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『うるうの朝顔』

以下の文章は、私の目という特殊なフィルターを通して出てきた言葉である。あしからず。

久しぶりの読書感想文

水庭 れん 著
出版社 講談社

introduction


装丁が美しくて好きだったのでジャケ買い.
読んでみると,中身も好みすぎたので,久しぶりに読書感想文を書くに至った.

about


カフェのような様相の霊園管理事務所に勤めている日置凪という青年と,そこにやってくる4人の人々の物語.
4人の人物はそれぞれ,現実で停滞感を抱きながら生活している.それは,まるで何かの歯車がずれてしまったような違和感や,朝顔の蔓は左巻きなのに蕾は右巻きであるような矛盾を抱えながら.
日置凪は4人に,ある朝顔の種を手渡す.その朝顔の種は不思議な種で,花を咲かせると「現実とは1秒だけ違う過去を再体験し,心の不調和が直る」らしい.
日置凪は,なぜ4人に朝顔の種を手渡したのか.日置自身が抱えるものとは一体何なのか.
不思議な力でズレを修正された人物たちの,今までとこれからを繋ぐ物語.

thoughts


装丁に描かれている朝顔の美しさと,モルフォチョウの役割,登場人物の心情の機微,他にも日常的なワンシーンに美しいファンタジーの色が描かれているような情景描写に魅了されながら,モノローグからエピローグまで一気に読み切ってしまった.

4人の登場人物が抱えている日常の停滞感は淡々とした描写で綴られ,朝顔の花が咲いた後に過去のエピソードの見方が一変してしまう衝撃は,登場人物に感情移入しながら読むと心にくるものがあった.

4人のエピソードが語られると同時に,凛としたイメージの日置凪の情報が増えていき,最終章では日置凪目線で一気に伏線が回収される様が美しくて好みだった.
日置凪くんは,なぜ口数が多く,正義感が強い,何にでも興味を持って調べる性格になったんだろうな......もう少し彼のことが知りたくなった.

では,また次の機会に.

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