京の暮らしは「番」にあり。 2/3
京番茶の話をする前に、女将にお聞きした、京都にかかせないもう一つの「番」についてお話をしようと思います。
きょうの暮らしを支える「番」
「おばんざい」
最近ではテレビや雑誌でも京料理特集になると「おばんざい」という言葉が多く見られるようになりました。
この「おばんざい」
手間暇かけて下ごしらえして、豪華に盛り付けた雅な京料理・・・という訳ではありません。そのむしろ逆。
「おばんざいは【御番菜】て書きますねん。【番】いうのは、常にあるいうこと。傘でも番傘てありますやろ?番傘は、和紙と竹で出来てて、破れたら張り替える常つかうもん。よそいきの時は絹を貼った蛇の目傘を使うんです。」
「番」は【常のもの。いつもあるもの】
そんな意味なのだと、亀甲屋の女将は教えてくれはりました。
「おばんざい」も、元を辿ればそんな意味があるのだとか。
そう、京都の家庭で常備菜として作られていた、いわば「時短つくりおきレシピ」のことなのです。
京都は、江戸のように毎日【煮売り屋】がやって来ておかずを買えるわけではありませんでした。簡単で、日持ちのするレシピが各家庭で工夫され、広まり、発展したのだと思います。
それは、季節の旬な食材を無駄なく使い切る、生活の知恵が詰まった家庭料理の優しさだったのだと、お話を聞きながら感じました。
「きらず」 に「のきしのぶ」 、常のおかずも風流に
和食でありがちな、「おかず茶色い問題」
小さい頃、友達のお弁当はたこさんウインナーやら、飾り切りされた野菜で彩られて美味しそうなのに、かたや自分のお弁当に入ってるおかずは茶色いものばっかり。他の家庭のお弁当がとっても羨ましく思った…なんて経験、皆さんはありませんか?
「おばんざい」も多分に漏れず、茶色くって、地味な見た目ばかりです。
胡麻和え、芋の炊いたん、おひたし…
見事に茶色がかっていますが、これは味付けに出汁を基本にしているからこそ。
ハッとする美味しさはないかもしれませんが、滋味あふれるご飯のお供は毎日食べても飽きが来ない、心がどこかホッとできる家庭の味です。
そんな毎日のおかずにも風情もおシャレにしたいのが京都の人。
豆腐の残り滓からできる「おから」は「きらず」と言い、特に商家の人は「商売相手との縁が切れませんように」と月末に食べる風習があったと女将が教えてくれました。
そんな「きらず」(つまりはおから」)は「雪花菜」と書くそうで(!)なんとも雅な字面にうっとりしてしまいます。
そしてもう一つ聞いて驚いたのが「軒しのぶ」
これ、なんと「切り干し大根」のことだそう。女将が小さい頃、近所の人はまだ「のきしのぶ」という言葉を使ってたそうです。
「きりぼしだいこん」が「のきしのぶ」。
ぐっと風情が増して、ええもんみたいに聞こえます。
これがまた面白いことに、
女将の幼少の頃、近所のおばあちゃんは楊枝にくるくるっとこの「のきしのぶ」を巻きつけて
「アンタ、いとまきちゃんたべるか?」
と、よくオヤツにくれたそうです。
はて、「いとまき」ちゃん?
実は、女将の育った地域は織物で有名な西陣の地。愛着を込めて「いとまきちゃん」と呼んでいたみたいです。なんとも可愛らしい。機織りの音があちこちで響く西陣の地域の空気が伝わってくるようです。
と、そんな風に差し出された「いとまきちゃん」
最初は分からず喜んで「食べる!」と言ったものの、受け取ったのは「切り干し大根」でガッカリしたと、女将は笑いながら懐かしそうに思い出話を話してくれました。
最近までは国際化、インバウンドが盛んでした。
和食がユネスコの無形文化遺産に登録されたこともあってか、日本料理がもてはやされるようにもなりました。
さらに「京料理」なんていうと、いかにも特別という感じがします。
たしかに懐石やら割烹やら、歴史の中で発展した華やかな食文化もありますが、
その食文化を支えてきたのも、常のおかず「おばんざい」だったのです。
そこには、京都の市井に生きるひとの生活の知恵や、食べもんを大事にする気持ちがたくさん詰まっていました。
茶色い色味は地味ですが、いつもそこにあって違和感のない、安心感を私たちにくれます。その安心感が、いかに大事なものだったか、最近身にしみて感じることが多くなった人も多いのではないでしょうか。
さあ、きょうのご飯はおばんざいを作ってみませんか?
シンプルかつなんてことない普通の味を、ほっこり心に染み渡らせるのもオツなものです。
さて、次回はいよいよ(やっと!)
「京番茶」のお話。
こちらもいかに「番」たるか。
日常と密接に関係したお話をお届けしたいと思います。
取材協力:亀甲屋
http://web.kyoto-inet.or.jp/people/kikkoya/kikkoya/
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