常磐津 景清
「景清(かげきよ)」とはとある時代の人物名なのですが、いったいどんな演目なのでしょうか✨
あらすじ
景清こと、悪七兵衛景清は平家の侍大将で源氏にとっての強敵としてその剛勇ぶりが有名です。この舞踊では五条坂の阿古屋という傾城のところへ通う色男に変えられ、廓話になぞらえて合戦の激突を物語るという一風変わった趣向の舞踊です。錣(しころ)を素手で引きちぎったという「錣引き(しころびき)」の逸話や、恋人阿古屋、太鼓持ちなどの人物の踊り分が見どころの一曲です。
景清という人物像
本名は藤原景清(伊藤景清)または平家に仕えていたことから平景清とも呼ばれます。源平合戦で活躍した平安後期の武士で、その剛勇ぶりから悪七兵衛景清(あくしちびょうえかげきよ)の異名を持つ実在の人物です。
ここでいう「悪」というのは悪者とか怖い人という意味ではなく「勇猛果敢」という意味を表しています。
実在したとはいえ生涯に謎の多い人物であるため各地に様々な伝説が残されていて、能や浄瑠璃・歌舞伎の題材にもなっていることから古くから庶民に愛された演目だったことが分かりますね。
この「常磐津 景清」もその中の一つですが能や歌舞伎のストーリーとは違ったものです。
舞踊の内容
この曲は剛勇な侍大将景清の話というよりは廓話になぞらえて屋島の合戦を物語るという変わった趣向の演目です。
みどころ
合戦の中で錣(しころ)を素手で引きちぎったという「錣引き(しころびき)」の逸話を物語る振付けがまず一つの見どころとなっています。
また、物語の途中で阿古屋になったり、太鼓持ちになったり、また景清に戻ったりと登場人物の踊り分けは素踊りならではの面白いところです。
その中でも上半身は女、下半身は男、という某俳優の笑いながら怒るのような振りが何回か出てくるのですが、踊り手にとってその辺りの硬軟の切替えが非常に難しくもあり、それだけにやり甲斐のある演目といえます🍶
素踊りとは
通常、本衣裳の場合は登場人物は変わりません。
白拍子ならずっと白拍子、芸者ならずっと芸者、といった具合なのですが、
素踊りはいわば「何者でもなく、何者にでもなれる」という特徴があります。
一曲の中で登場人物が代わるので老若男女はもちろん船頭や漁師や侍、女将や夜鷹や花魁や…その「演じ分け」が醍醐味なので見た目は地味でもなかなか技術のいるジャンルです😄
歌詞(原文)
〽︎ねび観音を だしにして 夜毎日毎の徒詣(かちもうで)雨にも雪のぬれ事は ちつと先祖へ申し訳 たたぬ口説の仕残しを 今宵ぞ是非にござんなれ しかしお敵も千手の手どり 素面(すめ)ではゆかじとひつかけて 赤いところが名にし負ふ 平家の侍大将と 洒落のめしてぞ浮かれ来る
〽︎前は海 うしろはけはしき鵯越へ 江戸で申さば品川に 似たりよつたる色酒に
〽︎寿永の秋の風立つて 須磨や明石の浦舟に 櫓櫂を立てて びんしよう伽やろ 二位の比丘尼(びくに)の丸太舟 あるひは官女の舟君も すはや時ぞと漕ぎにつれて 客ある方へとのり出せば 源氏の軍勢こゑごゑに
続く
立方(たちかた)
藤間裕美靖(ふじま ゆみや)
2歳の頃より母である藤間市寿美裕師に師事、日本舞踊の手ほどきを受ける。4歳で初舞台を踏んでから16歳で勘右衛門派藤間流名取となり26歳で師範を許される。
今回素踊りでこの「景清」を勉強させて頂く機会を得ました。お稽古が毎回楽しくて楽しくて、景清の強さや対照的な阿古屋の柔らかな物腰の踊り分けが難しくもあり、面白くもあり…!どこまでやれるかわかりませんが「景清」にご縁を感じて舞台に立たせて頂きます。どうぞよろしくお願いいたします。