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#文学

『どこにでもある鍵屋...UNLOCK』 .01'

『どこにでもある鍵屋...UNLOCK』 .01'

開かなくなったもの、なんでも開けます。  by 鍵屋

***第一話の続きです***

初めはこちら

第一話『オセロの行末』~After Story~

〜花言葉:移り気〜

清楚な女性は、店の外に出た。

「よかった。彼は、浮気なんてしてなかった。あの女に微笑みかけているように見えても、私だけを好いてくれるんだわ。
早く帰って、彼の部屋にスマホを戻さないと。」

ヴヴヴ...ヴヴヴ...

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『どこにでもある鍵屋...UNLOCK』 .01

『どこにでもある鍵屋...UNLOCK』 .01

開かなくなったもの、なんでも開けます。  by 鍵屋

***prologueの続きです***

第一話『浮気オセロの行末』

あれだけ降っていた雨は止み、ひばりが鳴くような穏やかな朝だった。
一通りの支度を終えた晏理は店の看板をclosedからopenに変えるため、外に出た。昨晩の雨で濡れた石畳風の道と重い空気、匂い。それに不釣り合いな透明感のある空の青さに気持ちが不安定になる。(きっとこの空に

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『どこにでもある鍵屋...UNLOCK』 .00

『どこにでもある鍵屋...UNLOCK』 .00

開かなくなったもの、なんでも開けます。  by 鍵屋

〜prologue〜

稲光が聞こえる。その大きな音によって静寂が強調されるような真夜中のことだった。
決して明るくはない暖かい色の電気の下で、木材の香りが高い湿度によって鼻に運ばれてくる。
雷の音に反応し、一人の男が突っ伏していた机から徐に頭をもたげた。数回まばたきをした後、朧げな灯の中で、ベッドに眠るもう一人の男とその隣で丸まっている三毛

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『無償の愛』

※フィクションです。

うだるような暑さの生み出した汗が、身体にまとわりついて離れない。拭えども拭えどもその汗が引くことはなく、諦めて、汗の思うがままに流れることを受け入れるのであった。
その刹那、重く湿った風が、対象を揺さぶった。
「お元気ですか?...というのも無粋でしたかね。」
明らかに元気のなさそうなのを横目に、通りかかった少女は腰を下ろした。続く言葉はなく、ただ一緒に風に揺られる時間だけ

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