『タナトスの誘惑』を俯瞰
以下、全ての文章は私の目というフィルターを通して出てきたものである。あしからず。
『タナトスの誘惑』を読んだので、感想を残しておくことにする。
introduction
YOASOBIさんの『夜に駆ける』という曲をSNSで拝聴。その後、この小説が元となっていると知り、読んでみるに至った。
about
『突然理想の人が現れたら、ご注意を。』という書き出しで始まる。短編小説である。ある1組の男女の恋愛観と死生観について書いた作品。
”死神が見える彼女”と、”その彼女が見える僕”という入れ子構造を取っている。(また、それに対して”その僕が見える読者”という三重の入れ子になっていると考えることもできるのかもしれない) 視線が交差するはずの恋愛を引き合いに出しながら、しかし、その二人の視線の方向は交わることなく平行線を辿っている。この辺りの噛み合わなさも物語の展開を予想させるようで惹き込まれる。
夏のまとわりつく蒸し暑い空気と街の焦燥感。それに自分の密度の薄さ(小ささ)や寂しさを対比させ、死生観とパラレルな構造を成しているのだろう。
result&discussion
細部の深読みとメタ的読み方が同時に行える稀有な作品であると感じた。いや、細部の読み進めを行うことによってメタ構造が俯瞰できるようになり、理解が深まるという点でその他の小説と類似しているにもかかわらず、その時間スケールがあまりにも小さかったために、同時に起こったと認識してしまっただけなのかもしれない。どちらにしろ、この感覚を味わえたことが幸せであった。
このような読後感を味わえる作品に出会えたことを幸運に思うと同時に、今回の読書感想文を締めさせていただきたい。
では、次の機会に。