの石破の刑事コンビが事件の真相に迫っていくのだが、普通に聞き込みをしていくうちに佳介へと辿り着く。発見された遺体も復元の結果、東明だとすんなり判明する。
事件の真相も回想シーンで、庸一を殺害した後、現れた東明が自身の思い出の地で佳介と将棋を指し、佳介に負けた東明は自刃して命が果てる。
そして、現在に話が戻り、刑事コンビと佳介が邂逅するのだが、刑事コンビの件はいるのか? 佐野刑事の元奨励会という肩書は必要だったか?

もっと、刑事コンビのシーンでは、天才棋士との将棋さながらの先の先を読む頭脳戦を展開し、佐野も奨励会時代の思い出や経験から捜査に大きな貢献をしたり、または元棋士のしがらみから佳介へ助力しつつ、最後は佳介対佐野の真剣勝負を展開するという流れを期待していた為、期待値以下の展開で残念だった。
ただ、著者の文力は間違いなく、読んでいても苦ではなかった。ただ、発想力と展開力が乏しかった。途中までは☆4ではあったので、少し残念だった。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?