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空想

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#春

『冬の京、背割堤』

『冬の京、背割堤』

いつもは澄んだはずの空気が、どこか密度の大きくなる、そんな冬の京都の朝であった。
ふわりふわりと舞う風は、春になれば満開の桜を映させる絶好の背景になるのだろう。多くの観光客がそれを観に集まってくるのもいつものことだ。
しかし、人のいない今日の空はまだ重い。風が重い。冬の匂いが運ぶものは、今日の風と同じ灰色をした私の想いだけだった。
空はさらに密度を増す。それに比例して私の気持ちも密度を増した。

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