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【感想】★★★★「旅のラゴス」筒井康隆

評価 ★★★★

内容紹介

■北から南へ、そして南から北へ。突然高度な文明を失った代償として、人びとが超能力を獲得しだした「この世界」で、ひたすら旅を続ける男ラゴス。集団転移、壁抜けなどの体験を繰り返し、二度も奴隷の身に落とされながら、生涯をかけて旅をするラゴスの目的は何か? 異空間と異時間がクロスする不思議な物語世界に人間の一生と文明の消長をかっちりと構築した爽快な連作長編。

感想

名作と誉れ高い架空の世界での物語。
若い男・ラゴスが世界を旅し、
様々な人々と出会い、知的に成長し、老いていくというのが大筋。
物語の初めに出会う若い女性に対してラゴスは最後まで思いを寄せているが、なぜそこまで思いを寄せるのかという理由が描かれていない。
また、人物描写が乏しく、イメージが湧きづらい。
架空の世界という設定の中で、感情移入はしづらいものの、物語全体を通して架空の動物であるスカシウマが登場する事によって、不思議と若干ではあるがリアルな世界に感じられるのは不思議だ。
ラゴスが途方もない量の書物を貯蔵している町に滞在するが、その書物の中で現実世界の文明が出てくる事によって「これは未来の話なのか?」と思わせるアイデアはとても良かった。
そして、いつの間にか老人になったラゴスが死を覚悟した旅に出るが、その理由が若かりし頃に出会った女性に会いに行くというのはロマンティックではあるが、その女性とのエピソードが無いので、今更感がかなりあった。
ただ、全体的に作者のイマジネーションは素晴らしく、なかなか出会う事が出来ない作品であるのは間違いない。

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