見出し画像

勇人#7「カンヌ映画祭」

皆さん、こんにちは!ロサンゼルス在住の勇人です。今回は初めてカンヌ映画祭に参加した時のお話です。

UCLA Anderson の一年目にEntertainment Management Association (大学のエンタメクラブ)を通じて初めてカンヌ映画祭に行くことになりました。前回お話ししたAnderson's Next Top Modelの優勝者としてランウェイを歩けないことがかなり残念だったのですが、エンタメのキャリアを築き上げるためには全てを犠牲にしてまでエンタメを優先せねばと思い、カンヌに行くことに。

正直、カンヌ映画祭と言われてもあまりピンと来ず、有名な映画祭なのでこのチャンスを活かすべき、という感じで行きました。

正確な人数は忘れたのですが、少人数のグループで初めてのフランス、初めてのカンヌへと向かう。

このグループを引率したのは、フランス人のグレゴアールという一年上の先輩で、私のACTコーチでもあります。ACTとはAnderson Career Teamの略で、アンダーソンの二年生が一年生にキャリアについて色々と相談に載ってくれる制度で、自分のキャリア志向に合わせて学校側が一年生とコーチを組み、何度かグループミーティング(キャリアコーチ一人に対し、一年生が数人)を行ったあと、なんと、コーチを変えることもできるというアメリカらしい制度。

最初に組まされたグループのエンタメ系の先輩は確かテック系で、自分はクリエイティブに行きたかったのでこのグループではないなと思いつつ、MBA行ってクリエイティブに行きたい人、更には、一個上の先輩でそんな人いるのかな、と思いました。そういう人がいたとしても、はたしてACTのコーチ陣(ACTの制度は100%ボランティア。入ってない二年生ももちろんいる)にいるのかなと。

それが、奥さん、いたんです!

この救世主はフランス人のグレゴアールという先輩で、フランスのコンサルティング会社を辞め、MBAに来たのです。彼もエンタメの中でクリエイティブの仕事をやりたいと思っており、コンサルティングからエンタメにキャリアチェンジするためにアンダーソンに来たのでした。こんな先輩がいたとは!!!もう、即、彼のACTブループに入ることに決めました。テック系の先輩に「あなたのACTグループには入れません」と伝えたとき、ちょっと悲しい顔をされたのが申し訳なかったですけど。。。

さて、このグレゴアールの素晴らしいところは、本当にクリエイティブに進むために色々な事をやってきており、就職に関して他のMBAの先輩とは全く違ったアプローチ方法を身を以て教えてくれた事です。

MBAの就職と言えば就職カウンセラーにレジメを見せて、色々とチェックしてもらい、いろんな金融機関やコンサル等の会社がキャンパスに来て面接をしてくれたり、キャリアナイトなるものがあったりと、大学側のキャリアセンターが色々と就職のサポートをしてくれます。そしてまずはインターンのオファーをゲットし、夏休みにインターンをし、気に入ってもらえたら就職のオファーをもらい、次の年卒業して、その会社に就職する、というのが一般的なパターン。社費派遣でも転職する場合、罰金/違約金/授業料の変換等を肩代わりしてくれる会社もあるという優遇ぶり。

しかし、私やグレゴーアルの就職は全く別物。まず、エンタメ企業は基本的に全員同時に採用するという概念はなく、ポジションが空いたら都度そのポジションに応募する感じなので、就職する一年前の夏のインターンで就職先が決まるという事はまずあり得ません。

アンダーソンの先輩の中には夏のインターン時にオファーをもらい、そのままMBAを中退する人までいました。次の年の卒業時にはそのポジションはもうないでしょうし、同じようなポジションが空く保証もないので中退という道を選んだのです。それだけ競争率が高く、チャンスが来たら何がなんでも掴まなければならないという、脅迫観念に似た気持ちにさせる業界なんです。MBAを中退してまでチャンスを掴み取った人たちに対して、純粋にすごいなと思いました。私はそこまでできない。さすがにせっかく掴み取ったMBAを捨てることはできないので、ちゃんと卒業をしてMBAの学位を取ってから就職しようと決めてました。しかし、それはそれで卒業後に空くポジションを狙わないといけないので、それに合わせてギリギリのタイミングで就職活動を始める必要があり、かなり精神的にきつい状況となります。かくいう私は卒業後もしばらく働き口が見つからず、次月の家賃が払えない状況まで来たのですが、粘れるところまで粘ろうと思い、最後の最後で奇跡的に20世紀フォックスでのポジションをゲットする事ができ、無事、次月の家賃を払う目処がつきました。就職活動に関しては、本当に色々あったので、それはまた別途記事でお話しできればと思います。

さて、話をACTに戻すと、このグレゴーアル先輩のおかげで、エンタメの就職に関する考え方が180度変わりました。エンタメの人事がわざわざキャンパスに来てく面接してくれるなんて生ぬるい考えは捨てた方が良いと言われました。

ネットワーク、ネットワーク、ネットワーク!!

ハッスル、ハッスル、ハッスル!!

具体的にどういったアドバイスをしてくれたのかはあまり覚えてないのですが、このハッスル精神が刷り込まれた事は紛れもない事実です。

グレゴアールは本当に心強かったです。自分が目指しているキャリアについて誰に相談すれば良いかわからず、相談してもみんな「?」だったり、トンチンカンなアドバイスをくれたりだったので(当たり前ですが)、グレゴーアルに出会えた時はすごく興奮しました。彼のACTグループに入れた事は本当にラッキーでした。

どれだけ小さくてもチャンスは絶対に物にしないといけない、といった類のアドバイスをくれ、例えば、授業にアンダーソンの卒業生で20世紀フォックスの役員をやっている人が来て、映画業界についてのレクチャーを受けた際には、日本の話題になった時にどんどん手を上げてアピールし、授業の後名刺交換し、メールし、コーヒーに誘い、色々とハッスルした結果、冬のインターンシップをゲットしたり(これまた別途詳しく記載します)と、彼の教えや精神に基づいて行動したら、色々と結果も付いてきました。

で、話をまた戻すと、彼が率いるカンヌ映画祭に行く事になったのですが、なんか、全てがすごすぎて100%状況を吸収することができなかったというのが正直な感想です。

さて、このカンヌツアーには同期のアンジェイも加わっており、実は彼もクリエティブ路線を狙っている仲間でした。

アンジェイなんかは今大成功していて、あのホアキン・フェニックス主役のジョーカー等、多くのハリウッド大作のエグゼクティブ・プロデューサーを務めてます。映画館で映画を観てると、最後のクレジットによく彼の名前を見かけるので、やっぱすげぇ、自分も頑張らないとと、見る度に思います。なんせ、彼はAnderson同期でカンヌ仲間ですから。

さて、今回の記事は私とアンジェイの初カンヌ珍遊記とも言うべき投稿です。

アンジェイはアンダーソンの前はシカゴでトレーダーをやっている証券マンでした。そこからMBA通じてキャリアチェンジし、今やハリウッドでバリバリのエグゼクティブプロデューサー。うーん、やっぱ、アンダーソン、すげぇ!笑

アンジェイは本当に魅力的な男でちょっと緊張するぐらい。シカゴ特有のぶっきらぼうというか、ストレートな物の言い方なんですが、心はめっちゃ優しい。アンダーソンのカンヌグループの中にはエンタメではなく他の業界に進む人も多く、せっかくの機会なのでカンヌに行きたいという理由でグループに加わってたのですが、私やアンジェイは本気でハリウッドのクリエイティブに進む夢を持った同志だったので、自然と二人で行動することが多かったです。

さて、どこから入手したのかわからないのですが、アンジェイはどこでどういうパーティーが催されていたのかを把握してました。とてもレベルの高いパーティーの情報は、秘密のメーリングリストから入手したり、どこかのイベントで仲良くなった人に聞いたり、トイレでたまたま隣で立ちションしてた人に声をかけ、連れて行ってもらったりと、あの手この手を使って手に入れる必要があるのですが、私に周りにはこういった情報をゲットする能力に長けている人が多いように思います。

カンヌではいろんなパーティーが催されているのですが、ハリウッドスターが参加するようなパーティーは基本的にプライベートイベントで、ゲストリストに載ってなければ参加できないのです。

で、もちろん、我々(っていうかアンジェイ)はパーティーに参加するために色んなところに連絡したり、見知らぬ人に声をかけたり、色々とハッスルするも、全て失敗に終わる。なので普通、ここで諦めるのですが(私なんかは諦める派)、さすがはアンジェイ。諦める気配が全くありません。

カンヌ映画祭開催中はビーチ沿いに色んなテントがあって、その中でパーティーやったり、停泊しているでかいヨットの上でパーティーやったりと、様々なところで宴会が夜な夜な開催されています。その夜はアンジェイとビーチ沿いを歩いており、途中で派手なパーティーをやってそうな白いテントを見つけました。テントの外には受付用のテーブルがあり、受付嬢が3人ぐらいと、おっかないフランス人警備員が二人ほど立ってました。

そこでアンジェイは突然私に向かって

「勇人、お前は今から日本のスーパースターで、俺はお前のエージェントだ。」

と一言だけ言って、テントに向かってスタスタ歩いて行く。

「へっ?」

と困惑しながらも、嫌な予感がしながらも、彼の後を追う私。

可愛いフランス人の受付が私たち二人の方を見上げ

「こんばんは。お名前はなんですか?」

と聞く。

彼は堂々と

「あぁ、俺はICM (International Creative Managementの略でハリウッド4大エージェンシーの一つ)のアンジェイで、彼は俺の大事なクライアント。日本のスーパースターの勇人だ」

と言ってのけた。

受付嬢はゲストリストを見るも、もちろん二人の名前は載ってない。

「すみません、名前が見当たらないのですが。。。」

と言われるも、そこはアンジェイ。逆ギレ気味に

「そんなはずはない。俺のクライアントを入れないつもりか。彼は日本のスーパースターなんだぞ」

私の方を見る受付嬢。

突然ふられたので、待たされてとても不服そうなジャパニーズ大スターのフリをする。

受付嬢がもう一度ゲストリストをチェックすると「ICM」という企業名が見つかり、その下に何人かのエージェントの名前が書いてある。そりゃそうだ。カンヌ映画祭のセレブパーティーにICMのエージェントがいない訳がない。何故、業界で一番大きいCAAやWMEのエージェンシーの名前を使わなかったのかいうと、おそらくICMが当時、外国タレントを一番多く抱えていたので、あえてICMの名前を使ったのだと思います。私が日本人なので、自分は日本人タレントを抱えるICMのエージェントだと言った方が真実味があると。さすが、アンジェイ! 頭の回転早すぎ。

で、話を戻すと、ゲストリストには我々の名前はないが、ICMの名前は載っている。そしてそこに何人かの別のエージェントの名前が記載されている。

受付嬢はもう一度、エージェント役の逆ギレアンジェイと、不服で偉そうなジャパニーズスターの私を見ると、一言

「OK」

と言って、入れてくれたのです!

フランス人には日本人の顔の区別がつかず、本当に日本のスターだと思ったんでしょう。そして、スーツを来ていたアンジェイはいかにも敏腕エージェントに見えたのでした。

警備員に睨まれながらも堂々とテントに入っていきましたが、心臓はバクバク。

そして、念願の白いテントに入っていったら、サミュエルジャクソン、ウィラムダフォー、オリバーストーン、チャン・ツィイー等、錚々たる顔ぶれがいるではないですか!いやぁ、本当にセレブパーティーでした。それよりも、アンジェイの機転で入れたことに興奮し、なかなかハイな夜でした。

サミュエル・ジャクソン

画像10

サミュエル・ジャクソンと対面したアンジェイはいきなりインターン先の会社の名前を出し、自分はそこの人間で、サミュエルジャクソンが今度出演する映画がどうたらこうたら、みたいな事を言って自己紹介してました。

実際はインターン先でその映画の脚本を読んだだけだと思いますが。

いやぁ、すごいわ。私も勉強になりました。インターン先の会社がサミュエルが出る映画の制作会社であることを瞬時に思い出し、それをネタに、嘘ではない会話をし(インターンなので、一応その会社の人ではある。脚本を読んで社員に感想を述べるのは一応関わっていることになる)、相手に自分は覚えるに足る人物なんだと思わせる術を、サミュエル・ジャクソン相手にやってのけたのだ。いやぁ、改めてアンジェイの凄さを思い知らされました。

サミュエル・ジャクソンとアンジェイ笑

画像11

ま、そんな感じでテント入る時はスーパースターとエージェントを演じて入りましたが、入ってからは、ミーハーな一ファンに戻り、スターと一緒に写真を撮ってもらったりしました。笑

という事で、せっかくなので、そのテントで撮った写真を何枚か載せたいとおもいます。

チャン・ツィイー(Zhāng Zǐyí、章子怡)

画像1

ジョウ・シュン(Zhou Xun, 周迅)

画像4

ウィレム・デフォー

画像3

オリバー・ストーン

画像5

カンヌの他のパーティーの写真も!

この方は、アダルト女優?ホラー映画に主演してました

画像6

一番左は伝説のACTコーチ、グレゴアール先輩!

画像7

はちゃめちゃ笑

画像8

どこぞやのフランス美人

画像10

バーでサックスを演奏する客

画像11

多分有名人

画像12

テーブルに座れたけど、この混み具合

画像13

ビーチ沿いで他の参加者と

画像14

カンヌの街並み

画像15

画像16

画像17

レッドカーペットの場所

画像19

ヨットパーティー

画像19

という訳で非常に楽しい、思い出深い初カンヌでした。

で、実は二年目もカンヌに行ってます。Anderson's Next Top Modelに二年連続選ばれたので、二年目はカンヌに行かず、今度こそはランウェイ歩くぞ!と意気込んでたのですが、アンジェイに行かない事伝えたら、なんか、詳細は覚えてないけど、えらい嫌味言われた記憶があります。別に君の判断だから仕方がないけど、君が良いと思えば良いけど、そういう奴だとは思わなかった、なんたらかんたらと。嫌味の内容より、そこまでして来て欲しいんだという事に驚き、妙な感動を覚えた気がします。なので折れて、またカンヌ行くことにしました笑。

という事で、今回の記事を二年目のカンヌの記念写真で締めくくりたいと思います!

参加者のモニーク、アンジェイ、私

画像20

ではまた、第8回でお会いしましょう!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?