「偽りなき者」(2012) U-NEXT 2023/11/2
個人的に俳優の中で、トップ3に入る2枚目だと思うマッツミケルセン主演の映画、偽りなき者。
本作はあらすじを読んだだけで観なければならぬと思わされた。
物語は幼女の悪意ない告発により幕を開ける。マッツミケルセン扮するルーカスは幼稚園教諭で、村の古くからの知り合いたちと仲が良く充実した日々を過ごしていた。
そんな中、仲間の一人のテオの娘がルーカスに恋心を抱き、彼にアプローチをかける。だが、彼は幼児相手に大人の対応を見せ、彼女に配慮しながらも注意を促す。それが裏目に出てしまい、幼女はルーカスに悪戯をされたと園長に相談を持ち掛ける。
それが火種となり、村中にルーカスの悪評が広まり、彼の居場所はなくなる。スーパーに行っても食糧品を売ってもらえず、親友には見放され、挙句の果てには愛犬までもが何者かに殺されてしまう。
実は、ルーカスには結婚歴があり、高校生くらいの年齢の息子がいる。この息子の演技がいい。本当に泣いてしまった。父親と別居していることもあって、最初は父親の冤罪について軽蔑する姿勢を取るかと思っていたら、そんなことはなく、絶対に父親はそんなことをしないと物語の最後まで彼の味方を貫いた。単身で幼女の家に乗り込み説得しようとする姿は本当に心を打たれた。
村中が彼の敵かと思っていたが、仲間の一人もルーカスのことを信じサポートしてくれたのが心の支えだった。
クリスマスの教会にて、ルーカスが幼女の父親であり竹馬の友のテオを見つめる場面がある。このシーンの彼の瞳には怒りと哀しみが混ざり合ったえも言われぬ強い意志を感じる。
物語の終盤、彼の冤罪がはれハッピーエンドで終わるかと思いきや、何者かが彼を射殺しようとはかり、失敗して何とか一命を取り留めるという描写は見るものにわだかまりを残す。冤罪の恐ろしさを見事に描いている。
最後になるが、個人的に本作に於いての戦犯はカウンセラーの男であると考える。誘導尋問に近い彼の取り調べが事件を大きくしたと思う。