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トレイルランナー、足底腱膜炎の記録

トレイルランニングを趣味としていますが、2024年の8月頃から2025年の2月中旬現在まで、足底腱膜炎を患ってしまい満足に走ることができない状態が6ヶ月ほど続いています。様々なことを試してようやく症状が緩和してきて30kmくらいまでなら走っても痛みを感じない程度まで回復してきたため、症状や施策など忘備録として記録を残します。


足底腱膜炎は炎症ではない?

足底腱膜炎は別名で足底筋膜炎や足底腱膜症とも呼ばれるもので、名称に”炎”とあるので炎症のイメージがありますが、以下のサイトにあるように、急性期では炎症反応があるかもしれませんが、日常的に続く場合には炎症ではなく微小外傷や組織の変性が原因のようで、これを理解することが対処法の理解に繋がると思います。

足底腱膜症は、ときに足底腱膜炎とも呼ばれます。しかしながら、足底腱膜炎という言葉は正確ではありません。腱膜炎という言葉は腱膜の炎症という意味ですが、足底腱膜症は、炎症というよりは、足底腱膜に繰り返し負荷がかかる病気です。

MSDマニュアル家庭版

足底腱膜炎は、繰り返し負荷がかかることにより、足底腱膜とかかとの骨との付着部に微小外傷(小さな傷)や変性が起きることで痛みが生じる、腱・靭帯付着部症(エンテソパチー)のひとつです。

日本足の外科学会
https://honda.s358.com/blog/leg-foot/bottom/701/


症状のタイムライン

2024年8月後半~

  • 8月後半~9月前半

    • 寝起きや、座りっぱなし後に立ち上がった時の接地時に踵が痛むようになる。動き出すと痛みが減るが、数時間歩行・ランニングするとまた痛み出す。この時点で足底腱膜炎という認識はなし。名前は聞いたことはあるが、具体的にどういう症状なのか分かっていなくてこの踵の痛みも足底腱膜炎かもなどとはこの時点では考えていなかった。走り始めると痛みが引くので練習を続ける。

  • 9月半ば

    • 踵の痛みが治らず、また出場した大会で足が痛くてDNFしたのもあり整形外科を受診、「足底腱膜炎」だろうという診断を受ける。レントゲンの結果、骨棘はないことを確認。この時点では特に何も処方はなく「様子見」ということに。

  • 10月半ば

    • 痛みが引かずもう一度同じ整形外科に行くも、また様子見となる

  • 11月半ば

    • スポーツ特化の整形外科を受診。超音波検査足底腱膜の肥厚を確認し足底腱膜炎と診断。通常は3mmくらいの足底腱膜の厚みが4.4mmくらいに肥厚しているとのこと。リハビリでは足首と足指の背屈可動域がとても悪く、固くなっているという評価。足首は通常15-20度ほど背屈できるところ、自分の左足は5度しか曲がらなかった。

超音波検査の結果。左足(画面右)の測定腱膜(青で囲われている部分)が右足よりも厚くなっている。

なお補足で、この超音波検査の結果の見方で当初自分は混乱していたのですが、画面上側が足底側で、画面下側が甲(足首)側です。画面上の白い一帯が脂肪体で、青く囲った範囲が足底腱膜、左下の黒い部分は踵骨です。立っている状態の以下のMRI画像と比べると分かりやすいです。

出典:都立大整形外科クリニック

~2025年2月半ば(現在)

  • 2024年11月後半~ 2月半ば

    • ほぼ走るのをやめて回復と足底に負担の少ないトレーニングに専念

    • たまに30分ほど走っても、途中や終了後に痛みがある状態

    • 徐々に痛みが引いている感覚はあるものの、まだ痛みを感じる瞬間があり、患部を直接指圧すると痛みがある

    • 2月半ば、テーピングを巻いた状態で32km(累積標高1,500m)を痛みなく走れる状態まで回復

なぜ足底腱膜炎になったのか仮説

出典:都立大整形外科クリニック

自分の場合、日々のランニングが主因となっているのは分かりますが、具体的なにが原因かは分からないです。よく挙げられる原因として扁平足やプロネーションの歪みがありますが、元々扁平足ではないし、ランニングフォームも、通っている施設やチームコーチからは特に酷いフォームでは無いとのことでした。その上で、自分の中で仮説は2つ。

  1. 自分の回復能力以上の高負荷・高頻度のトレーニングをしてしまい回復が追いつかなくなった

  2. (足首の背屈可動域が狭くなっていることから推測されることとして)足底の血流が悪くなり組織の酸欠による回復の遅延、また損傷した細胞が血流で流されず浮腫のように蓄積した。腱膜は血流が比較的少ない組織という話も聞きますし、それに加えて先述の足首や足趾の背屈可動域が狭くなっていることも、周辺の筋肉が固くなっていることを示唆しているかと思います。

特に1. については所属しているチームの先輩にも指摘されていることで自覚があります。2. は色々調べていく中で学んだことをもとにした仮説ですが、正直よく分からないです。

なぜ足底腱膜炎が長引いているのか仮説

通常急性炎症や細胞の損傷が起きた時には自然に治癒するはずが、何ヶ月も痛みが続いているのは、(1) 常に新たな炎症や損傷が生まれている (2) (血流不足などから)足底腱膜組織の修復が遅延し肥厚・硬直が続き、肥厚した足底腱膜が周囲の神経を圧迫し続けている (3) etc…

など色々考えられます。

9月に100マイルの大会、11月には耐久レースやバックヤードウルトラに出場など、足底腱膜炎の症状が出てからも立て続けに大会に出てしまったので、それにより(1)で足底腱膜の肥厚が進んでしまった可能性があります。

一方で、ここしばらくは走るのをやめたにも関わらず痛みが続くのは(2)の方が影響が強いように感じます。

回復のために行ったこと

まだ完治はしていないですが、11月半ば~2月半ばまで、だいぶ痛みが治まるまで集中的にやっていたことを参考までに紹介します。上述したように自分の場合には足底腱膜の付着部周辺の血流悪化が慢性化を招いているという仮説の上、主に柔軟性の回復と血流促進のための施策をとっています。ですが、どれが効果があったのかは正直わかりません。もしかするとどれも特に効果はなく、単に時間経過で回復した可能性もあります。

体外衝撃波

超音波検査をした整形外科で勧められ試してみることに

  • 目的

    • (1) 痛みの神経終末を変性させるとともに疼痛伝達物質を減少させて中枢への疼痛伝導を抑制する

    • (2) 血管新生を促進し組織を修復させる

  • 回数・頻度

    •  拡散型

      • 3回 (12月~ 1月半ば)

    • 収束型

      • 2回 (1月半 ~ 2月前半)

  • 効果

    • 直後は痛みが減るものの、劇的に変わった感覚はない。ただ効果が現れるまで時間がかかるという報告もあるので、現時点で痛みがかなり治ったことにどの程度寄与したのかは正直あまり分からない。

ストレッチ・マッサージ

これも同じ整形外科のリハビリで推奨されたもの

  • 目的

    • 足首と足指の背屈運動の可動域を増やす、それにより血流の促進と、接地衝撃の緩和。

  • 内容

    • 腓腹筋、ひらめ筋、足底腱膜、ハムストリングを伸ばすようにそれぞれピンポイントでストレッチやマッサージ。

  • 回数・頻度

    • 毎日、推奨は一日3回以上だが実際には1日1回くらいしかできていなった

  • 効果

    • 足首の背屈運動は11月半ば時点で5度くらいだったのが1月後半には12度くらいまで背屈できるようになった。足指も角度は不明だが当初よりも少ない痛みでより曲がるようになった。足底腱膜の痛みの低減にどれだけ寄与したかは不明

その他

その他、良いと聞いたものを色々と継続的に試しました

  • マイクロカレント(ふくらはぎ中心)

  • フォームローラーとトリガーポイントで筋膜リリース(足底・ふくらはぎ・大臀筋・中臀筋が中心)

  • マッサージガン(足底・ふくらはぎ・大臀筋・中臀筋が中心)

  • 青竹踏み(足底)

  • 鍼(足底・ふくらはぎ)

  • 整体(ふくらはぎ・大臀筋・中臀筋が中心)

  • ナイトスプリント(就寝中に足底・ふくらはぎを伸ばすことで、筋肉や腱膜が収縮状態で固まることを防ぐ)

  • サプリ

    • マグネシウム (筋肉の弛緩・神経機能の調整)

    • MSM (炎症の緩和)

    • オメガ3 (炎症の緩和)

なおこれらの施策は、自分でネットで調べた情報をもとにしているものもあれば、チームメンバーやコーチに相談してアドバイスをもらったものをもとにしています。

回復のために試さなかったこと

そのほか、足底腱膜炎の症状緩和のためによく聞くものの試さなかったのは以下のようなものがあります。

  • フォーム改善

    • 元々フォームが原因ではないという仮説のもと。フォームを変えることで別の症状を招く可能性もあるため。

  • インソール

    • 整形外科や整骨院では大体勧められているが、自分が信頼している方々は口を揃えて意味がない(市販のシューズのインソールで十分)と言っているため

  • アキュスコープ

    • 通っているジムのスタッフに勧めてもらったものの、あまり情報がないため

痛みがある期間の練習メニュー

スピンバイク・エアロバイクでのトレーニング (2024年12月半ば〜)

足底に負担がほぼなく、かつランニングに近い負荷で、かつ気軽にできるものとしてこれらを一番比重の高い練習としました。最初はジムのエアロバイクをメインにしていましたが、ジムに行くまでも歩いていくので足底に負担となるのと、足に気を遣って行くのが億劫になってしまうこともあったので、思い切ってスピンバイクを自宅用に購入しました。

12月購入時の時点ですでにほぼ走らない生活が数ヶ月続いていたので、まずは基礎体力をつけて行くために、心拍ゾーン2をターゲットに1~2時間漕ぐようにして、週に1度か2度はインターバルにしたり重くしてゾーン3~4となるようなメニューとしました。

なお心拍ゾーンの設定は、「高みをめざすアップヒルアスリートのトレーニングマニュアル」を読んでこの本で推奨されている(今の自分にカスタマイズした)心拍ゾーンに設定を変更しました。ガーミンもストラバも、ゾーンごとの心拍数範囲を自分で設定できます。結果的に、同じゾーンでもこれまでよりも負荷が低くなりました。逆にいうと、これまではゾーン2のつもりでやっていたトレーニングが、この本をもとに算出したゾーン設定だとゾーン3となり、知らずのうちに自分の認識より高い負荷で練習してしまっていた可能性があります。

そのほか、バランスディスクで体幹トレーニング、ジムのマシーン(レッグプレスなど)で筋力維持、やそして痛みが減ってきた2月頃から、週に一回、足底にテーピングを巻いて30分ほど外を走るようにしました。

トレーニング時間・割合の遷移

以下はここ一年でガーミンで計測したアクティビティの累計時間と割合なのですが、9月以降でバイクやハイキングの時間を増やしてランニングの時間が減っているのがわかるかと思います。11月のランニング量が多いのは、バックヤードウルトラなど耐久系のレースに二つ出てしまったためです。また4月で一度落ち込んでいるのは、4月頭に出た大会でアキレス腱炎を患い走れなくなってしまったためです。こうしていると、ここ数ヶ月のトレーニングは、単にランニング時間をバイクやハイキングで置き換えただけでなく、月間の総時間も少なくなってしまっていることが分かります。これまでは週末に誰かと一緒にロングトレイルを楽しむことが多かったですが、屋内で一人でバイク練習だと長時間トレーニングすることがなかなか難しいのかなと思います。これを見て、もう少しバイクでのトレーニング時間を増やさないとなと思いました。

走らない期間を経ての走力の変化

半年ほどまともに走らない期間が続きましたが、走力がどのように変化したのか、主観客観含めて幾つかの指標で共有しまし

VO2Max (Garmin)の遷移

ガーミンのVO2Mazはそんなに当てにならない気がしますし、この期間中VO2Maxの負荷がかかるほど走っていないのでどれだけ参考になるのか分かりませんが、以下のようになっており、若干の下降は見受けられるもののほぼ横ばいとなっています。

Endurance Score(Garmin)の遷移

一方でEndurance Scoreは8月以降ぐっと下がっています。これはトレーニング時間と質が落ちていることに由来していそうです。2月に上がっているのは、回復してきて少し走る頻度増えたからでしょうか。

2.5km走のタイム

実は1月初旬に、駅伝に出ています。元々エントリーしていたもののこの状態なので代走をお願いしていたのですが、その代走の方が急遽参加できなくなり、2.5kmの一番短い区間を走りました。

この時のタイムは9:13で3:39/kmでした。過去に同じ距離の大会に出たことがないので比較が難しいのですが、信ぴょう性が高いと言われるVdotではフルマラソン3:05:59に相当するらしく、自分のベストは02:53なので約10分走力が落ちていることになります。なおこの時は体感として、主観的にはそんなにキツくないのにスピードがついてこず、脚筋力の低下を感じました。

5km走のタイム

また症状が回復してきた2月中旬に皇居ランをして10kmほど走りました。前半は流しで後半5kmで頑張ってみて、この後半5kmのタイムは18:49で3:36/kmでした。これも同様にvdotで計算するとフルマラソン3:00:12くらいに相当します。この時は初めてカーボンシューズを履いてみたのでそれのおかげも大きいと思いますが、これらの結果を見ると、数ヶ月走る時間や負荷を下げても、少なくとも5km走くらいの距離なら概ねそこまで大きく走力は落ちていないことが分かります。見立てでサブスリー達成できないのは悲しいですが。一方で、1回で3時間を超えるような練習はしていないので、それ以上の長い距離になるとパフォーマンスはだいぶ落ちているのではないかなと予想しています。長時間の接地衝撃に耐えられない、脚持久力がもたない、など。今後の練習としては週末にロングライドやロングハイキングをするなど、長い時間動き続けることに慣らしていく必要がありそうです。また、トレイルランに特有の上り下りの足さばきも自転車では再現しにくいのが課題です。

心理面

最後に心理面について。マグロの如く走らないと死ぬ生き物とまで言われるマラソン・トレイルランナーにとって長期間走れないことはとても辛いです。「あと1ヶ月後には治ってるだろう」と楽観視して大会にエントリーし、結果として回復しない状態で大会に出てしまい悪化させてしまったり、DNSで諦めたりを繰り返していると、もう一生治らない気がして今後の大会にエントリーするのが怖くなってしまいます。またマラソンシーズンなどで周りが追い込んでいたり仲間やチームメンバーと練習を楽しんでいるのをStravaで見ていると、そこに混ざれない悲しさがあります。全く走らないのも良くないだろうという不安と、走って悪化させてしまう恐怖との葛藤があります。走る行為自体が自分にとっては気持ちよくて楽しいことなので、そうしたリフレッシュができないもどかしさもあります。少し回復してきても、「また走ってまた症状の回復を長引かせたり悪化させたらどうしよう」と不安になります。

そうした中で、チームメンバーに相談してみると、同じく過去に足底腱膜炎の症状に苦しんだ話をいつくか聞くことができて、とても励みになりました。他の方々も同じように半年くらいは症状が続いたと聞いて「周りもそうなんだ」と安心したり、「バイク練習はランニングとは違う部位にも刺激が入ることで結果的に可動域の改善やパフォーマンスアップにつながる」などポジティブな言葉をかけてもらったり、上にあげたような様々なグッズやアプローチを教えてもらってとても参考になりました。

またこれを機に、カメラを持って散歩や登山を増やしたりロードバイクを買ってより遠くまで自分の足で探検できたりなど、ランニング以外のアクティビティの楽しみを考えるようになりました。また回復してきて久々に長い距離を痛みなく走れた時の喜びはとても大きく、改めて走れることのありがたさや楽しさ、そして走り続けられるように自分の回復能力やアフターケアを続けることの大切さを実感しました。(まだ完治してないですが😅)

あとは、もう藁にも縋る思いで出来ることは手当たり次第やって、お金もかなりかかりました。僕が行っていた整形外科では、体外衝撃波(拡散型)で一発10,000円くらいしたのですが、あとから聞くと他の整形外科ではその三分の一くらいでやってくれるところもあるそうなので、色々調べてみてください。

結局何が問題で何が効いたのか

慢性化した足底腱膜炎でやっかいなのは、長期化する性質上、何が原因で何が効いたのか、分かりづらい事です。何か特定の対処をしてすぐに治ったのであれば、その対処法から逆算して問題点も特定しやすいかと思います。ですが足底腱膜炎はなかなか即効性のある治療がなく、その期間中に様々なことを試してしまったため、結局何が効いたのか、何がボトルネックだったのか、分かりづらくて再現性に乏しいのがモヤモヤします。もしかすると、単に時間経過による自己治癒のおかげかもしれません。いずれにしても、自己治癒を促進するためにも、足首や足底周りの柔軟性そして血流促進を意識したほうが良さそうというのは、あくまで自分のケースですが、間違いなさそうです。また、今回を期に足の色んなところを指圧してみた結果、くるぶしの下側辺りを押すと痛みが出ることや、ふくらはぎの奥の方?を強く指圧すると踵のあたりに痺れが走ることなど分かり、そのあたりを重点的にマッサージしたところそれらの部位の痛みがなくなり、足首の背屈運動の可動域改善に繋がった気がします。ですがこれも、同時に他にも色々やっていたため、確かではないのがもどかしいです。

最後に、まだ足底腱膜炎になったことがない方は、寝起きなどの接地時に踵付近が痛む場合は足底腱膜炎の可能性があるので、早めの整形外科の受診をお勧めします。また同じ整形外科でも、レントゲン検査だけでなく超音波検査で足底腱膜の肥厚を確認したりMRIで浮腫の有無を確認できるところが良いです。レントゲン検査だけでは骨棘の有無しか分かりません。「走りだせば痛みがなくなるから」と自分のように高負荷な練習や大会に出続けると慢性化してしまう可能性があります。また、既に足底腱膜炎のかたは、同じようにツラくてストレスのかかる生活かと思いますが、(お金がかかるものの)ジムのバイクトレーニングや水泳など接地衝撃の少ない運動をしつつ自分の痛みと対話し、普段できないトレーニングやケアしてるつもりで、今後への成長ステップとして一緒に気長にやっていきましょう。

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